朝食に罪
かちゃりと皿が音を立てた。君がトーストにバターを塗り終えたところだ。
向かいの席で、双子の姉は静かに朝食をとっている。さらり、程々に長い髪が肩から流れ、トーストを迎えに行った口が、狐色のパンくずを一瞬付ける。それを、体勢を戻した彼女は咀嚼しながらも器用に舌で舐め取った。
その仕種にどきりとして一度目を逸らしたが、自分も一口トーストをかじってからもう一度視線を戻すと、二口目を口にしているところだった。
目をつむる癖があるな、と思った。食べ物を口にする瞬間。それはもう大分前に気付いていたが、なんども意識してしまう。もしかしたら俺もやっているかもしれない。そういえば、こいつ睫毛長いな。
じっと見つめたまま考えていると視線を感じたのか彼女がふい、とこちらを見た。
「何?」
「いや別に」
ふうん、と興味なさそうに呟いてから、双子はトーストを置いてティッシュを一枚抜いた。
何をしだすのかと思っていたら「くちについてる。」と一言言って、身を乗り出して俺の口をティッシュで拭う。突然のことに焦って身をよじると、相手は何故か面白そうに笑って体を引っ込めた。俺は未だ暴れてる心臓と火照って来ている顔から自分の感情を再度理解して、それからそんな自分に嫌になった。
平静を装うのと嫌悪感と戦うのに必死になりながら目線を適当なところにやると、まだバターとパンくずを付けたバターナイフが目に留まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。