まったく懲りない姉妹のやり取り


 一月後、またまた『ニライカナイ・マスターハウス』で、お茶などしているヴィーナスさん。

 「やれやれ、今日こそはゆっくりしましょう♪」


 珍しくお休みが貰えたのです。

 例の『へそくり』のおかげか、とても上機嫌のサリーさんが、仕事を詰めなかったのです。

 まあ、忙しくて構っていられないのかもしれませんがね。

 

 ゆらゆらとティーカップから上がる湯気……

 のんびりと、そして優雅にティーカップに口をつけようとした、その時、

「今日はお供に何?」

 イシスさんが顔を出しました。


 あきらめたようなヴィーナスさんが、

「みたらし団子ですよ、いかがですか?」


「もちろんいただくわ♪でも手作りじゃないのね」

「マルスのパンメーカーの物です、姉さんと2人でよく食べたじゃないですか」

「懐かしいわね♪」


 のんびりとストレートティーとみたらし団子で、お茶をしている姉妹……


「ミリタリーは忙しそうですね」

「忙しいわよ♪この頃ね、あの方たちも有機体になって、女性ホルモンの影響のせいか妙に艶めかしいというのか、化粧とかファッションとかにうるさいのよね」

「軍服ドレスを欲しいと云ってきたのよ」

「三軍がですか?」

「そうよ、あのシウテクトリが、ドレスを欲しがっているのよ、イザナミならわかるけど」


「でも軍服は支給しているでしょう?儀礼服ですか?」

「正装と戦闘服は支給しているわよ、なんでもフォーマルパーティーに出られる、軍服風のドレスが欲しいらしいのね」

「でね、私がまだテラのアメリカで研究していたころ、日本のインターネットに『ミリタリードレス』があったのを思い出してね、それをいくつか見せたのよね……」

「まさか食いついたの?」

「そう、三軍統合司令部の、打ち合わせ会議でね」


 で、各ミリタリー内でどれにするか、議論が白熱しているとか……


「暇というか平和というか……」

「いいじゃない、女がおしゃれに夢中なのは平和の証よ」

「そうね……私の『へそくり』、有意義に使ってね……」

「サリーさんやアマテラスも忙しそうね」

「皆、忙しいのか相手にしてくれませんよ」


「ところでまだ『へそくり』持っているのでしょう?」

「全部毟り取ったじゃないですか!」


「プラチナのえ・い・せ・い」

「あれは……最後のへそくりなのよ!」


「いま我が家の家計はいささか赤なのよね……お母様やお父様にご不便はかけられないわよ……」

「でも……困らないほどの資産はあるはずですが……」


「寵妃親睦園遊会といえばわかるでしょう?おじい様も含めて、なにか記念の品を渡したいらしいのね……」

「それによく寵妃があいさつに来るのよね……」


「わかりました!でも渡すのは姉さんではありませんよ、お母様に渡します!」

「それでいいわよ♪」


 で、へそくりの大半を毟り取られたヴィーナスさんですが……


「まだ株の配当金とか、あるのだからいいじゃないの?」

「あれは『へそくり』とはいいません!」


「女には『金の玉』はいらないのよ」

「イシスさんはげ・ひ・ん!」


 ……やれやれ……姉さん、あの衛星を知っているとはね……

 ……まあ、いいわ♪とっておきの『へそくり』はばれていないようだし……


 とっておきの『へそくり』とは……

 土星の中心核に鎮座するヨミの保養所、メイド号を作ったとき、内緒で作りこんでいた装置です。

 いわゆるダイヤモンド回収装置です。


 土星の内部ではダイヤモンドの雨が降るのですね……

 もっとも、メイド号の位置する中心核近くでは溶けているのですが、この回収装置は溶ける前にこっそり回収するようです。

 大体直系は1センチで、回収量は毎年10トン程度……


 土星ではもっともっと降るようですが、ばれないようにこっそりと回収しているのでね……

 

 ……でも、これだけではね……現金化に手間がかかるしね……やはり、ゴールドの星、一つは欲しいわね……サーチしてみようかしら……

 ……あった♪あっ、シルバーもあったわ♪この星、いいわね、浮遊惑星よ♪水星クラスよね♪手ごろだわ♪あまりに大きいのはばかれるわよね……

 

 ヴィーナスさんが見つけた『へそくりの星』、これね、ヴィーナスさんだけが知っている未発見宇宙にあったのですね……


 FIN

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