チー牛転生 ~イケメンになってもガチ陰キャ~
チー牛皆伝
第0章 プロローグ
第0話 俺という人間を紹介しよう
※0話は主人公紹介の話です。
転生するところからすぐ読みたい方は1話からどうぞ。
主人公の拗らせっぷりを知りたい人だけ、0話を覗いてみてください。
サラッとでも通しておくと、転生後の物語が読みやすくなるかも……。
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俺の名前は牛久チー。よく言われる、”チー牛”というやつだ。
学校に行く準備をしながら、クソ雑魚主人公である俺の人生――プロフィールを語っていこう。
俺は温玉高校2年だ。成績は中の下くらい。まあ、色々あって底辺校に近い偏差値だな。
容姿に関して。
洗面所で自分の顔を見るたびに「誰こいつキッショ」ってなるくらい、顔に自信が無い。眼鏡に、覇気のない死んだような目、顔は丸くてシュッとしていない。髪は整える気力も無くてヘルメットのようだ。とりあえず一言でいえばブサイクだ。
眼鏡はもちろん当たり前。外すつもりはない。眼鏡をコンタクトにするだけで印象が変わる?
違う。確かに多少は変わるが、”誰がするか”による。イケメンなら眼鏡をかけてもイケメンだろ?それと、コンタクトという自ら眼病リスクを上げる自殺行為はマジでごめんだ。あと付け替えがめんどくさい。
次。俺は低身長。165㎝。確か、170㎝以下は低身長判定なんだっけ?これだけで実際、容姿で舐められるもんなあ。
念のため。ここまで聞いて、俺がきもいって自意識過剰なだけだろ、って思うかもしれん。でも、ガチな話、「なんだ童貞男」って赤の他人の女に言われたことあるからな?いや、ちょっと盛って聞こえるかもしれんけど、マジで言われた。
殺意と同時に、客観的意見ありがとう、という感謝も湧いたよ。だから俺は確実に”チー牛”だ。
次、人間関係。
当たり前だが、彼女はおろか、友達もまともにできたことがない。強いて言えば、小学校や中学の時に同じゲームをしていたオタクとつるんでたくらい。
ゲームしてるときが俺の一番幸せで快感を得られる瞬間だ。
あくまで俺の意見だが、彼女は欲しくない……と言えば嘘になる。そりゃ有性生物だし性欲もあるし、イチャイチャしてみたいだろ?興味ないって言ってるやつは本当に有性生物か?さすがに興味くらいはあるんじゃないか?と疑問が残る。
でも現実を見てると、彼女を作ること自体にメリットを感じない。金も時間も消えるし、彼女の言いなり、ご機嫌取り……全部持ってかれる。まあここは“女子ガチャ”次第なんだろうけど。
それに、もうひとつ怖いのが“リスク”。
俺みたいな弱者男性にとっては、もし万が一、悪い女に騙されたらゲームオーバー。冤罪、被害者ムーブ、何でもアリ。いくら事前に同意してても「やっぱり嫌だった」とか言われたら、もう終わり。口約束なんて何の意味もない。社会的に死ぬ。リスクがでかすぎる。
勘違いする人もいるかもしれんが、俺は男だから、本能で女体は好きだ。これはどうにもならん。 でもさ、その感情を「キモい」って言われるなら、じゃあ世の中の男ほとんどキモくね?イケメンですらそうだろ?──って話。
これらを”彼女作れない言い訳”だと言うが、当たり前じゃないか。認めるさ。実際モテていないのは事実だ。
でもルッキズムが加速してる今、どこを見てもカップルはイケメン(俺調べ)。生まれつきの顔や骨格は努力では大きく変えられない。性格が良くても悪くても、そもそも見た目の第一印象で振るいにかけられる世界だ。
「女性は上位2割の男に集中する」ってデータもあるらしい。こんなの、無理ゲーじゃないすか?誰が無理ゲーに挑みたいと思う?挑戦しても、失敗すれば「社会的に死ぬ」リスクがある。そんな博打、誰が踏み込める?いや踏み込めない。
もちろん、俺は”全員がやばい女”なんて思ってはいない。全員や絶対なんて言葉はあり得ないからな。でも、もしも、勇気を出して関わった女がやばい女だったらと思うと怖いんだよ。社会的に終わらないための自己防衛にすぎないのだ。
そもそも女にとっても、こんなきもいチー牛面に声かけられたら恐怖だろうしな。
俺だって少しでも自分を変えたいと思って、眉毛整えたりしたし、ワックスとかで髪も整えた。でも、親にワックス付けるの見られたらバカにされた。
いや、バカにはされてないんだけど、態度そのものがバカにしていた。てか髪型変えた程度じゃキモさは消えなかったし。無駄な努力って感じたわ。
そうそう、俺は努力という言葉は嫌いだ。何かに挑戦して、できないと嘆いていると必ずと言っていいほど言われる言葉、”努力不足”。
俺の母親は毒親で、平均点の低いテストで70点を取っても「なんで90点取れないの?」「ほかの子はもっとできるのに?」と、必ず”褒めない”。90点以上とか、学年〇位以内取らないとゲームさせない、買わないというご褒美制。もちろん、難易度が高いので達成したことの方が少ない。
それをお前の努力不足と言われ、おかげで自己肯定感はみるみる下がった。俺はそんな親も嫌いだ。ネットでも今じゃ自己責任論者や努力信者で溢れかえっている。俺に味方などいない。
