最強錬金術師、思考と爆薬でPvPメタ全てを吹き飛ばす。
もりすとり
第1話「リクのPvP初心者講座、開講!」
最近、“ゲーム”の定義が、少し変わってきた。
マウスとキーボードだけだった時代は終わりを告げ、頭に専用のデバイスを装着すれば、脳波や視線による操作が現実のものとなった。
視線、指先、脳のインプット――
従来のゲームとは一線を画す、膨大な情報量でキャラクターを操る。
思考接続型3DアクションMMORPG《Synapse Gate Online(通称:SGO)》は、そんな“新しい時代”の象徴だ。
膨大な職業とスキル、自由すぎる装備と構築、そして“思考”によってキャラを操作できる、前代未聞の操作性。
広大なPvEの世界で生活を楽しむ者もいれば、PvP――プレイヤー同士の戦いにのめり込む者もいる。
SGOの登場以降、同ジャンルのタイトルは次々とリリースされたが、
いまでもこのゲームの《PvPモード》は、“競技の聖地”と呼ばれている。
構築、立ち回り、思考操作――
あらゆる面を極限まで磨き上げた者だけが、勝者の座に立てる世界。
もちろん、ランク報酬も観戦機能もある。
公式大会やプロリーグの再生数は凄まじく、このゲームをきっかけに配信者やプロゲーマーとしてキャリアを築いた者も少なくない。
……これは、そんな世界の片隅で。
今日もまた、一人の“解説系プレイヤー”が、配信開始ボタンを押すところから始まる。
---
ランクリセットから三日。PvPアリーナの熱気はまだ戻らず、ログイン率もマッチング数も控えめな、いわば“オフシーズン”の静けさが広がっていた。
「はい、というわけで本日も配信スタートしていきまーす!」
軽快な声とともに画面に映るのは――リク。PvP配信界隈でも珍しい、初心者向け解説系プレイヤーとして地位を確立した中堅ランカーだ。
「今日のテーマは、“アリーナ初心者向け講座・シーズン7バージョン”!
PvPを始めてみたい人が、まず何をすればいいのかっていう基本のキから、最初に目指すべき目標までを、分かりやすくまとめてお送りします!」
<コメント欄>
:いつも助かる!
:今シーズンもお願いします!
:ランサー面白いよな〜
:来期の環境どうなると思います?
---
「さて、じゃあとにもかくにもPvPを始めるために必要な、“ビルド構築”の紹介からいきましょう!」
画面が訓練所モードに切り替わると、【既存ビルドを使用する】ボタンがクリックされた。
「とは言っても、最初は攻略サイトの記事とかをコピペして始めちゃうのがオススメかな。
このゲーム、ビルドを一から組もうとすると、まじで時間が溶けるからね。もちろん、今日紹介するビルドをそのまま使ってくれても大歓迎! ダウンロードコードは概要欄に載せてあるので、ぜひ!」
<コメント欄>
:そのビルドありがたい!
:コード配布ほんと助かる
:コスト管理が一番むずいんだよな…
「今回は、リリース当初から風ランサー一筋の僕が送る、初心者でも爆勝ち間違いなしのお手軽ビルドを紹介します!」
<コメント欄>
:初心者向け助かります!
:自称風ランサー布教協会会長きたw
:実際この人TOP500なんだよなあ
:前シーズン風ランサーでゴールド上がったよ!
リクはコメントを拾いながら、ステータス・装備・アイテム・スキル構成の理由を順に解説していく。
「このゲーム、装備もアイテムもステータスも、全部に“コスト”が設定されてて、どれかを盛りすぎると他が弱くなる。
構築全体でコスト上限を守る必要があるから、装備をガチガチにするとステータスが貧弱になるし、スキルも10枠制限があるから、何を削って何を入れるかっていうトレードオフがめちゃくちゃ大事なんだよね。…僕も今期のメインビルドが完成したの、シーズン終了の2日前だったし。」
<コメント欄>
:HP極振りとかアリ?
:アイテム全振り型もおもしろそう
:それで勝てるなら天才やんw
「うん、例えば装備とステータスに全振りして、ポーション連打で不死身!っていう構成も一応可能。でもそういう尖った型は、操作難易度がめちゃ高い。
だから最初は、今日のビルドみたいな“バランス型”がオススメ!」
実際に紹介されたビルドは、ステータス配分も装備構成も安定志向で、いわば「教科書通り」のスタイル。
「まずはこういうノーマルな構成で感覚を掴んでから、ちょっとずつ自分の色を加えていくのが一番いいよ」
そう言う彼の口調は穏やかだが、その言葉には長年の経験に裏打ちされた自信が滲んでいた。
---
「じゃあここからは、お待ちかね。スキルの回し方や、立ち回り、それから基本的なコンボを紹介していきます!」
スキルプリセットが表示され、ひとつずつ解説が始まる。
* 《突撃槍【一階梯】》:前方へ短距離の突進+刺突ダメージ
* 《嵐槍の型【二階梯】》:攻撃範囲・速度上昇バフ(10秒)
* 《空裂槍【一階梯】》:中距離直線攻撃・風属性ダメージ
* 《足払い【一階梯】》:前方扇形攻撃+バックステップ。命中時に移動不能(1.5秒)
* 《連撃槍舞【二階梯】》:前方への思考制御型5連撃
スキルで使用可能な風属性魔法スロットも含め、プリセット全体では10スキル近くにもなっている。
「ちなみに、スキルには“一階梯〜三階梯”の格付けがあって、強いスキルほど階梯が高く、枠もコストも重い。
たとえば《嵐槍の型》は【二階梯】、つまり中堅クラスのバフスキル。強いスキルをいっぱい積めば勝てる、ってわけじゃないのがこのゲームの面白いところだね。」
<コメント欄>
:言っても第三階梯ゼロは決定力なさすぎじゃね?
