41話.新たな仲間、白百合と『アイモ』


41話.新たな仲間、白百合と『アイモ』



 津賀が入院してる部屋で、津賀と陽乃下ひのもとさんと話をしている。……まだ下の名前で呼ぶのは難しそうだ。


「あの時、一花いちかを背負う知春を見て思った。知春なら一花を、そして私たちを大切に考えてくれると。お互いに守り合える存在になれると」

「……守れるかと言うと微妙じゃないか?男の俺が言うのも情け無いかもしれんが、強さで言えば津賀の方が断然強いはずだぞ?」


 地下迷宮での事件で見た津賀は、カジュアルな服の上に赤い装備、皮の胸当てとグローブ、脚装備を着けていた。恐らく格闘家スタイル。となると躰道の心得があるから、それをメインにした戦い方だと思う。


 躰道が魔物相手にどれほど通用するかは俺には未知数だが、人型相手には無類の強さを見せそうだ。敵の攻撃を捌きながら攻撃に繋げられるし、それにアクロバティックな脚技は大きい魔物にも効果があるだろう。


 それと三バカの一人を庇うときに見せた速さ。あれは純粋に脚力の速さが凄かった。運足によるものだけでは、あの距離をあの速さでは埋められない筈だ。達人にもなればいけるのかな?


 恐らく脚力が上がるスキルを持っていると思う。それか総合レベルが高いとか?……感覚としては俺より総合レベルは低そうなんだよな。

 肉体そのものの強さによっても、発揮される力は変わってしまうから定かでは無いが。


「そう言った強さは経験によるものも大きい。実力は後から付いてくる」

「そうだな。アタシたちもまだ1年とちょっとだけど、探索者として色々経験は積んでるからな。菅田も直ぐに強くなると思うぜ」

「うん。守り合うと言うのはそれと違う。人としての繋がり」

「人と、して……」

「理解し合えること。触れ合えること。心の距離、存在としてそこに居てくれること」


 言葉としては、人としてごく普通の、当たり前だと思われること。だがそれは決して当たり前にあるものでは無い。それを俺は理解していた。


「地下迷宮で知春に背負われた一花は、とても安心していた。知春を信頼していた。私が妬くほどに」

「まま待て白百合!それはあれだぞ!お前の勘違いっつーか」

「強がりは良くない。いつも言ってる。無駄な意地ほど弱いものは無い」

「つったってな……。本人を目の前にしてはどうしても……」


 それは俺も思います。とても気恥ずかしい。二人して顔を赤くしてるだろう俺たちを見ても、陽乃下さんは微笑むばかりだった。


「理解者は多い方がいい。私だけだとどうしても難しい事もある。夏場とかは特に、一花と一緒に居られる時間が減ってしまう」

「あぁ……そういや今年も暑かったからな。夜も極端に短かったし」

「なるほどな。物理的な制約があるのはキツいだろうな」


 日差しに当たると痛みを伴うと言う陽乃下さん。その名前は皮肉が過ぎて笑えない。彼女も体質だと言っていた。ならばこれまで、さぞ生きにくい思いをした事だろう。


「それに地下迷宮には私たちが望むことも多い。私と一花が探索者になって潜っているのもそのため。知春も探索者になるってことだし、私たちが間に入れば、きっと合格もしやすくなる筈」

「探索者になるには、探索者の推薦があった方が良いからな。探索者は人柄が重視されっから。菅田ならそこら辺、アタシらも自信持って推薦出来る」


  ん?そういやスルーしていたが……。


「俺、特に探索者になるつもりは無いぞ?」

「「……え?」」


 あれ?どうしてそう思われてるんだろ?



「んだよ、ただの勘違いかよ」

「あの場に居たからてっきり……。はぁ」


 そうだったわ。この二人との出会いって、俺が勘違いして探索者装備のショップに行った時だったわ。それで地下迷宮に潜ってるのも見られているわけだし、これまでずっと“探索者志望”だと思われてても無理はない話だった。


「ケンゾウさんも随分と期待してたのにな。なんて言やぁ良いんだか」

「え、ケンゾウさんが?」

「うーん……」


 そうか、ケンゾウさんも俺のこと……。なんだか申し訳ない気持ちになる。


「アタシたちにとってもケンゾウさんは大先輩だし。そのケンゾウさんが『将来有望な奴が出てきて嬉しいぜ!嬢ちゃんらも居るし未来は明るいな!』って昨日ここではしゃいでたぞ?」

「ケンゾウさんがそんな事を。そっか……」


 期待して貰えてると思うと惜しい感じもする。仕事を探さなきゃいけないとも思ってたし。探索者、か……。


「うん。私も知春は探索者やれると思う」

「ヒノ……白百合もか?」

「だって知春は、かなり総合レベルが高い筈。身体を纏う“魔素”が初心者のそれとは違う」

「だよな、アタシもそれは感じたわ」

「そうなのか?」


 二人には総合レベル、全てのスキルレベルの合計値のことだが、15ぐらいは有ると見えてるらしい。


 実際は30以上行ってるとか言えないな、こりゃ。フェイに貰ったイヤーカフによる“擬態”が効いてはいるみたいだが、半分くらいに見せてるのかね?


