第4話 ゲッカ事後を楽しむ
「すーすー」
暗闇が包み込む夜の十二時。
静かな吐息だけがわずかに聞こえてくる。
「フフっ。寝顔もカッコいいですね」
私は綺麗に整えられたディエルカ様の金髪を撫でた。
この光景を見られるのも夜伽を共にしたメイドの特権。
しばらくは二人きり。もっと密着しようと彼の方に体を寄せる。
「んあっ」
体をよじると中で感じるディエルカ様の確かな暖かさ。本来は居心地の悪さを感じそうな感触だが、ディエルカ様から与えられた物なら不思議と幸せな温もりへと早変わり。
普段は大きくて邪魔としか思っていなかった乳房にしても、ディエルカ様の為に大きく成長したのだと思ったら感謝すら感じる。
「いけませんね。メイドたる私がこんな邪な感情を抱いては」
「ホントよね。騎士爵程度では分不相応よ」
若干開かれた扉から私を睨みつける視線が刺さる。
何もその突き刺さるような熱視線は今に始まったことではない。
私とディエルカ様が励んでいる時からずっと感じていたこと。
「ごめんなさいね、エレオノーラ。子爵の娘である貴方を差し置いてディエルカ様と……でも貴方が悪いのよ。モタモタしてるから。いくらでもチャンスはあったでしょ?」
「くっ……!」
暗がりでも分かるエレオノーラの悔しそうな顔。
エレオノーラはレイベス子爵の娘。その貴族である彼女がディエルカ様のメイドとして仕えている理由はもちろん明白。レイベス子爵がディエルカ様の結婚相手にと送り込んだのだ。
レイベス子爵家は落ち目でありイディナローク公爵の庇護下でなければもはや貴族としての体裁を取れないほどに経済難。
そんなレイベス家が一発逆転として放った計画なのだろうが、落ちぶれた子爵家の娘と四大貴族である公爵嫡男、その中でも群を抜くポテンシャルを秘めているディエルカ様とでは明らかに釣り合っていない。良くて妾だろう。
ディエルカ様はお優しいからエレオノーラが今日の私みたいに迫ったらきっと答えてしまう。
しかし私のようなイディナローク家に仕えるただの一使用人に手を出すのと、貴族の娘に手を出すのでは重みが違う。何かの間違えで妊娠なんてことになればその責任を問われてしまう。
ディエルカ様を落ち目の子爵に奪われるわけにはいかない。
騎士爵とはいえ、貴族ではない私ならいくら妊娠してもディエルカ様の負担にはならないし、私が抑止力にならなければ。
まぁそのおかげで決心がついたし、ディエルカ様と結ばれることができた。
そういう意味では彼女に感謝しなくては。
「ディエルカ様に気に入られているからってあんまり調子にのらないことね!」
「あんまり興奮しないでください。ディエルカ様が起きてしまいます」
「あっ、ごめん」
「あら、意外と素直に謝れるんですね」
私は寝ているディエルカ様の頬にキスすると、乱れた髪を整えながらベッドを降りた。
「ちょっと! あんた何して……」
「これくらいで大げさでは? エレオノーラはディエルカ様と話すたびに顔を赤くしていますが、これでは勝負にすらなりませんね」
「だって……ディエルカ様がカッコよすぎるから……」
「それは同感です」
ベッドの傍らにかけられているバスローブを羽織り、床に脱ぎ捨てられている布面積を少なく改造したメイド服を踏まないよう気を付けながら部屋を出る。
これの効果も相当なものだった。あのディエルカ様が目を奪われるぐらいだし。工面してくれたエリザには感謝しないと。
しかしディエルカ様はこういう格好が好きなのか……。心に止めておこう。
「エレオノーラ、みんなを会議室に集めて下さい。大切なお話があります」
「は? 貴族である私に指図するの?」
「貴族だろうが何だろうが、私たちはディエルカ様のメイドでしょう? そして私はトワイライト家。ディエルカ様の側近であり使用人を取りまとめる立場でもあります。貴族であろうが、一応メイドである貴方の上司……なんですよ?」
「……ッチ。分かった」
「感謝します」
今の舌打ちは聞かなかったことにしておきましょう。
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