薬局行ってきます

天気

第1話 加川 忍のくすり




「俺、喉の調子悪いんで」


「遠藤さんと、保健室行ってきます」


顔色の悪い遠藤さんを連れて、教室を抜け出した。



「遠藤さん、安静にしててね」

保健室の、布団に包まれた遠藤さんを見る。

「ありがとう…ごめんね。」

遠藤さんの言葉が、薬の副作用みたいで痛かった。

「大丈夫だよ。俺ちょうど、喉痛かったし。

保健室これてラッキーって感じ?」

遠藤さんから視線を外す。

「うん……ごめんね」

おい、言語のキャッチボールできてねえな。

俺は、曖昧に笑う。

………。

がらがらがら。

保健室のドアが開く。

「おーい!遠藤さーーん」

永倉君が、顔を出した。

こちらへ寄ってきて、

「あい」

黒いカバーがされた小説を、布団に置いた。

「はい、ありがと」

単純作業のように行われたそれが、とても不気味に見えた。

そして、永倉君は一瞬でどこかへ行ってしまった。

遠藤さんは小説を抱きしめる。

ああ、これが薬だったのか。

「はー、あいつ貸したもん全然返してくれなくてさ」

………。

「返すタイミング笑えるんだけど」

………。

「そーなんだ、仲良いんだね」

「まあ、そこそこ」

……今、俺はどこを見ているんだろう。

薬ってなんだ?誰が処方してるんだ?なんのために?

視線を漂わせながら、保健室を出ることにした。

薬局で、薬の成分でも見るか。

バック用意して、お札持っていて、お会計ありがとうごいざいまーす。

天然水も、一緒に買っておくか。俺、あれが好きなんだよな。

俺は、焦点も合わないまま、教室へ戻った。

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