第8話 4日目(夜間)

 そして実際に嵐が来た訳なんだが。


「どうしてこう、狙ったように飛んでくるのか。主に危険生物が」


 お陰で、それなりに時間をかけて作る板が作る端から修理に消えていく。いやまぁ小屋の壁が壊れたままだと、最悪そこから全体が壊れるし、危険生物は基本的に海のものとはいえ、仕留めないと危ないんだが。

 それに危険生物と言っても、物理的な方だ。毒物的とか魔法的に危険なやつじゃない。つまり、適切に解体すれば食料になる。亀とか鮫とか槍っぽい魚に時々食虫植物ならぬ食魚海草が塊で小屋の壁を突き破って来るんだが、〆て解体してしまえばただの食材だし。

 たまに出入口前のスペースに飛んできて、積み上げてある流木に突っ込んで勝手に串刺しになっているのはちょっと笑った。解体が大変になるから笑い事じゃないんだが。


「しかし一気に食料が増えたな。まぁ干し肉が作れる魔道具は見つけておいたし、浄水器から大量に塩は手に入るんだが」


 ちなみにその魔道具は急いで修理して、塊肉を大量の塩と一緒に放り込んでいる。材料を入れるだけでいいんだから楽だな。本当に。今の状況で燻製器を作って運用している暇はない。

 一応修理は間に合っているという判定になるのか、小屋が壊れる兆候は今のところ無い。だがこれは、ログアウトしている間に小屋が全壊、って可能性までありそうだ。たぶんこの調子で危険生物が飛んでくるのは止まらないだろうし。

 そしてこれだけ危険生物が飛んでくるって事は、やっぱりハプニングの発生率が跳ね上がってるな。すなわち、嵐は少なくとも丸1日続くって事だし、その間中危険生物が飛んできて壁を突き破り続けるって事だ。そしてここは仮想現実なので、飛んでくる危険生物が尽きるって事は恐らくない。


「とりあえず手軽に出来るのは、壁を槍衾にしてしまう事だけど、それだと嵐が明けた後、そこにかかった大量の肉の塊状態の何かを処理しないといけない事に……」


 うん。却下だな。なんか変なの寄ってきそうだし、その塊状態でアンデッドにでもなったら最悪だ。何しろファンタジープリセットなんだから。仮想現実だからある程度略されているとは言え、ミンチより酷い状態になってる、ってことぐらいは分かるようになってるし。

 そうなると次に出来そうなのは、柵で小屋を囲んでしまう事だ。柵というか、網だな。もっと言うなら金網フェンスの木造版だ。これならそこまで酷い事にはならない、と、思いたい。飛んで来る数次第だろうけど。

 ただそれの場合、大きいやつに合わせると小さいのがすり抜けて小屋が壊れるし、小さいやつに合わせると大きいのがぶつかった時に壊れる可能性がある。柵を設置する為には外に出なきゃいけないっていうのもかなりの問題点だな。


「大きさの問題は、「網目」の大きさを変えて何重にも設置すれば、一応解決できなくはないけど……設置に、時間と素材が必要だからなぁ」


 嵐の夜中とか、少なくともこの「世界」では何も見えない。危険生物が飛んでくる嵐の中に、灯りも防御手段も無く出ていくのは自殺行為だ。文字通りの意味で。そもそも、それだけの柵を作っている暇がない。解体と板作りで。

 ……潤沢な魔力があれば、という前提だが、ファンタジープリセットなんだし、小屋全体を結界で覆ってしまうか? 条件をしっかり設定すれば、飛んできた生物を雷撃で仕留めて指定の場所に浮遊で移動させる、ぐらいは可能だ。板を大量に作っているから、少しは隙間も空いてきた。

 結界を発生させる魔道具は見つけていたし拾っていたし、何なら防衛の切り札として修理も終わっている。今思い浮かべた条件の設定も可能だ。問題は、それだけの出力の結界を維持する魔力だな。危険生物が飛んでくる頻度によって消費量は変わるし、多分今のペースだと、疑似魔石1つで1時間持つかどうかってところだろう。


「作っててよかった、魔力容量拡張パーツ」


 魔道具本来の設置できる魔石の数は、1つだけだ。しかし皮をはいだ世界樹の枝を使って、外付けバッテリー魔力版装備は作ってある。緊急避難用の、推力を作る魔道具につけてたやつだ。ジャンプしてこれを使うと、一気に移動できるから。なお着地は自力となる。

 また飛んできた危険生物を〆て、壊れた壁に板を打ち付けて塞ぎ、結界の魔道具に外付けバッテリー魔力版装備を接続する。正直質は低いとしか言えないものだったが、一応動いてくれるようだ。

 さくさくと範囲や強度、条件を設定して、不備が無い事とちゃんと動いている事を確認して、スイッチを入れて起動させる。


「おー、揺れが無くなって雨と風の音が遠くなった」


 まぁそれはそうだな。危険生物への対策として張った結界だが、普通に雨と風と、ついでに雷も防いでくれる。展開する事で内部の安全を確保する、それがファンタジー「世界」における結界あるいはバリアってやつだからな。

 さて、実際に疑似魔石1つでどれだけの時間持つのかどうかを確認しながら、出入口の前のスペースを空けるのも兼ねて、ひたすら流木で板を作っていこう。もちろん、結界によって仕留められた危険生物の解体も進めなくちゃいけないけど。

 ……結界を張ったんだから、地面に穴を掘って、そこに網を設置しておいて、獲物がたくさん入るようにしておいた方がいいかもしれない。何しろ、ログアウトしてる間も危険生物は関係なく飛んでくるだろうし。まぁそこまで出来る道具も時間も無いから出来ないんだが。

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