第27話 そんな「三無」少女を、誰が好きになるっていうんですか!

靴を履き替えるためにかがんだとき、栗山桜良はある一つの問題をずっと考えていた。この世に本当に天才がいて、たった10日で、他の人が何十年努力しても達成できるかどうかわからないことを成し遂げることができるのだろうか?


多崎司が下駄箱を通り過ぎ、彼女の履いている一点の曇りもない白いローファーをちらりと見た。栗山桜良が「ちょっと待って」と声をかけると、二人は半身分の距離を保ちながら階段を上り始めた。


「どうやったの?」

「もちろん手を使って」

「何が?」

「それと、栗山さんよりもっと賢い頭が必要かな」

栗山桜良の小さく柔らかな唇が動いたが、結局我慢できずに言った。「口が悪いのとユーモアは別物よ」

「好奇心が旺盛すぎるのも良くない」

「私は好奇心を持ったものにしか好奇心を持たないわ」


彼女がまるで当たり前のことを言っているように感じた……多崎司は不意に彼女の方を向いた。「栗山さん、今日の僕の変化に気づいた?」

栗山桜良は彼をじっと観察し、「さらに下品になったわね」と答えた。

「何が?」

「さっき私が下駄箱で靴を履き替えていた時、盗み見したでしょう?」

「通りすがりにたまたま見てしまっただけ。それを盗み見と呼べる?」

「やっぱり本当に見ていたのね」

「僕を釣ろうとしたのか?」

「何か問題でも?」栗山桜良はまるで何かの虫を見るような目で彼を睨みつけ、軽蔑するように言った。「『ストッキングと制服と長い脚』、これはあなたが自分で書いた答えよ」

「暇ならお茶でもどうぞ!」


多崎司は足早に歩き、二人間の距離を広げた。


どうにも、彼女と一緒に歩くのは居心地が悪い。階段には同じ制服を着た多くの生徒が行き来しているのに、まるでカメラのレンズが自分と彼女にだけ向けられているかのように、常に意味深な視線が容赦なく投げかけられる。


4階に上がった多崎司は廊下へ曲がった。中庭で一番高いカシの木がちょうど4階の高さまで伸びており、彼は平たい頭をした一羽のカラスがその梢に止まり、真っ黒な瞳で彼を見つめているのを見た。


A、B、C組は5階、E、D、F組は4階。栗山桜良は階段の前で立ち止まり、「A組に寄っていかない?」と声をかけた。

「また今度」

「約束よ。ある金髪の少女が、ずっとあなたに会えていないみたいよ」


カラスが「カァーカァー」と二度鳴いた。


多崎司はイライラして彼女を睨みつけ、無言で言った。「君はカラスと同じくらい嫌いだ」


厚い雲の切れ間から一筋の輝かしい陽光が差し込み、天気は回復に向かっているようだった。


二人が廊下で静かに向き合う中、E、D、F組の生徒たちが教室のドアや廊下の窓から顔を出し、好奇心旺盛にこちらの様子を伺っている。そよ風が吹くと、少女のプリーツスカートの裾と、耳元まで伸びた髪がそっと揺れた。


