6話.新たなスキル、そして再会


6話.新たなスキル、そして再会



 思い出していたのは、スキルが新たに発生する前のこと。あの時、考えていた事がそのままスキルとなって新躰強化が生えてきた。

 と言うことは、自分が欲しいスキルを考えるだけで、新たに生み出せるのでは無いだろうか?……なにそれチートじゃん。


 なんて美味い話があるわけもなく、結果はもちろん失敗に終わった。

 健康体とか、肉体改造とか、あるいはアイテムボックスとか錬金術だとか。とにかく色んなものをイメージしてみたが、一つもスキルは生えてこなかった。

 まあ試すのはタダだからね。べ、別に悔しくなんて無いんだからねっ!


 古き良きツンデレ構文でお茶を濁し、少し視点を変えて考えてみる。

 新しいスキルはシンタイキヨウカについて考えていた時に生えた。もっと言えば、シンタイキヨウカというその文字について考えていた時、だ。となると?


『シンタイキヨウカのスキル名の範囲でなら、新たにスキルを作れるのでは?』


 一度そう閃いてみると、最早それしか無いんじゃないかと確信めいたものが、自分の中に湧き上がっていた。


 スキルを発動する際もシンタイキヨウカが同時に発動する感覚があった。つまり“シンタイキヨウカから”なら、新たにスキルを生やす事が出来るのでは無いか?


 そんな考えから生えたスキルがこの3つ。


・身体器用 Lv.1

・息 Lv.0

・気 Lv.0


 まず真っ先に考えて生えてきたのが『気』のスキル。だって強そうじゃん?気功とかあるし、波動とか飛ばして攻撃したり。身体を羽根のように軽くしたり、あるいは鋼のように硬くしたりとか。男のロマンじゃん?


 それから『息』のスキル。これも地味に強そうじゃん?気との親和性も高そうだし、身体を活性化させたり、回復力を高めたりだとか、なんか強くなれそうじゃん?じゃんじゃんうるさいな俺。


 でもこの二つが生えたときのレベルは何故か0。発動を意識してみても実感が無いし、上手く発動してるのかも怪しくなる。

 新躰強化は最初からレベル1で効果もあったのに対してこれは何故なのか。考えた仮説は以下。


・どちらも成長が遅いスキルだから

・抽象的なスキルだから


 どちらもありそうだし、実際そうなのかも知れない。だが自分の感覚がこう告げていた。


・シンタイキヨウカから使う文字数が少ないほど、扱いが難しいスキルになる


 なんとなく、これが正解な気がする。文字数とスキルの難易度、成長度合いは関連性があるのでは。


 そこで試しに文字数の多めなスキルを考えた。最初は『器用』とするつもりだったスキルだが、これで扱いが難しかったら本末転倒。器用を扱うために器用さが必要となっては意味がない。そこで作ったのがこれ。


・身体器用 Lv.1


 始めに『新躰器用』とイメージしたがスキルは生えず、色々試してみたら『身体器用』でやっと生えた。

 レベルは1。使ってみると、指先の感覚が普段より鋭敏と言うか、繊細に動かせる。効果としては乏しいのだが、スキルとしては扱いやすいように思える。


 生えた3つのスキルを色々と使って使用感を確かめ、これまでの情報を整理してみる。


・スキルは『シンタイキヨウカ』の文字の範囲で増やせる

・文字数に縛りはないが、少ない文字数は扱いが難しく、成長も遅い

・使う文字数が多いほど無意識に使えるし、成長もしやすくなる

・文字数の少ない、扱いが難しいスキルほど意識的に柔軟に使える

・文字数の多いスキルは扱いやすいし無意識的に使えるが、使える範囲は限定的なものになる


 文字数による使用感は地下迷宮でより詳細に確かめたいが、まずこの理解で問題無いと思う。


 スキルが生える法則を見つけてから、スキルへの理解度が高まってる気がする。これが正しいという根拠は無いが、それで間違い無いのだと、スキルが教えてくれる感じだった。


 スキルに大きな進展があって、地下迷宮への不安は驚くほど小さくなっていた。安全マージンさえ取っていれば、きっと上手く潜れるだろうと思えてきた。


 これは余裕が生まれたのか、それとも油断なのか。気を引き締めようと、『気』のスキルを意識して発動した。……やっぱり使えてる気がしないが、文字数が少ないスキルはこれからゆっくりと育てよう。



「菅田?あんた帰ってきてたんだ。……なんでここに?まさか探索者になるつもりじゃないよな?」


 それは望まない再会だった。ギルドの周りを囲むように建てられた大型ショッピングモール。その中の探索者の装備が売られている店で、『5万円ポッキリ!新人応援セット』のサンプルを眺めていた時に、あいつはそう声を掛けてきた。


 津賀つが 一花いちか

 小中と同じ学校で、高校が別れてからは会うことも無くなったが、あまり良くない噂を耳にしていた。ヤンキーになったとか、夜に出歩く事が増えたとか、あとは売春だとか。そんな噂は尾鰭も付いているだろうが、俺が再会を望まなかったのはそんな理由ではなかった。


「まともに運動が出来ないくらい身体が弱いのに、探索者?自殺願望でもあるの?」


 小学校低学年の時、道場の体験教室で言われた言葉が蘇ってくる。


『ズルすんな』

『やる気無いなら帰れよ』


 他にも色々と言われた、幼いが故に手加減の無い言葉。それからは道場に通うのが億劫になり、元々続けられるとも思っていなかった俺は、体験期間と同時に道場へは行かなくなった。

 学校や町中で出会す度に、彼女と顔を合わせるのが嫌になった。それからなんとなくお互いに避けて過ごしていたけど、それでも会うたびに苦手意識が強くなっていた。


 津賀一花。襟ぐりの広いTシャツを着た彼女の首元には、探索者の資格所持を表すシルバータグが鈍く光っていた。



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

菅田スダ 知春チハル


◆シンタイキヨウカ

・新躰強化 Lv.3

・身体器用 Lv.1

・息 Lv.0

・気 Lv.0


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

津賀ツガ 一花イチカ


◆ラビットラピッド Lv.15

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る