目指せ!完全無欠の大貴族!
レノ
第1話 完璧たる貴族
貴族、それは色々な舞台に登場するある種の特権階級。
金と権力を世襲して受け継ぐ彼らはいつの時代も強い影響力を持つ。
「キャー! ディエルカ様―! こっち見てー!」
そしてこの俺、ディエルカ・ロマト・イディナロークは、そんな貴族社会の頂点に位置する公爵家の嫡男なのである。
「フッ、今日も騒がしいな」
俺が廊下を歩くたびに聞こえてくる黄色い声援。
まぁ無理もない。
貴族ヒエラルキーの頂点であり、四大貴族に数えられるイディナローク公爵家の嫡男というだけでも特別なのに、それに加えて成績も優秀。
もちろんそれだけでなく窓ガラスを見ればそこに移っているのは金髪碧眼イケメン高身長の美青年。
こんな完璧な存在を見れば騒がない方が可笑しい。
「よぉ、今日も相変わらずキマッているなディル」
「フリアンか。どうした?」
俺は自慢の金髪をかき上げながら友人であるフリアンに答える。
フリアン・オル・エルバレス。彼もまたエルバレス伯爵家の嫡男。
青髪を短髪にした爽やかさが特徴と言った感じか。俺ほどではないが中々イケメンだ。
「午後から魔法実技のテストだからグラウンド集合だぞ。忘れてないよな?」
「……まさか。忘れているわけないだろ」
「なんか一瞬間があったような……いや、お前に限ってそんな事ないよな」
あぶねー……貴族は舐められたら終わりだ。テストを忘れているとか失態を見せることは許されない。
重要なのは焦っている姿を見せない事。常に堂々としていれば失態を失態と捉えられない。
「さて行くか」
「ディルはどんな魔法を発表するか決まっているか?」
「まぁな」
「おー! どんな魔法か教えてくれよ!」
「まだ秘密だ」
嘘だ。全く決まってない。だが俺なら何とかなるだろ。
現世の俺は前世とは違う。
何を隠そう、俺は人生二回目。前世は日本の東京に住んでいたごく普通の高校生だった。
死因はなぜか一向に思い出せない。
交通事故か何かの事件に巻き込まれたか、はたまた自殺……はないな。この俺に限って。
とにかく気が付けばディエルカ・ロマト・イディナロークとして生まれ変わっていた。
もちろん前世にもそれなりに友人はいたし両親もいた。離れてしまったのは寂しい……がしかしそのおかげで手に入れたこの貴族という素晴らしき地位。
貴族とは金! 貴族とは権力! 貴族とは勝ち組! よほどの失態がない限り俺の人生は安泰と言える。
まぁ安泰すぎるのも退屈だし、せっかく貴族というチートステータスと恵まれたルックスを手に入れたんだ。この勢いで目指してもいいかもしれないな……完全無欠の大貴族というやつを。
そんなどうでもいい事を考えながら適当にフリアンと話しているうちにグラウンドへとたどり着く。
そこには魔法教官に一人ずつ魔法を披露するクラスメイトの姿がある。
「あーやっぱもう始まってんなー」
前世の頃はこういったテストや発表はあまり好きではなかった。
その主な理由は自分に自信がなかったからだ。
しかし生まれ変わった俺は違う。
基本怠惰な性格は変わらないが、大抵の事は高レベルでこなせてしまうこの才能。
今の俺の存在は、高校の頃ころクラスに君臨していたスクールカーストトップそのものだ。この学園に怖い者は存在しない。
「次、マリアンヌ・ベイスフル」
「は、はい!」
強面スキンヘッドの教官に呼ばれた眼鏡をかけた女子生徒は前に出る。
そして右手を前にかざした。
「大嵐(フルヴェント)!」
彼女の声に呼応して緑に輝く魔法陣が展開され激しい風が吹き荒れる。
荒れ狂う風は、グラウンドに並べられた鉄製の的を軒並み吹き飛ばす。
俺の過ごした前世と今を生きる現世の違いは数多くある。
前世の日本は民主主義だが、今俺が生きるこのアドラクス帝国が採用しているのは皇帝を中心とし、貴族に領土を分け与えて国を治める封建制だし、倫理やモラルも違いがあったりする。
しかし何が決定的に違うかと言えば、魔力という不思議なエネルギーを媒介として様々な現象を引き起こせる魔法の存在だろう。
エネルギーは前世でもあった。
石油、ガス、電力。機械を動かしたり熱を出したり様々なことに応用できる。
この魔力も大まかには同じだ。決定的に違うのはこの魔力は人間の体にも宿るということ。
