第2話「呼び出し」

「ごちそうさまでした!」

30分の食事の後、30分の休憩時間がある。

俺は、マクレ班長に呼び出されていた。


「いやぁ~今日の玉子焼きは最高だった!」

「俺は甘い玉子焼きが大好物でな!」


今日は一段とご機嫌だ。


「班長、話って何ですか?」

「そんな身構えなくて良い、別に悪い話じゃねぇよ?」

「お前が何か聞きたい事があれば直に王が教えてくれるってさ、後忙しくて後回しにしちまった事を申し訳なく思ってるそうだ。」

王様か…会うのは拘束解除以降始めてだ。

「だから今日はもうあがって良い、午後のは俺がやっておくから。」


「迷惑をおかけします。」


「良いんだ、俺の独断だから…後、バルの態度は気にすんな、あいつはここに入るのに凄ぇ苦労したみたいだから。」

「…はい。」


バル、「ギル・バルダーク」


常に怪訝な表情をしている男で分かりやすく俺の事を嫌ってる。

元清掃班の現兵士で、最近清掃監査人として来てるらしいが。

まぁここは雑用であれど基本エリートしか受からないから、

俺の事を敵視するのが普通だと割り切っている。


「…えと、それで何時に会いに行けば?」

「休憩時間が終わる頃には扉の前に待機してろ、それと謁見すれば?って言いな。」

「分かりました、では準備します」


足音が遠くなっていく。


「…っはぁ~~よぉぉぉ」

「あいつはな~んというか、真面目君だな。」

「もっとふざけさせてくれよう、全く。」


「マクレ班長」


「おっバルか、どうした?」


「…説教をしに来ました、その勤務態度は王直属の者として不適切です。」

「すぐにでも直して頂きたい」

「…」

「ちょっとくらい砕けてても、良いと思うけどなぁ~俺は」

「そういうバルだって昔は…」

「…」


清掃寮へ戻り、鏡を見て身だしなみを整える。

医務室の医療鑑定士?とやらに検査してもらって分かった事だが、俺は大体22歳位らしい。


「さて、向かうかな。」


清掃寮から王の居る部屋までのルートは結構あるが、今回は中庭を通って行く事にした。


「っはぁ~やっぱりちょっとだけ中庭浴してこうかなぁ~」

正直めちゃくちゃ緊張してる。


「あの!」

「うぁ」

背後、女の声だ。

…まさか、関係者に謁見をサボろうとしているとでも思われたか。


「いやいや、ちゃぁ~んと向かいますから心配ご無y」

…誰も居ない。


「あの!」

また背後から声。

振り返る…が、居ない!?


「あの!あの!あの!あの!あの!」

四方八方から女の声。


「な、何なんだよ!、用があるならそっちから出てこいよ!」

「あの!あの!あの!あの!あの!」


「ッ!」


怖くなった俺は逃げるように目的地へと向かった。


中庭には女の笑い声がこだましていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る