転生先が序盤に退場するモブ悪役貴族ってマジですか~破滅エンドを回避する為に原作知識で暗躍していたら何故か俺の周りにヒロインが集まり出した件について~

ガクーン

ハーレムゲーの世界に転生したんだが


 突然だが、俺はとあるエロゲハーレムの世界に転生したらしい。しかも、最悪の場面で。



「ステイン! 彼女によくも!」


 端正な顔立ち。黒髪黒目の長身で如何にも主人公という風貌。今、目の前で激怒している彼はブレインソウルというエロゲの主人公である。



「カイン! 止めて!」


 名はカイン。傍らでカインの腕を必死に引き、俺を守ろうとして……じゃないな。カインを殺人犯にしないよう必死に引き留めているのがブレインソウルに数いるヒロインの内の一人、サーヤだ。


 容姿はピンク髪にちょっとたれ目のおっとり系美人。豊満な胸の持ち主で1年生ながらすでに校内から絶大な人気を誇る。


 そんな二人と相対するのは、ステイン・バンディッシュ。バンディッシュ家の跡取りでもあり、本作の主人公のヒロインにちょっかいをかけるモブの中の一人で……転生した俺だ。


 なんで転生先がよりにもよってステインなんだ。最初の方で退場するキャラってしか分からないぞ。



「おいおい、どうしたんだ?」


「ステインがサーヤにちょっかいを出したらしい」


「うわっ、あいつ……終わったな」



 外野が色々言ってる。手を出したのはステインであって俺じゃ無いのに……


 この不条理に怒りさえ覚えるが、今更どうしようもない。必死に説明したって理解などしてくれないのだから。



「今度サーヤに手を出したらただじゃおかないって言っただろ! 今度という今度はっ!」


 カインが視界から消える。


 はっ? あいつは何処に……


 ってか、この場面見たことあるような。

 そうだ。ブレインソウルでサーヤと親密度が急上昇するシーン。ストーリー序盤のあのシーンだ。


 サーヤルートを攻略する上で重要なイベント。なるほど、あの時ちょっかい出してたのがステインだったな。


 俺は現在状況を段々と把握。


 この場面の後『もう少し一緒にいて』という言葉と共に、彼女とベンチで手を繋ぎながら落ち着くまで側にいる、を選択したらサーヤルートが開拓できるんだよな。


 刹那の時間でゲーム内容を思い返しながら、今置かれた現状を分析する。


 でだ、カインがこの後、モブであるステインにする行動といえば……


 ボーっと棒立ちする俺の眼前に突然、拳が出現する。


 そうそう。こうやってステインの顔面を目一杯ぶん殴るんだよな。あれはスカッとしたな……やっぱり、悪役キャラを懲らしめるのが一番スッキリするもんな……って、そうじゃないだろ!

 俺は今ステインなんだ。そして、ステインはぶん殴られる。


 どうするっ……


 短い時間の中、必死にこの場から逃れる術を探る俺。


 避けるか。いや、この距離、もう避けられない。なら、ガードは……無理だな。


 うん、もうどうしようもないな。


 しかし、どうしようもない事に今更ながら気づく。


 この拳、当たったらとても痛いだろうな。何たって、あの主人公のパンチなんだから。せめて、目だけは瞑ろう。怖いし。


 

 カインの怒りに任せた拳がステインの顔面に振り抜かれる。


「グゲホッ!」


 人から出るはずのない声と共に俺は後ろに大きく吹き飛ばされ、机をなぎ倒しながら壁に当たり、止まる。



「ステイン! 彼女に免じてこのぐらいで済ませるが、次彼女に何かやってみろ。この程度じゃ済まないからな! いこう、サーヤ」


「うん」


 カインはサーヤの手を引き、教室を後にする。



「おいおい、あいつ大丈夫か?」


「顔面にクリーンヒットしたよな」


「大丈夫だろ。なんたって、バンディッシュ家の跡取り様なんだからなw」



 やばい……頭がクラクラする。



「だ、誰か……」


 俺は手を伸ばすが、向けられるのは冷ややかな視線と嘲笑のみ。誰も手など差し伸べてはくれない。


 そうだった。こいつ……ステインは嫌われてるんだったな。


 ステインの悪事の数々。それらを知っている生徒は誰一人として彼を助ける事はないだろう。



 段々と意識が消えかかる。


 くそっ、なんで転生するのがステインなんだよ……俺だって……カインがよか……


 バタリ。



 こうしてステインは気を失い、教室に駆け付けた教師によって医務室に直行する事となったのだった。


 

 これは脇役悪役貴族のステインが破滅ルートを歩まないようにする為、主人公に近づかない。ヒロインとは関わらないをモットーに安全安心の学園生活を歩む物語。(願望)


 そして、彼の思惑とは反対にストーリに深く関わっていき、数々の事件と思惑に巻き込まれていくこととなるのだった。



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