特売と言う名の戦場
特売……それはまさに戦場……いや、激戦地と言っても過言ではなかった。
そこは多くの女性たちがまるで血で血を洗う無差別級デスマッチ。
めぼしい商品を力尽くで奪い合い、人の波の中へと体をねじ込み、押し退け、そして少しでも前へ前へと目指す。
さらに後ろからも続々と商品を求め多くの女性たちが参戦していく……。
レオナはあんな所に入っていったけど大丈夫なんだろうか……?
しかし、今の僕ではレオナの役に立つどころか足手まといに……いや、邪魔にしかならない。
僕はただその状況を戦々恐々と見る他無かった……。
ーレオナー
ハルトにリィナを任せた私は特売に群がる人の壁を見る。
「相変わらず特売はすごいな……。しかし……!」
私は心を静かに落ち着かせて研ぎ済ませる……。
それはまるで一点の曇りも波紋もない水鏡のように……。
そして私は学生時代に会得した明鏡止水の境地へと辿り着く……。
「見えた……!」
私はわずかに見えた壁の隙間に体をねじ込ませると、流れに逆らうことなく、しかし確実に前へと進んでいく。
それはまさに清らかな水の流れのように私は確実に前へと目指す。
そして……。
「こいつは……私がいただくっ!」
特売品の豚肉と牛肉を確保する!
さらに別の特売品、卵が目に付いた!
しかし、別の人の手が卵へと伸びる……しかし……!
「あまい……!」
私はその手が卵へと届く前にまるで疾風のような速さで卵をかすめ取る!
さらに私の快進撃はとどまることなくめぼしいものを確実に確保していく!
「この魚の切り身も私がもらう!それとこっちの牛乳もだっ!あとはリィナのベビー用お菓子!これもいただくぞ!」
目的のものを全て確保し、私は会計を済ませると人混みを後にする。
これぞ剣術の最終奥義、明鏡止水也!
ふふ……、これで後でハルトに頭を撫でてもらえるかな?
私はハルトに褒められながら頭をナデナデしてもらえる未来に顔をほころばせていた。
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