:俺もとりあえず第三階梯だけ詰め込んでたわw
:それ、枠足りなくなってパッシブ全部抜いてるだろw
「風ランサーの中でも、これは“嵐槍型”って呼ばれてる構築で、嵐槍のバフ効果中に一気に火力をぶつけるタイプ。
この前のバフで火力が底上げされてて、刺さればかなりの火力が出せる。特に《足払い》が決まれば、第三階梯なしでも《空裂槍》と《連撃槍舞》でフルタンク以外なら即瀕死〜ワンコンまで持っていけるよ!」
基本コンボを実演しながら、リクはスムーズな動きでアバターを操作する。
「まず《嵐槍の型》でバフをかけて、そこから《突撃槍》→《足払い》→《空裂槍》。最後に《連撃槍舞》で〆。動きはシンプル、でも強い!
もちろん第三階梯スキルを入れてもいいけど、その分このビルドはMPとか足回りを強化するパッシブをガン積みしてるから、試合中にMPのことをほぼ考えずに風魔法を立ち回りで蒔いていけるのがこのビルドの強みだね!」
一連の動きに迷いはなく、AI相手の模擬戦とはいえ、タイミングも位置取りも丁寧だ。
配信画面のリスナーにも、それが伝わるほど、無駄のない操作だった。
「ただまあ、正直これだけだと、シルバー帯あたりからは通用しなくなってくるんですよね」
リクは苦笑しながら、AIに“パリイ”スキルを仕込むと、さっきの突撃をきれいに弾かれて見せる。
「ほらね。突撃槍は予備動作が長いし、読みやすい。
《嵐槍の型》のバフ時間を乗り切られちゃうと、そこから先のダメージが足りなくてジリ貧になっちゃうんですよ」
<コメント欄>
:あるあるw
:ここが一つ目の壁だよね
:パリイまじで無理ゲー
:速いけど、慣れると見えるようになってくるんだよなー
リクが、声のトーンをほんの少し上げる。
「――ということで、そんなあなたの強い味方になるのが!
【思考操作】だ!!」
<コメント欄>
:きたきた!
:脳筋ムーブ終了!
:このゲームの核心ってやっぱここだよな
「たとえば、さっきの《嵐槍の型》から《突撃槍》の流れ。普通に操作すると――」
画面内のアバターが風のエフェクトを纏い、一瞬の間をおいて突進する。
まさに先ほどパリイされた動きだ。
「…予備動作、わかりやすいよね。見てから反応できちゃう。
相手も《嵐槍》のエフェクト見えたら、『あ、次これ来るな』って構えるから」
<コメント欄>
:予備動作まじ長いw
:予測しやすいわこれは
:初心者にはこれでも十分なんだけどな〜
「じゃあ、ここに思考操作を混ぜてみましょう」
リクの視界には、もう一枚の透明なUIが開く。
視線と脳内イメージを合わせることで、“予測行動領域”が青白く点滅する。
「いま、嵐槍の型と突撃槍の動作を“思考で”繋いで、一つのスキルみたいに同時発動させてみました」
アバターの動きは先ほどと全く同じように見えるが、発生が早く、動作の後隙がまるごと消えている。
相手からすれば、なにかバフスキルを使ったと認識したその瞬間には、突進してきたランサーに突き飛ばされてしまうだろう。
「これが、思考操作の“後隙キャンセル”ってやつですね。
やり方は簡単――『こう動いてくれ』って完成形をイメージして、それを頭の中でクリアに描くだけ。
あとは、アバターがそれに応えてくれます」
<コメント欄>
:!?
:感情論だけどマジでこんな感じ
:簡単(大嘘)
:できたら超気持ちいいやつ
「もちろん“簡単”は冗談。マウスとキーボードを操作しながら頭で仕込むんだから、僕でもたまにキャンセル出来なかったり、下手すると暴発してスキルの発動自体がキャンセルされちゃったりします。みんながよく言う『ファンブった』ってやつだね。ここは訓練所でしっかりと練習すること!
慣れてくると、入力を意識せずに“動きそのもの”を描く感じになる。ここがこのゲームの一番面白いところかも」
<コメント欄>
:ファンブルは心の乱れ
:ホントにメンタルゲーなんだよね
:使いこなせると超面白そう…!
そこからリクは、《スキルの発動ディレイ》《アクションのフェイント》など、思考操作の基本テクニックを、実演を交えて順に解説していく。
コメント欄には驚きや共感、そして「分かりやすい!」という声が流れ続けていた。
「よし、思考操作パートはこんな感じかな。じゃあ、ここからは――実戦、行ってみましょう!」
訓練所を退出し、配信画面は《フリーマッチ》のロビーへと切り替わる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます