第12話
仕事が終わり、帰り支度をしていると仕事用の携帯に着信があったから急いで取った。
「もしもし、イーズ社企画開発部の笹木です」
『もしもし、聖くん?びっくりした?』
なんだ、弦か。びっくりしたけど、ここは社内で人もたくさんみている。とりあえず、私用の電話に掛け直してもらうように言う。
「弦、これ社用のだから会社から通信料金が引かれるんだ。だから私用の方に掛け直してくれない?」
『なーんだ、反応薄いなぁ……まぁいいや、かけ直すね』
ブチと切れた電話を置き、退社する。お先にあがります、周囲に声をかけあがる。自分の所属する企画開発部のフロアを出てエレベーターホールに出た時に電話は、またかかってきた。
『もしもし、聖くん?私偉いからちゃんと掛け直したよ』
「うん、ありがとう。急に電話してきてどうしたの?」
『え?聖くんが浮気してないか、監視するためだよ』
浮気なんて、弦と付き合った時からしないって決めてるし、そもそもしようとも思わない。電話が長くなりそうだと思った俺は、置いてあるソファに座ることにした。
「しないに決まってるじゃん」
『不安なの!新入社員のベルタちゃん?って子すごいかわいいし、もし聖くんがその子のこと好きになって私のこと忘れたらどうしようって……私、私……!』
電話の向こうで少し啜り泣くような声が聞こえる。
「弦。俺は弦しか好きじゃないよ。そんなに泣かないで。弦の可愛い目が腫れちゃうよ。それにラッカムさんのことは、人として良い人間だとは思うよ。けど恋愛的な意味で好きになったのは、弦だけだよ。それに俺は弦のことを1ミリも忘れたことはないよ。声だって、視線だって、それこそちょっとえっちなことだって」
ちょっとふざけると、聖くんのばか!と怒号が飛んできたけど可愛い。
「弦が俺のこと覚えてる限り、俺はいつまでも弦のこと忘れないよ」
『死ぬまで忘れない?』
「死んでも忘れないよ。弦だってそうでしょ?」
そう弦に聞くと、少しの間の後、うんと返ってきた。
「弦、不安になって声が聞きたくなるのはよくわかるんだけど、仕事中はこうやって弦に付き合って話すのは難しいから、メッセージ入れておいてくれると助かるな」
『なに?仕事中に浮気するってこと?』
まだ、弦は俺が仕事中に弦のことほっぽっといて浮気をするって思ってるようだった。そんなこと絶対しないのに、なんでわかってくれないんだ。
「絶対しないよ。それは弦が一番わかってることでしょ?」
『そうだけど……うーん。今日は聖くん信じる。いつも聖くんは約束守ってくれてたから、今も嘘ついてないだろうし……仕事中邪魔しちゃってごめんなさい。じゃあ切るね、聖くん大好き』
「俺も好きだよ、弦」
電話の切れたスマホを見つめる。ごめん、弦。さっき言ったことの中で、1つだけ嘘がある。本当は弦の声、思い出すのが難しいときある。でも、弦に対する思いは変わらないから安心してほしい。
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