第3話 里の雑用係

「で、どうだった?」

 笑うでもないガイの問いかけに、食堂兼酒場から暗い顔をして出てきたロゼットは、ため息と共に首を振った。

「ダメだった」

「だろうな。飯時の忙しい時間帯っつっても、里の人数じゃたかが知れているだろうし、仮に忙しくなったとしても、アイツらの力じゃ人手は十分だろう」

 ロゼットから職探しの話を聞いたガイは、直後に「難しい」と判じたのと同じ理由を繰り返す。確かに、ここの給仕だったメイと他三人の力は、ガイの言う通り、他の手を必要としないモノであり、それぞれに補い合うことも出来るのだから、新参者が勤めるには難しい。

 だが、ロゼットが断念する一番の理由はそこではなく、

「ガイの言った通りでもあるけど……私じゃサイズ的に無理だって」

 応対してくれたメイは、ロゼットの申し出にすぐさま現実を突きつけてきた。

 昨日、姿移しをしなかったロゼットたちに驚きつつも、「良かったじゃないか」と言ってくれた口で、「客ならまだしも、従業員じゃデカ過ぎるよ!」と悲鳴にも近い声を上げていた。

「あー……。まあ、そうか。アンタたち姉妹は、長さま程ではないにせよ……」

(私的には、私たちとオーサさん以外が小さいんですけどね)

 なんと続けたものか言葉に迷う様子のガイに、心の中で付け加える。

 ガイは結局ゴニョゴニョ濁すと、仕切り直すように殊更明るく言った。

「そ、そうだ! じゃあ、他のとこで仕事がないか探そう。大抵の奴は貰った力を活用した職に就くんだが、中には力がなくても出来そうなモンもある」

「え? 仕事はいいの?」

「ああ、気にしなくていい。紹介するにしても数は多くないしな。そんな長くは掛からねぇだろ。それに、俺の仕事は時間に決まりがねぇからよ」

「そう言えばガイの仕事って、木こり?」

 初めて会った時と今日と。

 どちらもノコギリで木を切っていたことに思い至れば、ガイは首を振った。

「いや。特に名前のない里の雑用係さ。主に力仕事のな。俺が貰った力は本当にただの力だったから、重い物を運ぶのも苦じゃねぇし、木を何本切ろうが大して疲れもしねぇ。とりあえず、数さえこなせば文句も言われねぇ気楽な仕事だよ」

 サイズ感はさておき、見た目にしっくり来る仕事内容と笑い方。

 それはそれで大変な気もするが、本人が良いというならいいのだろう。

「じゃあ、お願いするわ」

「おう。任せとけ」

 ドンと胸を叩く姿こそ頼もしく、ロゼットの頬が緩む。

 ――ガイが紹介してくれても多くはない仕事数には、一抹の不安を抱えつつ。

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