第6話
通勤で使う電車はまぁまぁいつも混んでて、座れたらラッキーくらいって感じの混み具合だ。今日はラッキーで座れた。それまでは良かったんだけど、座った途端なぜか、前の人から視線を感じる。そんなに座りたかったのかな、女の人だし譲るかそう思って顔を見ると、弦だった。
(なんで……!?)
顔を上げて、目があった途端うっそりと笑みを深める弦。そう思ったら、スマホを取り出して何かを打ち込んでいる。するとブブブ、と通知が来る。
<聖くん、久しぶり>
さっきまでの狂気的な笑い方ではなく、微かな微笑み方。俺が好きだった弦の笑い方だ。懐かしさが込み上げてきて、なぜか、泣きそうになる。
<もうすぐ帰んなきゃだから、ここにいれるのはあと少しなの。
だから聖くんのとこ来ちゃった。やっぱ生で見る聖くんはかっこいいね>
素直な弦の褒め言葉にちょっと照れ臭くなる。
<久しぶりに聖くん見たらちゅーしたくなっちゃった>
え?と思っていると彼女の顔が近づく。
「えへへ、しちゃった」
はにかむ弦はかわいいけど、電車の中でこういうことはしないでほしいと思う。
<あ、ごめん降りなきゃ。聖くん大好きだよ>
そう言って、電車を降りていく弦。電車に乗って15分ほどで会社の最寄りには着くのだが、俺は弦が降りてった後に眠ってしまったみたいだった。次は––––と最寄りの駅名を告げるアナウンスでハッとなった。
(実は弦は夢だった……?)
そう思うが、メッセージの履歴は残っている。こんな幸せな日が毎日続けばいいのにな、と思う。
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会社に着くと、またも同僚から突撃された。今度は男の後輩だ。
「先輩、電車の中でずっとうなされてましたけど、大丈夫でしたか?」
「え?うなされてた?」
その後輩曰く、俺は電車には立って乗っててあまりにも体調が悪そうで座ってる客に、座らされていたそうだ。しかも、なんかうわ言を言っていたらしい。口が動いてたから多分なんか言ってたけど、声も聞こえないし、多分日本語だから何言ってるかわからなかったとのこと。
俺にはそんな記憶はないし、弦との幸せな夢のようにふわふわした記憶しか残っていない。一体何がどうなっていたんだ。
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