そして魔力は魔法という形で放出できる上、その出力は使用者によって大きく左右される。
魔法の技術もそうだが、魔力が宿りやすい体質化どうかとか宿った魔力の質とかも影響する。要は才能によるところが大きい。
「終わりかね?」
「は、はい……」
嫌味のように一言強面教官が言い放つと、持っているバインダーにマリアンヌの評価を書き記す。
彼女の風魔法も筋は良いが貴族としては何とか妥協点と言った所か。
「次、ディエルカ・ロマト・イディナローク」
「はい」
風で撒き散らされた的とグラウンドが魔法で修復されたすぐに俺の名が呼ばれる。
「貴様、遅れて来たな?」
「バレてましたか」
「当たり前だ。テストの結果によっては例え貴様とて容赦なく赤点を付けるぞ」
「もちろん。公爵家の人間だからと忖度は無用です」
「ふん。ではお手並み拝見と行こうか」
ここ、フェゼスタ学園はアドラクス帝国全土から貴族の子女が集う学び舎であり、将来国を背負う貴族たちが大半を占める。
貴族とは他国から自国と自分の領土を守る存在であり国民を統治する者。
その性質上、貴族の資質としてもっとも重要視されることは国民と領土を守れるだけの武力。
ここで失態を犯せば今後俺の貴族人生は舐められてしまうだろう。
それだけでなく、公爵家の跡取りとして資質無と当主が判断すれば見限られる可能性もある。ここは俺の力を存分に発揮する。
「見て見て! ディエルカ様よ!」
「ほんとだ! イケメンだよね! どんな魔法を使うんだろ!?」
フェゼスタ学園に入学して一か月。初めての魔法テスト。
俺の、イディナローク公爵家跡取りの注目度は高い。
失態は許されない。
しかし何故かこの適度なプレッシャーが心地よい。
多分それだけ自分自身の力を信じているからだろう。
これが前世の何もない自分であれば吐き気でトイレに籠っていること請け合いだ。
「ディル―! 気張ってけよー!」
「はいよ」
さーてと、どんな魔法が良いかな。
一番分かりやすいのはド派手な炎魔法だけど、あえて抑えてクールに決めるのもありだな。分かる人間には分かるような玄人向け魔法技量を見せつけるのもいい。
よし。決めた。
「展開」
俺の周囲に黄金に輝く魔法陣が展開された。その数10。
「行け。流れる光(ルミナスレイ)」
魔法陣たちは一つ一つが独立した動きで空を自由に飛び回り、一斉に光の束が照射された。
照射された全ての光はグラウンドに設置されている的に命中。的の真中だけが綺麗にくりぬかれている。
「以上です」
フッ……決まったな。
10個の魔法陣を全てコントロールし、魔法を発動。
極めつけは全て的の真中に命中させるその正確な射撃。
これは高評価間違いなしだろ。
「え? 終わり?」
「なんか地味じゃない?」
「これがイディナローク公爵家の魔法なのかしら?」
聞こえてくる落胆の声。
フッ、バカめ。これは派手な魔法とは違い、魔法技術を要する玄人向け。
これに関心を寄せないようではたかが知れているな。
「なんかちょっとガッカリだよねー」
「見た目は派手でカッコいいのに魔法はなんか地味―」
あ、あれ……可笑しいな。いくら玄人向けだからと言っても反応が悪すぎる。
まさか本当に不評……なのか?
そんなバカな……10個の魔法陣を緻密なコントロールで捌くことなんて芸当……意外と皆できるのか?
いやでもイディナローク領にいる魔術顧問も5個コントロールするのが精一杯だったみたいだし……ハッ……! まさかアイツ……俺に気を遣って?
実は五十個ぐらい同時にコントロール出来てたり……?
もしそうだとしたら、せっかく付いてきた自信が削がれそうなんだが……。
「フリアン、俺の魔法どうだった?」
「どうだったか……んーまぁ凄かったと思うけど。いかんせん魔法陣を複数コントロールしようと思った事がないからな。何とも言えないと言うのが本音だ」
「ああ。そういう……」
チッ……やはりちょっと先進的過ぎたか。こんな事ならもっと派手な魔法を選べばよかったな。
「まぁそんなしょげんなよ。確かに周りの生徒達からの評価はイマイチだけどあのスキンヘッドは満更でもなさそうだぜ」
「うわー。なんかその言い方嬉しくねー」
だがしかし分かる人には分かるんだな。
この俺の魔法技術が。
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