最後のチャット

大学時代の友人・真由から、ひさしぶりにLINEが来た。


「元気? いきなりごめんね。ちょっと話したくて」


真由は明るくて社交的な子だったけど、卒業後はどこか元気がなかった。


久々だったし、夜中だけど少しだけ通話することにした。


「あのさ……私、最近、変な夢見るの」


「変な夢?」


「知らない部屋にいて、誰かにずっと“ここにいちゃダメ”って言われるの」


「怖いなそれ」


「でもね、夢から覚めても……なんか、感覚が残ってるの。ほんとに誰かいたみたいな」


「まあ、ストレスとかあるとそういうのあるよ」


俺は軽く流した。真由も笑って「だよねー」って言って、それで通話は終わった。


その翌日、また真由からLINEが来た。


「……ねえ、私、ほんとにここにいたっけ?」


「どういう意味?」


そう返したら、既読がついたまま、返事はなかった。


そのまま3日が経って、気になった俺は大学時代のグループLINEで真由のことを聞いてみた。


すると、友人の一人がこう言った。


「え……? 真由のこと、知らないの?」


「お前……通話したとか言ってるけど、マジで冗談きついぞ」


何が?と思ってスマホを見返してみたけど、真由とのLINE履歴が全部消えていた。


通話履歴も、チャットも――すべて。


慌てて“真由”の名前で検索しても、アカウント自体が見つからない。


怖くなってSNSで名前を調べると、出てきたのは彼女の追悼ページだった。


――3年前、自殺していた。


でも、俺は昨日、彼女と話した。確かに、声を聞いた。


もう一度スマホを確認する。


スクショも何も残っていない。なのに、ただひとつだけ、スマホのカレンダーに予定が追加されていた。


【まゆと話した日】

日付:昨日

時間:23:58







《意味がわかると怖いポイント》

• すでに亡くなっていた友人「真由」が、何らかの形で“接触”してきている。

• 通話もLINEも履歴が消えているのに、スマホのカレンダーだけに痕跡がある。

• 彼女のセリフ「私、ほんとにここにいたっけ?」は、自分の存在が消えかけていることへの自覚。

• そして“カレンダーの記録”が意味するのは、**彼女がこの世に“最後にいた痕跡”**なのか、あるいは“次に呼び出される合図”なのか……。

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