第1章(高校生編)

#1 三者面談

俺は天才だ。


成績は過去の俺の努力だが、この顔は親に大変感謝している。自分で言うのもあれだが、俺は多分多くの人間の求めている物を持っている人間だと思う。いわゆる「ハイスペック」というやつだ。


・顔良し

・成績良し

・運動神経良し

・友だちも多い


ここまで自分が出世しまったのは不本意だが、周りからの羨望は意外と悪くは無い。しかし、この問題だけはどのようにして解決すればいいのだろうか。

「小野さん、そろそろ志望校決めないと。もう夏休みですよ。どうするつもりですか?」

「はぁ……」

「……」

「そうよ、隼人。大学どうするの?」

そう、この俺、小野隼人おの はやとが只今抱えている大きな悩みとはまさに、「行きたい大学が決まらないこと」だ。現在、俺と担任の馬が合わないのはこの問題があるからだ。

「上ちゃんさ、それ、俺に会うたびに言うのやめてくれない?一応言っておくけど、これでも毎日考えてるんですよ」

「上ね?」

「上村先生、隼人は進学は出来るのでしょうか」

「まあ、そうですね。成績はもちろんですが生活面は基本的なことはしっかりしていると聞いています」

上村は俺を前にしながら、表情1つ変えずに俺のことを語った。

「成績は申し分無いので、こんな言い方していいのか分かりませんが、大学は選び放題ですよ。今の小野さんなら、難関大学にも挑戦する価値はあると思います」

「だって、隼人。よかったじゃない」

どこがだ。「選び放題」なんて。ただの表面だ。選び人間からすれば、地獄でしかない。何しろ、選択肢が多すぎる。実家から通うというのは絶対条件なので、それ込みで考えたとしてもまだまだたくさんある。

「それでは、志望校をまずは見つけましょう。話はそれからです」

20分を終えて俺と母さんは一礼して静かに教室を出た。すると一気に6月の蒸し暑さが押し寄せてくる。


「お、お疲れ!どうだった?」

「相変わらずだよ。『志望校決めろ』だとよ」

「あははは、だろうな、そんな気してたわ」

廊下で待っていた順番を待っていた、こいつは俺の友人、佐野璃空さの りく。高校3年間同じクラスで普段は佐野と一緒にいることが多い。

「でも、お前ならどこだっていけるよ」

「それさ、上ちゃんにも言われたんだけど」

「マジか」

佐野はこの後三者面談がある。佐野の母親もそばにいたため、俺の母さんが何か話していた。「佐野さんですね?」と上村から呼ばれ、佐野は教室に入っていった。

「佐野くんってどこに行くか決まってるの?」

「いや、聞いたこと無い」

「あら、そうなの」

俺なら嫌だ。自分の志望校を相手に伝えることはしたくない。今のところ、その志望校すら決まっていないのだが。

「期末試験終わったら、この夏休みでもオープンキャンパス行っておいで。そしたら、何か感じるかもしれないじゃない」

「……へいへい」

そうなってくれたらいいなと思った。


しかし、このときの俺は知らない。


次の日が、俺の人生を変える日だったということを。

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