第2話『遠藤先輩のおごり?(笑)』
サイドバイサイド(仮) 第2話
いつものように、レストランのキッチンで片付けをしながら、私は今日のシフトの終わりを待っていた。外はもう暗くなり、街の灯りが窓に映り込んでいる。静かな時間だ。
と思っていた矢先、キッチンに店長の声が響いた。
「おーい、みんな、ちょっといいか!」
店長の呼び出しに、バイト仲間がぞろぞろと集まってくる。私も、手についた油を拭きながら、カウンターの前に立った。
「今日の営業も、みんな頑張ったな。それで、ちょっと相談があるんだけど。」
店長は、少し改まった様子で続けた。
「実は、遠藤先輩が、バイト上がりにみんなで食事に行こうって提案してくれてるんだよ。」
「えっ!遠藤先輩が!?」
「うわ、マジで!やった!」
ざわめきが広がる中、私の心臓は大きく跳ね上がった。遠藤先輩が、私たちバイト仲間全員を誘ってくれるなんて、夢にも思わなかった。
店長が、先輩にマイクを渡すように促すと、先輩が少し照れたように前に進み出た。
「あの、みんな、今日の営業お疲れ様です。えっと、前から皆さんとゆっくり話せたらいいなと思っていたので、もしよかったら、近くのお店で軽く食事でもどうかなと思って。」
先輩の言葉に、私の顔は自然と熱くなった。まさか、私なんかが誘われるなんて。でも、先輩は「みんな」と言った。ということは、私も、他のバイト仲間と同じように、輪の中にいさせてもらえるということなのだろうか。
「おお、いいな!ぜひ!」
「賛成です!」
「賛成!賛成!」
あっという間に、賛成の声が次々と上がった。私も、緊張しながらも、小さく「はい」と頷いた。
「じゃあ、そうと決まれば、片付けが終わったらすぐに出ようか。場所は、駅前の新しいイタリアンにしようかと思ってるんだけど。」
店長がそう言うと、先輩が嬉しそうに頷いた。
「ありがとうございます、店長。皆さん、準備できたら向かいましょう。」
先輩の優しい声を聞きながら、私は信じられない気持ちでいっぱいだった。まさか、憧れの先輩と一緒に食事をする機会が巡ってくるなんて。しかも、あの緊張でうまく喋れなくなってしまうかもしれない、先輩と、間近で。
「ねえ、なるみ、行くんでしょ?」
隣にいたちはやが、ニヤニヤしながら私に話しかけてきた。
「う、うん…行くけど。」
「顔、真っ赤だよ?大丈夫?先輩に話しかけられるように、今日は何か練習しておく?」
「練習とか無理だって!」
ちはやにからかわれながらも、私の心は期待と興奮でいっぱいに膨らんでいた。今日は、一体どんな時間が待っているのだろう。遠藤先輩の隣に並ぶことができるのか、それともまた、遠くから見つめるだけになってしまうのか。
どちらにしても、このチャンスを、私は絶対に逃すまいと、心に誓った。
(つづく)
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