第23話 またいっしょに何かやどりしよ!

 いよいよバスがやって来る。

 前の窓で盛大に柳の枝を引っかけながら。

 ここの道にこのバスは大きすぎるのだ。

 でも、うめらん高校の近くでは、これくらいのバスは必要なのだろう。

 お別れだ。

 美聖みさとはこのりんどうさんの麓、高丸たかまるからこの高校までが生活の範囲で、けいは、小堀こぼりの隣の駅から、駅の反対側の梅蘭ばいらん高校までが生活の範囲だ。

 山の少女と、街の少女。

 生活の範囲が重ならない以上、次に会うときも何もない。

 ほんとうは、今度会う、なんてことはないのだ。

 エリート校に通う圭だって、それはわかっているだろう。

 美聖は、ふと、最後にきいておきたいと思った。

 「ところでさ」

 バスが来るまでの時間と勝負だ。

 圭が振り向く。

 「さっき、わたしと最初に会ったときにさ」

 「うん」

 圭は鞄からICカードを取り出している。

 駅からここまで乗り過ごして、また駅まで戻って、これはごっそり取られるぞ、と思う。

 いや、そんなことを考えている余裕はない。

 「わたしが、何してるの、ってきいたときさ」

 「うん」

 通じているようだ。

 「圭って、何してるって答えたの?」

 「ああ」

 圭はのんびりと答えた。そこにバスがすーっと入って来て、停まる。

 「晴れやどり、って」

 きっ、と高い短い音をさせて、わざわざ圭の前に後ろ扉が来るように停める。

 その扉が開いた。

 「だから、それ、何?」

 「いや。雨やどりってあるじゃない? 雨を避けて、って」

 ICカードを右手に握って、圭は振り向く。

 「それで、晴れを避けて宿ってるから、晴れやどり」

 言って、圭はバスのステップを上っていった。ピッ、と、カードをタッチする。

 美聖も乗るかどうかを確かめるためか、バスはまだ扉を開けたままでいる。

 美聖は二歩ほど下がって乗る意思がないことを示す。

 「だから」

 圭はバスのデッキの上から美聖を振り返った。

 「こんどまたいっしょに何かやどりしよ!」

 言って、片手を上げる。美聖も、うん、とうなずいて、右手を胸の前に上げた。

 圭にじろじろ見られた胸の前に。

 ああ、あれは、自分がキスしようとされたことへの仕返しだったのか。

 そう気づいたところで、バスは扉を閉めた。

 圭が座るのを待ったのか、しばらくしてから、バスは発車する。

 美聖が乗るバスが来るまで、あともう少しだ。

 「何かやどりか」

 二人で、何かを避けるために、いっしょに宿る。

 そんな機会があるのかな?

 あればいいな、と思って、美聖は圭の乗ったバスを見送る。

 圭がバスのどこに座っているか、美聖にはわからない。

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