獣王と星の末裔

ひなた

第1話 はじまり

太古の昔、そこには何もなかった。

光も闇も、無という概念すら存在しないところに、生じる筈のない力が生じた。

それをジレメント【力素】という。

どのような奇跡が働いてそれが生まれたのかは神々にしか分からぬ。

その力素は凡ゆる力の源だった。

そうして重力が生まれ、引力が生まれ、磁力が生まれて時間と空間という概念が生まれた。


まだ生命の息吹ひとつないころ、光が生まれ、闇が生まれ、熱が生まれ、塵芥が生まれ、その集合体が生まれた。

巨大な重力の周りでは時間という概念が酷く緩やかに進み、生じた磁場に空間という概念はひしゃげた形に捻じ曲げられた。

そのようにして生まれた無生物の中に、いつしか命あるものが生まれ始めた。


剥き出しの力素を留めておく器、それが身体だった。

目に見えぬものを留めておくためにはそれを縛る必要がある。

力素はありと凡ゆる形あるものの中へと入り、魂を生成した。


力素は全から一を創り出した。

魂は個を作り出し、自他という概念を生み出した。

そうして今日まで、多くの命が生まれ、消えて、また生まれ、幾億の営みを繰り返して漸く人が生まれたのだ。

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