【第四話】誰も知らない、何度も見る夢の話[律目線]
少し地の文にて以下の描写を含みます。
該当:血流、自殺行為
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俺は昔から親に「出来のいい子」、「優等生」と言われていた。
そしてそんな俺には妹がいた。
名前は柊木美月。
俺より出来が悪いとよく親が怒鳴る。
時には怒鳴るだけではなく暴力も振るわれていた。
親は成績重視で、社会からは力を認められいた。
だからよく俺が仲裁に入っていた。
そしてこれは中学生の頃の話。
あの日は、友達の家に遊びに行っていた。
家に帰ってゴミ箱を見ると、ちぎれた絵が書いてあったであろう紙が見えた。
見てみるとその中に一つだけ違う紙が見えて、それには「優秀賞」と書かれていた。
俺はすぐ美月の部屋に行った。
部屋を開けると、灯りはついておらず、勉強机に向かっている美月が見えた。
直後背中に何かが走る。冷や汗をかいた気がした。
嫌な予感がして、変な匂いがした気がして、急いで駆け寄る。
そこには血まみれの腕で、片手にカッターを持った美月がいた。
「な、にやってんだ!美月!!」
すぐさま取り上げる。
焦点があっていない。
顔色が悪い。本当に生きているんだろうか。無表情で、こんな美月見たことがない。
「もう、いいかと思って」
それがその時聞けた一言だった。
小さくて、誰かに言ったものでもなくて、でもはっきり聞こえる声で、ぽつりと。
それからというもの、美月から目が離せなくなった。
次の日には何もなかったみたいに振る舞う美月を見て、気が気じゃなかった。
勉強も頑張った。
何か親とあれば、すぐ気を逸らすようにして、俺の成績に目を向けるようにして。
だから油断していた。
一ヶ月後
その日はいつもしているはずのノックを忘れた。
美月の部屋に入ると
首を吊った美月がいた。
一瞬理解できなくて、でもすぐ下ろして、
急いで救急車を呼んで、願って、願って、
結果一命を取り遂げた。
親は怒った。
汚点のくせにとか、でももう覚えていない。
俺も医者とか警察とかから色々聞かれたけど、記憶がない。何を喋っていたか覚えていない。
それから、美月は笑顔を崩さなくなった。
何があっても笑顔で、それで気味悪がられて同級生に体操服に落書きをされても、常に笑顔だった。
そしてそれから数週間後をさかえに、よく自殺未遂をするようになった。
何度も止めて、ギリギリなことも多くて、本当に、何度心臓が止まったことか
しかもそれが日常的に起きて、毎日本人の言う「洗剤入りお紅茶」を飲もうとするし、心霊スポットでスピーカーと色付きライトを持って踊り出すし、
もう今では目を離しているとこっちが不安になってしまうようになってしまった。
そしてそれが、いつものことになってしまったことが、慣れてしまったことが———それが一番恐ろしい。
だから今ではもう、美月のスマホにはGPSを入れてある。
「私はもう、お兄ちゃんの知ってる美月じゃないよ。空っぽな偽物だよ」
その言葉が頭に残ってて、
そう言われても、どうすることもできなくて、
不眠症なのですら、気づけなくて、気づけたのはその日たまたま美月がコンシーラーをするのを忘れてたから
どんなに努力をしても、どんなに友達ができても、
一番大切で、守りたかったものすら守れなくて、
親から逃げるように美月を連れてこの学校に来たことぐらいしか守る方法も思いつかなくて
目が覚める。
昔の夢。
『俺』にとって、これは昔の『僕』の時の話。
そして『俺』が人前ではみんなの求める“優等生”の仮面を被った『私』になる、そんな今の原点にもありえる夢。
横で寝る美月を見る。
本当に警戒心とかないよな、と心配になる。
腕の解けてる包帯。
毎年初詣で願う「今年一年、美月が生きれますように。あわよくば、生きたいって思ってくれますように。」がふと頭によぎる。
俺はもう一度美月に布団を掛け直して一言
「おやすみ」
どうか、いつか、彼女が自由になりますように
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