栗山桜良は突然、何かを悟ったかのように軽く笑った。そのせいで、多崎司の視線が鋭くなった。


「午後の部活で会いましょう……」彼女は少し間を置いて続けた。「怖気づいたなら、来なくてもいいわよ」


長いポニーテールが優雅に弧を描き、彼女は階段の角に姿を消した。


教室に戻って席に着いた多崎司は、ペンケースからシャープペンシルを取り出し、指先でクルクルと回した。視線を少しずらし、窓の外の退屈な空をぼんやりと見つめる。


数人の女子生徒がこっそりとこちらに目を向けたが、彼は動じず、「天と退屈を競う」かのような姿勢を保っていた。


多崎司は、こうした注目を浴びる状況に早めに慣れるべきだと感じていた。なぜなら、そう遠くない未来に、自分が北川学園の頂点に立つ男になるのだから。


遅れて教室に飛び込んできた村上水色は、いきなり汚い言葉を叫んだ。遠くからでもはっきりと聞こえた。


罵られたのは自分自身だったが、多崎司はむしろ親しみを覚えた。これもM気質の一種なのだろうか。


「学年二位……見たぞ!」村上水色は多崎司の元へ駆け寄り、机に両手をついた。「一体どうやったんだ?教えてくれ、俺だって学年十位以内に入ってやる!」


「無理だ、諦めろ。落ちこぼれの方が気楽でいい」多崎司は容赦なく、冷徹な三連続の忠告を浴びせた。


「なんだよ兄貴……」村上水色は言いかけて、表情が急に奇妙なものに変わった。一歩後ずさり、顎に手を当てて多崎司を上から下まで何度か見つめた後、不思議そうに言った。「なんか……格好良くなった気がするんだけど?」


多崎司は机に突っ伏した。


なぜ、彼が格好良くなったことに最初に気づいたのが、村上水色という「スケベ」な男なのだろうか?


午前の最初の授業はホームルームで、星野花見は8時半きっかりに教室に入ってきた。


「この間の初めての月例テスト、結果は喜ばしいものもあれば、残念なものもありました」


「伸びた人もいれば、大きく順位を落とした人もいます……」そう言いながら、彼女は急に手を叩いた。「少年少女たち、元気を出して!」


「はーい!」


教室には気のない返事が響いた。ゴールデンウィークが明けて、誰もが魂を抜き取られたかのようだった——多崎司を除いては。


彼は背筋を伸ばし、視線は澄んでおり、その瞳には知性の光が輝いていた。


星野花見は満足そうに頷いた。彼が自分の実力だけでこれほど良い成績を取ったとはまだ信じられなかったが、少なくともその態度は好感が持てた。


「今回のテストで、先生が特に褒めたい人が一人います。誰かわかるかしら?」


「多崎司!」村上水色が高揚した声で叫んだ。まるで自分がその順位を取ったかのようだ。


「その通り」星野花見は頷いた。「多崎君、立って皆に一言」


先生の励ましの視線を受けながらも、多崎司は動かなかった。


授業が始まって以来、彼はある一つの問題について考えていた。


彼と栗山桜良は同点で、二人とも栖川唯に10点差で負けていた。栗山桜良が落とした10点は英語、彼が落とした10点は日本史だった。


日本史はまだ10日しか勉強しておらず、数年間勉強してきた他の生徒に及ばないのは当然だ。しかし、一ヶ月後の期末テストでは、栖川唯を自分の足元にひれ伏させる自信があった。


金髪碧眼でくびれた腰、そしていつも白いストッキングを履いている天才少女が、どんな反応を見せるか、本当に楽しみだ。


村上水色は多崎司の腕を後ろからつついて言った。「ニヤニヤするなよ……みんなが見てるぞ」


多崎司はハッと我に返り、星野花見の怒りに満ちた視線と向き合った。


「すみません……」彼は慌てて立ち上がり、思わず口から言葉が漏れた。「さっきまで栖川唯のことを考えていて……」


その言葉が発せられた瞬間、教室は水を打ったように静まり返り、皆の顔に、察したような笑みが浮かんだ。


多崎司:「……」


ああ、どうやら……言ってはいけないことを言ってしまったようだ。


栖川唯?


星野花見はふと、今日妹が「栖川唯と多崎司には秘密がある」という噂話をしていたのを思い出した。その時はただのゴシップとして聞き流していたが、今となっては、その秘密は本当だったのだろうか?


星野花見は眉をひそめ、不満げに多崎司を吟味した。「先生も大人だから、あなたたちの年代がどうやって恋愛するかばかり考えているのは知っている。それは責めるべきことではないし、先生も反対はしないわ。でも、授業中は誤解を招くようなニヤニヤ笑いをしないでちょうだい」


教室は一斉に笑い声に包まれ、授業の雰囲気は先ほどよりもずっと活気づいた。


高校生は、男女の関係について話すのが好きなものだ。多崎司はそれを理解しつつも、まるで「泣きっ面に蜂」のような、苦くて言葉にできないやるせなさを感じていた。


先生、誤解しないでください。そんな「三無」少女を、誰が好きになるんだろう

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