血紋の黎明 —終焉を裂くは我が刃—
コテット
第1話 血刃の目覚め
夜の帳が降りる頃、辺境の村ミストレイは、静かな闇に沈んでいた。
だがその静寂は、長くは続かなかった。
森の奥から、不気味な唸り声が響く。
犬とも狼ともつかぬ低い声。それが複数重なり、まるで森全体が呻いているかのようだった。
「虚獣だ……」
村の門番が震える声で呟いた。
間もなく、闇の奥から這い出すように現れたのは、歪んだ四肢と鋭利な顎を持つ影たち。
人の形を部分的に残しながら、皮膚は黒く裂け、魔素の毒に爛れて光を放っていた。
村人たちは悲鳴を上げ、慌てて戸口に鍵をかける。
鍬を手にした老人が、祈るように胸を抑えて膝をついた。
その様を見て、若い門番は息を呑む。
誰も戦えない。誰も、守れない。
いや——
一人だけいた。
門の傍、外灯の弱い明かりに浮かび上がる影。
黒いコートの少年が、ゆっくりと足を踏み出した。
「……下がっていろ。」
低く響く声に、門番は我に返る。
少年——ライオット・クロウの目は、虚獣だけを真っ直ぐに見据えていた。
虚獣たちは、血の匂いに気付いたのか、一斉にこちらへ向かってきた。
次の瞬間、ライオットは右手の袖を裂いた。
そこに刻まれていたのは、忌むべき黒魔紋。
その魔紋が、青黒く光を帯びる。
呼応するように、ライオットの皮膚から血が零れ——地に落ちる前に、鋭い刃へと変わった。
「血刃(ブラッドエッジ)……展開。」
囁く声と共に、血の刃は彼の手の中で脈打つように震えた。
虚獣が吠えた。
唾液を撒き散らしながら、異様な速さで飛び掛かってくる。
その牙が届くより早く——
ライオットの血刃が、赤い弧を描いた。
虚獣の顎が外れ、首が半ばから斜めに裂ける。
黒い体液が噴き出し、地面を焦がした。
しかしライオットの目は微かに苦痛に歪む。
(やはり、血を使えば——心臓が……)
鼓動が痛みと共に速まる。
血刃の代償は、確実に彼の寿命を削っていた。
だがそれでも。
「……お前たちを通すわけには、いかない。」
再び迫る別の虚獣を前に、ライオットは血刃を逆手に構えた。
短い息を吐き、地を蹴る。
赤い残光が、闇夜の中で一閃した。
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