「それにスキルで身体を鍛えたい、レベル上げをしたいって事なら、探索者はうってつけ。地下迷宮は下に行くほどレベルも上がりやすくなるし、身体も鍛えやすくなる」

「そうだぜ?アタシたちも既にレベル20以上有るからな。一昨日はその、ちょっとドジしちまったけど、本当はつえーんだぞ?」


 あの時は場が混乱してたから仕方ないと思うし、二人の強さを疑ってはいない。それに魔物相手と人間相手は違う。全力で倒しにいける魔物と違い、人間に全力で挑めば殺してしまうし、それは地下迷宮内であろうと殺人になる。情状酌量などで量刑が減ったとしても、罪は罪として消えないのだ。


 俺の身体改造か。体質の改善、内臓の強化はほぼ終えているとは言え、身体改造となるとまだまだスタートラインに立ったばかりだ。地下迷宮で鍛えながら、スキルも上げられて稼ぎも得られらなら、まさに趣味が実益になるって事になる。


 加えて総合レベルの高さを活かすなら、地下迷宮の中が俺には有利になる。なんかおあつらえむきって感じで、これ以上無いように思えてくる。ケンゾウさんの期待にも多少応えたい気持ちはあるし。考えてみようかな?


「とにかくよ、菅田は探索者の適性はある筈だから、あとは菅田の気持ち次第だな!」

「それに探索者にならないとしても、私たちの仲間と言う気持ちは変わらない。そこは気にせずに考えてくれたら良い」

「……分かった。色々と考えてみるよ。なんか見舞いに来たのに人生相談みたいな感じになって悪かったな」


 二人と話せて良かったな。選択肢が増えたのもそうだし、家族以外の“仲間”が出来たと言うのも嬉しい。フェイは……彼女も仲間で良いんだろうか?……なんか親指立ててるフェイのスタンプイラストが頭に表示された気がする。


「そこは謝るんじゃ無くて『ありがとう』だろ?」

「うん。私たちもありがとう、知春。それと私は白百合だから。もう仲間」

「ああ、分かったよ。ありがとう」

「あっ!そ、それならアタシのことも……その、一花って呼んでも、良いぞ?」

「ふふふふ、一花可愛い。さすが私の一花」

「んだよ、揶揄うなよ。あとお前のじゃねーし!」


 うん、やっぱりこの二人は愛でるのが一番だ。大切に見守ろう、育てよう。


「……知春の顔、キモくねーか?」

「たまにあの顔を見せる。触れない方がいい」


 おい、聞こえてるぞ?


「んじゃ俺は帰るわ。検査入院って事だし直ぐに退院出来ると思うけど、お大事にな」

「おう!来てくれてあんがとな、ち……ちは、知春」

「ああ、またな一花」

「ふふ、一花顔赤い。可愛いね、なでなで」

「うるせぇ!離せ白百合!暑苦しい!」

「はは、じゃあな」


 二人を置いて、俺は帰ろうとドアを開けると。


「あ、知春も軽く診てもらったほうがいい」

「そうだよ、お前も怪我とかしてるんじゃないか?俺を庇いながら魔物と戦ったんだからな」

「痛みとか無いぞ?怪我もしてないし」

「それでも。油断良くない。アイモの紹介もしたいし、着いてきて。一花、少し外すね」

「うん。アイモさんに次の検査の時間聞いてきてくれ」


 そう言う事になって、俺は津賀の……一花の病室を後にしたのだった。


「あいつが耳に着けてるの、どこかで……」



 しばらく歩いてやって来たのは、『探索者総合医療科』と書かれた札のある部屋の前だった。


「ここは探索者や地下迷宮に関わる医療を中心に研究されてる。アイモはここの特別研究員で、この時間はここに居るはず。空いた時間で私の護衛もしてくれてる。良い子」

「良い子なんだ」

「年齢は私より歳上」


 歳上に良い子って……。


 ドアを開けると、普通の診察室のような空間と、カーテンが掛かった先に別の空気があると分かる構造の部屋だった。消毒液の臭いに混じり、別の何かの臭いもある。


「アイモ居る?診て欲しい人を連れてきた」

「白百合?少し待っててください」


 イントネーションが多少違和感はあるが、流暢な日本語がカーテンの向こうから返ってきた。日本語の発音は難しいと聞く。難しいと言うか聞き慣れない、だったかな?聴き取りが難しいとか。日本人が英語を上手く発音出来ないのと似てるだろうか。


「白百合、調子はどう?」

「良いよ。そっちは?」


 わぁっ!英語で喋ってる!挨拶しか聞き取れないよ!


 現れたのは茶色がかった長い黒髪に、欧米人らしい目鼻立ちがくっきりした美しい顔。背が高く顔が小さいシルエットは芸術的にすら感じる。

 クリーム色のセーターの上に白衣を着て、まさに女医さんと言う風貌が、さらに圧倒される雰囲気を感じた。


「私はシモナ・アンダーソン。一花を助けてくれたって人ね。あなたの応急処置が無かったら危なかったと思います。私からもお礼を」

「おお、これはご丁寧に」


 ナチュラルに握手を求められて応じる。外国の女性は背が高いな。日本語で話してくれてるのに緊張が止まりません!!


「ふふふふ、緊張してる知春も面白い」


 面白くありませんよ!!

 


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菅田スダ 知春チハル


◆シンタイキヨウカ

・新躰強化 Lv.8

・身体器用 Lv.6

・進退強化 Lv.6

・待機妖化 Lv.4

・息 Lv.4

・気 Lv.4


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津賀ツガ 一花イチカ


◆ラビットラピッド Lv.22


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陽乃下ヒノモト 白百合サユリ


◆ディープフォレスト Lv.27


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◆シモナ・アンダーソン


◆魔操 Lv.10 体術 Lv.8 回復 Lv.5

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