第19話 はじめての甘え

聡さんが退院の許可をもらい、


光さんが、

「美音!三人で旅行に行かない?」

と誘われた。


「私、お邪魔じゃない?」


「聡さんが、美音ちゃんさえ、良ければ、一緒に行ってくれないかって!」


「もちろん。行きたい。お金は私が払言うからね。」


「ごめん。美音今回はそれは無理かも。

旅行の金額を見せられて目が丸くなった。」


「無理です。」


「今回は、旅を楽しませてもらう助手をしてもらうからね。」


普通だったら、払ってもらうの、断るけど、今回は聡さんと旅行に行きたいので、

珍しく、甘える事にした。


行先は大分の久住と湯布院に行く事になった。


光さん達はたびたびこの大分に来ているらしい。


私はと言うと旅行と言うものは修学旅行しか言った事がない。


なので、夜は興奮して3時間ぐらいしか寝ていなかった。


「さあ、出発よ!」


私は飛行機に乗るのも初めてだった。


緊張している私を見て光さんと聡さんは笑っていた。


私は私を見て聡さんが笑ってくれているのが嬉しかった。


夜眠れなかったせいで、楽しみにしていた飛行機の中では爆睡だった。


久住に着くと、緑いっぱいで私は空気が透き通っている感じがした。


聡さんもこの空気を吸うと病気が治るんじゃないかと思うくらい、綺麗な空気だった。


私たちは乗馬をする事になった。聡さんと光さんは馬にまたがり、華麗に乗りこなしていた。


「なんでそんなに上手に乗れるの?」


「子供の頃、乗馬クラブに通っていた時期があったからね。」


金持ちと言うのは、子供の頃から、すごい習い事をしているんだと改めて感じた。


私はと言うと馬にのったけど、馬が動くたびにお尻が痛くて顔がすごい事になっていたらしく聡さんはまた笑っていた。


聡さんは沢山写真を撮っていた。


「美音ちゃん、旅はね。写真を撮ることも大切なの

写真は思いでを振り返る事が出来るからね。」


光さんは


「私は写真撮るよりこ目で焼き付けたいの

写真から見る風景よりこの目で覚えていたの」


いつも、まったく違う意見なので私はいつも困る。


両方いいとこどりしようと思った。


そういえばいつも光さんの家は写真を沢山飾っている。


いつも二人の幸せそうなあの写真だ。


私も負けじとスマホで聡さんと光さんの写真を沢山とることにした。


三人でアイスを食べたり、テラスで豪華にランチを自然の中で食べたり、


お花を見たり素敵な時間を過ごした。


夜になり、私達は散歩に出かけた。


「ワー!」


空に星がたくさんあり、今にも落ちてきそうだった。


「綺麗。」


「ここに来るとね。二人でいつも、くよくよしていた私達って本当に小いさい悩みだよね。って、話してたの。」


「東京じゃ、絶対こんな景色見れないよね。」


「流れ星こないかな!」


聡さんが懐かしそうに言った。


「そういえば光さん、流れ星ここで見た事覚えてる?」


「もちろん覚えてる。」


「僕たちも若かったよね。またこうして、ここに来れてよかった。美音ちゃんもいるなんて、僕はほんとに幸せものだ!」


「私もここに来て良かった。」


この時間がずっと続けばいいのにって、私は思った。


三人とも同じことを考えているような気がしてならなかった。




次の日は湯布院に行った。


聡さんが


「美音ちゃん、今日はお願いがあるんだ。

沢山美音ちゃんが好きなものを買ってあげたいんだけどいいかな?」


私は光さんの顔を見た。


そうすると光さんが

大きくうなずいた。


「いいの?」

私はずっと遠慮していたが、聡さんに今日は甘える事にした。


「ずっと、美音ちゃんにいろんなものをプレセントしたかったんだ。

美音ちゃんのお母さんに悪いから遠慮していたんだ。

今日は今までの分もたくさんプレセントさせてね。」


いろんなお店を見て、聡さんに沢山の湯布院のお店で沢山の物を買ってもらった。


私の買う姿を見て聡さんは幸せそうな顔をした。


そして湯布院の高級旅館に着いた。


「わー!」


その旅館は綺麗さの中に深みがあり、味わった事のない神秘的な空間だった。


「七瀬さん、いつもいらしてもらいありがとうございます。お待ちしておりました。」


と綺麗な女将がじきじきに出迎えてくれた。


え!光さん達、よくこの旅館に泊まっているの!

私は目が丸くなった。

お部屋に案内されると、私は更に驚いた!


「わー!」

素敵過ぎるし広すぎるお部屋だった。


なぜか温泉風呂も付いていた。


三人でこの広さとは少しもったいない気にもなった。


私は絶対に泊まれないお部屋だ。私の世界とは違うと幼い頃から分かっていたはずなのにまたもやビックリしてしまった。


聡さんはお部屋のお風呂で


私達はお部屋ではなく広い温泉に入ることにした。


「ワー!」


なんて素敵な温泉!


「美音って、さっきから、ワーばっかりだね!」


「感動して、ワーしか出ない。」


「なんか、旅行の美音って、ほんとに面白い。

いつもと違う美音が見れた気がする!」


旅行って、普段の生活とは違いなんだかリラックスできている。


知らない町、しらない景色、私は三人でずっと、今日と言う日が終わらなければいいと願った。


温泉から戻り


「今日は部屋で三人で食事しましょう。」


お部屋まで夕飯を持って来てくれるなんて、

なんて贅沢なんだろう。


初めての旅行でこんな贅沢な旅館だなんて刺激が強すぎた。

私は夕飯を楽しみにしていた。


三人で聡さんの話で花が咲いた。


「二人の出会いを聞いていいですか?」


「僕の一目ぼれかな!仕事の姿勢もとっても熱心でね。」


「昔は二人で仕事の話ばかりしていたよね。」


「でも、あの時楽しかったよね。」


「いつも、二人が仲良しでうらやましい!」


「もちろん。僕の光さんの思いは誰にも負けないからね!」


「ごちそう様です。」


「でもね!美音ちゃんと光さんが合ってから、

光さん、美音ちゃんの話ばかりになったよね。

でも、僕も光さんから美音ちゃんの話聞くの毎日楽しみにしていたんだ。」


「会ったら、暗い子でびっくりしたでしょ。」


「いや、想像以上に素敵な子で僕も美音ちゃんのすぐに、ファンになったよ。」


「通りで、あの頃、クシャミが多く出るわけだ!」


私は尖がらせて言った。


聡さんと光さんは笑っていた。



素敵な食事に素敵な部屋に素敵な二人、


ここは竜宮城なんじゃないかって私は足をつねってみた。


聡さんとずっと一緒に居たい。私は心からそう願った。


帰る日になり、なんだが寂しさが襲って来た。


「まだ、帰りたくないなぁ」


私は素直な気持ちが口にでた。


また、聡さんを失うかもしれない恐怖が東京では襲ってくるかもしれないと思うと、


大分にすっと旅していたかった。


後ろ髪ひかれながら大分を後にした。

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