第14話 ここ、どこか、わからないから
でも、問題はそこにあるのではないと、遅れて
こいつは高校の生徒で、美聖は高校一年生で、ということは、こいつの学年は、美聖と等しい一年生か、「より大なり」かしかあり得ない。
二年生とか、言わないよね?
ちょっと危機感を感じて、それでも平気に聞こえるように、きく。
「何年生?」
「一年生」
よかった……。
「ホッケー部?」
「うん」
同学年とわかったので、美聖から「よそよそしくしなければ」的な構えがぜんぶ飛んだ。
「でも、梅蘭高校って、駅のずっと向こうじゃない?」
「ああ」
相手の梅蘭高校一年生女子はあいまいな返事をする。
「たぶんね」
その答えに、思ったとおりを言う。
「たぶん、って、何?」
「だって、ここ、どこか、わからないから。ここがどこかによって、駅の向こうかどうかってこと、変わってくるでしょ?」
言うことが理屈っぽい。
でも、ここがどこか知らずに、ここにいるのか? こいつ……。
教えてやる。
「すみれ
たぶん、「前」にしておくと、ここから坂を登らないと高校に着かないことがわからないじゃないか、と、バス会社に苦情が来るから、かな。
ところが、梅蘭高校生女子は、きょとん、としている。
「それ、どこ?」
その言いかた、梅蘭高校を「うめラン高校」と言う以上に失礼だと思うんだけど!
とはいえ、そんなもんだよね。
ここですみれ台高校のプライドを賭ける気にもならない。そんなプライドを持つなら、夏休み中に校庭の草が膝丈まで伸びる、その現状を変えるのが先決だ。
無理だろうけど。
梅蘭高校生女子は言う。
「いや、
フォローしてるつもりなのかどうか。
いや、いまは市立じゃなくなったんだけど。
市が廃校にしようとしたのを、この地域の若者が通う高校がなくなるからと地元の人たちが運動した結果、「虹の学校」というNPOが買い取って私立学校として存続させた。
だから、いまは小堀市立ではなく、ワタクシ立の私立。
まあ、それもどうでもいい。
「でも、場所、知らないんだよね」
まあ、そんなもんだろう。
「りんどう
「うん。そのバスで来たんだけど」
その自覚があるなら、説明の手間は省ける。
「ロープウェイ駅の手前が登山道で、その前が
美聖の家はここ。
「その前が郷土資料館前で」
郷土資料館前は、美聖が小学生のときまで上高丸小学校前だったんだけど。
「
わかるために数えていたのに、わからなくなった。もういちど数える。
「手前九つめかな? 終点の」
「小堀駅からは?」
人がせっかく数えたのに、短い一言で反対側から数えさせるな!
こっちは全部覚えていない。
思い出そうとすれば思い出せるかも知れないけど。
「わからないけど、二十ぐらいじゃない? 小堀市役所とか
いや、もっとあった。
駅の近くは、バス停のすぐ近くにまたバス停があったりして、ちょくちょく停まるのだ。
とくに、小堀市役所と小堀市役所前が隣どうしで、百メートルも離れてなくて、それでも別のバス停って、「ばかにしてるの?」とか思う。思うけど、そうなっている。
「ああ」
梅蘭高校生はあのがらがらっとした声で言った。
「じゃあ、向こう側だね。梅蘭高校は市役所反対側で、駅から十個ぐらいだから」
うーん。
都会の学校だ。
普通に、都会の学校だ。
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