容姿や学力、何に対しても、結果だけ見て”努力不足”と言う奴らにイライラする。全員が同じ環境、遺伝子、容姿、人間関係なはずがないのに、それを”努力してないからだ”と片付けられる。
それに、結果を出した一部の人間の話ばかり持ち出して「努力すればできる」って言ってくる奴ら。あれ、完全に生存者バイアスってやつだよな。
だから俺は努力が嫌いになった。無駄な努力はしなくなった。
まとめると、俺が女を避けている一番の理由は、弱者男性にとって努力だけでどうにもならない上、失敗のリスクが高すぎること。
被害妄想おつ? 行動しろ? だから言ってんだろ、リスクがでかすぎるんだって……軽いもんじゃないんだよ。もし万が一、一部のヤバい女に被害者ぶられたら、男の人生なんて一発で詰むんだよ。……なんで、わかってくれないんだよ……。
熱くなってしまったが、こうやって長ったらしく話してきたように、俺は完全に拗らせたチー牛だ。もはや、もう自分を変えるつもりはない。
というより、もう変えられない。この性格は完全に根付いて、何をするにも巨大なリスクが伴うこの社会で、もうやっていられねえよ。
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で、今度は現状の実生活についてだな。
自己肯定感が下がった俺は、中学からどんどん成績は下がり、底辺校……ほどではないけどランクの低い温玉高校に進学することになった。
当たり前だがそんな高校へ行く知り合いは、ほとんどいない。元々友達もほとんどいないのだが……。
もちろん、勉強が苦手な人ばかりが入ってくるということは、一定数の”ヤバい奴”が混ざっているということだ。全てじゃあないが、不良ってのは、弱い奴を見下して優越感を得る事でしか、自分を保てない連中がいる。そのターゲットになるのはつまり、俺だ。
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俺は入学早々に目を付けられた。
「おい、あの人見ろ、チー牛に似てね?」
「チー牛ってあのメガネでキモいやつ?」
「ガチやん、リアルチー牛やん」
なんて小声でブツブツ言われたな。俺はその時、恥ずかしさで下を向いて自分の席へと歩いたな。内には憎悪もフツフツと湧いていたが、手を出せば終わりと自分に言い聞かせた。
しゃあないよな、見た目通りのチー牛だから。
それからというもの、直接「チー牛」と言われたり、俺が何かするたびにクスクスと笑われたり、班決めなどで毎回余って仕方なく入れられたり……。
精神的ないじりやいじめが多い。
その代わり、今時、昔のヤンキーみたいな暴力こそ正義!みたいな奴らはいないのが救いだな。
とは言え辛いものは辛い。チー牛チー牛とバカにされ、誰かが笑うたびに自分のことかもと不安になり、信頼できる友達も先生も誰もいない。
俺もよく精神を壊さずに、学校に通えてるもんだ。――俺はただ、ブサイクに生まれただけ、恵まれない家庭に生まれ、才能にも恵まれなかっただけなのに。
俺はそんな毎日で精神的にも肉体的にも疲弊しながらも、今日もいつものように学校に向かう。
いつも、人とすれ違う度、俺を見て笑ってるんじゃないか、舐めてるんじゃないか……と不安を持ちながらの登校だ。
もちろん、学校に着いてからも、地獄だ。靴を履き替え、階段を上がる。俺の教室は、2階の端っこにある2年6組。
そして、教室に着く瞬間が、一番緊張する。過呼吸になりそうになりながらも、今日も深く深呼吸をしてから、嫌々ドアの取ってに手をかけた。
スライド扉を開くガラガラという音を立て、俺が教室に入ると、微妙な沈黙が流れ、皆の冷たい視線は俺に注がれる――いつもこうだ。顔にコンプレックスがあるやつにとって、注目されるってのは地獄だ。分かるか?この気持ち。
そして席につけば、今日もいつものように、「チー牛が来たぞ〜」「今日の弁当はチーズ牛丼か?」とか、ちょっかいをかけられる。もはやこのやり取りで今日の一日が始まるってのを感じる。
長くなったが、これが、俺のプロフィールであり――誰にも知られない、俺の“日常”だ。
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※あとがき
この作品を見に来ていただきありがとうございます!
ここまで読めたあなたは強メンタル持ちです(多分)
こんな感じの主人公が、ハイスペイケメンに転生してどうなるのか?
見守っていただけると嬉しいです。
また、これから転生のきっかけや世界観の設定、主人公の拗らせ内面に多く割かれていて、早く展開が見たいと思う方もいるかも知れません。
なので、ヒロインが登場する6話や、その他タイトル見て面白そうなところからでも自由に読んでもらって構わないです。
序盤は自分でもテンポ遅いと思ってるのは反省点ですが、どうか自由なペースで楽しんでもらえればと。
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