第25話 四人で祝宴

【四人で祝宴 8月13日 日曜日】


 暑い日が続く、最高気温38℃ 本当に異常な暑さである。

 一昨日、8月9日に籍を入れてきた春樹と玲香は、今日澤正でささやかな披露宴だ。

 あかねと修平はまだ、来ていないようだ。予約席に案内されると、テーブルにカードスタンドが立ててあった。

 うなぎをモチーフにしたハートマークの中に、

『ご結婚おめでとうございます。ウナギのように粘り強く、愛組んで長~幸せをつかみ取って下さい』と書いてある。

 あかねがお店に頼んだようだ。あかねと修平がバラの花束を持って現れた。

「結婚、おめでとう」 修平が言う。

「念願が叶ったね、よかったね」

 あかねが涙ぐんで玲香に言った。


「ママ、修平さん、ありがとう、なんか、披露宴みたい」

「あら、4人で披露宴でしょう」

「結婚式みたい」玲香の目から涙が止まらない。

「よかったね、さぁ、座って座って!」

「乾杯しよう。ご結婚おめでとう、永遠の幸せを・・乾杯」


 春樹も今日ばかりはと、一口飲み干した。玲香がそのコップを取り上げて、ウーロン茶を渡す。

「次はママの番だね、修平はいつの予定?」

 春樹が修平をけしかける!

「まぁ、まぁ、俺たちの事はいいから・・・・・れいちゃん、免許証の名前も変更しなきゃいけないね」


「9日の日に全部、泉の姓に変更してきた。車検もあったし、通帳の名義変更もしてきた。丸1日かかった」


「すご~い、ぜーんぶ、1日でやってきたの。気合いが違うわね」


「うぅん、本当はね、私の誕生日に8月2日に婚姻届けを出すつもりだったんだけど、戸籍謄本って、すぐに取れなくて、だから、9日になったの」


「そう、また、春樹も前もって調べていなかったの!で、どう、新婚気分は・・・・・」


「夢みたい、あのね、春樹が子供ができたらいいねだって!今まで私とは縁の無い世界だと思っていたから、なんか、じわ~と胸が熱くなった。うれしかった。普通の奥さんになれたみたい」


「何言ってんの、普通の奥さんじゃあないの、いや、普通じゃ無いわ、最高に幸せな奥さんだね」あかねがうれし声で言った。

 

 お刺身盛り合わせ・肝焼き・う巻・白焼き・鰻と胡瓜の酢の物・ひつまぶし料理が運ばれてきた。うなぎのコース料理なんて初めてのことだ。

 みんな一斉に箸をつついた。どれもおいしい、

「白焼きってどうやって食べるの」玲香が問う、

「この岩塩とか、このわさび醤油、浸けて食べるのかな」

「おいしいね」あかねの顔がほころんでいる。


「ママ、9日も婚姻届けを出した後、上社のうな昇へ行って、うな丼を食べて、今日また、うなぎ」玲香がつぶやくと、


「なんだよ、イヤなら嫌って言えばいいだろ」春樹が返す。


「だって『長~~く愛す』って言われたら食べるしかないじゃない」


「だから、長く愛していらないんなら、食べなくてもいいのに!」


「永遠に食べるって言ったの?玲香じゃなかったっけ!」


「ハイ そこまで!二人とも今日は何の日?れいちゃんも、今日くらいは春樹に感謝をしたら、お嫁さんになったのよ」


「ハルキ、ありがとう、私、うなぎ大好き!毎日食べてもいいよ!」


「じゃぁ、毎日、来ようか」春樹がまだ、遊んでいる


「えぇっ、いじわる!」玲香はついていけないようでママに話を向けた。


「ねぇ、ママ、ママは修平さんと一緒になる気は無いの?」


「そりゃ、修平さんがもらってくれるのなら、今日の手土産袋の中にでも入って持って行ってもらいたいもんだわ」


「そんなん、重くて、持って行けないよ」春樹は笑った。


「修平さんはママ入り手土産袋、持って帰る気は無いの」

 玲香が不思議そうに聞く。

「参ったな、その話は、また、いつか、今日はお前たちの祝宴だから」

 ゆっくり、お酒をたしなんでいた修平が玲香の質問に困っているようだ!


「なんか、ごまかしている、ママが可哀想」


「わかった、修平さん、前の奥さんの子供が居るんでしょう」


「いないよ、弱ったなぁ、この話は今度また・・・・・」


「そうか、賭け事やり過ぎて借金だらけとか」玲香が突く。


「まさかと思うけど、ホモだったりして、春樹とできていたとか」

 あかねが口に含んだビールを吹き出した。


「アホを言うな」春樹が笑い飛ばす。


 修平が玲香の突っ込みにたまらず、

「うん~ん、わかった、わかった。ここじゃ言えない、今度の日曜、ママと話をするから、それでいいかな」


「私も行っていい」玲香が口を出す。


「いや、ママにしか、言えないことだ。春樹、それでいいかな」


「良いも悪いも、2人の事だから、俺らが口を出すことじゃないよ、

でも、ママ、よかったね」


「今度の日曜日、修平さん、仕事のはずだけど」


「いいよ、休むよ、いろいろあるし」


「わかった、約束、指切りげんまん、嘘ついたら針一万本、飲~ます」

 あかねは修平の顔にめがけて指切りをした。ビールが進む。

 うなぎも平らげて、もう一件付き合おうかって春樹が言うと、あかねが修平に言った。

「ねぇ、どうして、今度の日曜日なの・・・今からじゃダメなの・・・・・今からうちに来て朝まで話しましょうよ。明日、休めばいいじゃ無い、ねぇ、ダメなの」


だいぶん、あかねも酔ってきたようだ。玲香が後押しをして、

「そうよ、それがいいよ、春樹もそう思うでしょう、3対1で修平さんの負け!」


「まぁ、しょうもないな~ママも酔ってきたことだし、じゃ、今から行くか・・・・・」

 修平たちは、春樹のカローラであかねのマンションまで送ってもらう事にした。後部座席であかねが修平の腕をしっかり組んでいる。

 ――甘~いムードが漂っていた。

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