FUN VS IDOL

こころ

白い雪と、予期せぬ出逢い

side 耀


雪だ。


大学の授業を終えて家に帰る途中、パラパラと雪が舞い始めた。

道理で今日は寒いわけだ。



12月の末。

16時を過ぎれば日も陰り、昼間より一段と冷え込む。


テレビもあまり見ないしSNSもしない俺は、天気予報なんてここ数年確認なんてしてなくて。


もっと厚着して来ればよかった。

なんて、後は家に帰るだけなのに、今更遅い後悔をした。



とりあえず、温かい飲み物でも買おうかとコンビニに向かって歩いていると、後ろから、すみませんと声をかけられた。


振り返ると、そこには雪の精…?と思う程、白くて綺麗な男の人が立っていて。


「突然ごめんなさい、ほんの少しだけ一緒にいてください」

「は。え…?」


突然の事過ぎて頭が回らない俺に抱きつくその男の人。


「え?ちょ、ちょっと、、!」

「しっ、、!ほんとに少しだけ、お願いします!俺を隠して、、!」


上目遣いで真剣に見つめられたら、それ以上何も言えなくて。


分かりました。と伝えると、安堵の顔を見せ、ありがとうございますと微笑み、ギュッと俺の胸元に顔を埋めた。



その瞬間。


5.6人の若い女の集団が、キョロキョロとしながらやって来て。



咄嗟に彼を抱きしめて、俺のコートで隠した。


「奏どこいった??」

「え?こっちに来てたよね??」

「もー!もう少しで家特定出来ると思ったのに!」

「まだ近くに絶対いるよ!」

「さがそさがそ!!」


辺りを見回しながら、またバタバタと走り去っていく集団。


あ、もしかして。


「今の人達に追われてました?」

「……」

「顔、上げて大丈夫ですよ。もういません」

「…ありがとうございました。突然すみませんでした」

「いえ、あの大丈夫ですか?」

「はい、本当に助かりました。本当はしっかりお礼したいんですけど、今ちょっと急いでいて、、。あの、お名前は?」

「あ、葉山って言います」

「葉山さん?」

「あ、はい。葉山耀(はやまよう)です」

「耀くん、かっこいい名前ですね。本当にありがとうございました!いつか必ずお礼させてください…!」


そう言い残し、元来た道を戻っていく雪の精。


…じゃなくて綺麗な男の人。



小さくなっていく男の人をみつめながら、彼が顔を埋めていた胸に手をあてれば、まだポカポカと暖かかった。

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