朝食に罪

 かちゃりと皿が音を立てた。君がトーストにバターを塗り終えたところだ。

 向かいの席で、双子の姉は静かに朝食をとっている。さらり、程々に長い髪が肩から流れ、トーストを迎えに行った口が、狐色のパンくずを一瞬付ける。それを、体勢を戻した彼女は咀嚼しながらも器用に舌で舐め取った。

 その仕種にどきりとして一度目を逸らしたが、自分も一口トーストをかじってからもう一度視線を戻すと、二口目を口にしているところだった。

 目をつむる癖があるな、と思った。食べ物を口にする瞬間。それはもう大分前に気付いていたが、なんども意識してしまう。もしかしたら俺もやっているかもしれない。そういえば、こいつ睫毛長いな。

 じっと見つめたまま考えていると視線を感じたのか彼女がふい、とこちらを見た。


「何?」

「いや別に」


 ふうん、と興味なさそうに呟いてから、双子はトーストを置いてティッシュを一枚抜いた。

 何をしだすのかと思っていたら「くちについてる。」と一言言って、身を乗り出して俺の口をティッシュで拭う。突然のことに焦って身をよじると、相手は何故か面白そうに笑って体を引っ込めた。俺は未だ暴れてる心臓と火照って来ている顔から自分の感情を再度理解して、それからそんな自分に嫌になった。

 平静を装うのと嫌悪感と戦うのに必死になりながら目線を適当なところにやると、まだバターとパンくずを付けたバターナイフが目に留まった。

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