三十話 バトルとは、レディ状態のクリーチャーでのみ行えるとは限らない
ゴブリンプラント。
初心者及び中級者向けのテーマデッキだ。
その能力は多彩。
全体的に安価なコストで召喚可能、コストを増やす<受粉ゴブリン>に、場に出た時という縛りがあるもののセットされたライフカードを破壊する<放火範ゴブリン>に、植物そのものな増殖を行う多種多様なサポートカード。
一説にはこれゴブリンとかいう生物じゃなくて植物じゃなくて菌糸類とかキノコでは? ともいわれる奴ら。
何もしないで放置していたら相手の場にわらわらと並んだゴブリンでタコ殴りにされることも珍しくない。
沢山色々な事が出来るデッキだ。
だがそれでも何故中級者止まりかというと――まずステータスが低い。
ゴブリンはいくつもの種類がいるが、高くてもパワーが3まで。
中盤に現れるだろうパワーが5や6の大型クリーチャーには立ち向かえず、精々数を合わせてブロックして相打ちになるぐらい。
それでも強いファイターなら浸透戦術よろしくブロックしきれない数で攻撃を並べていき、ライフを削りきればいい。
いやむしろそれしか出来ないといってもいいだろう。
次に問題なのがサポートカードの消費の激しさだ。
ゴブリンプラントとシナジーのある魔法カードは幾つもある。
しかしそれも瞬間的な火力だ。
ゴブリンという弱さを補う一瞬だけの閃光、火力に過ぎない。
数は力というがきちんとそれが並び立つ前に対処していけば蹴散らされる。
そして最後の問題だ。
これはゴブリンプラントの明確な解決しきれない問題であるといってもいい。
ゴブリンプラントは大体何でもできる。
出来るがゆえに――なにをしたいのか決まってないから弱い。
コストを増やせる、素晴らしい。
土地を破壊できる、素晴らしい。
数を増やせる、とても素敵だ。
で、それでどういう風に戦っていくんだ?
そのプランを決めていないファイターはゴブリンプラントで戦い抜けないといってもいい。
ぼくたちがエレウシスの、県予選大会で戦ったゴブリンプラントのチームはそういう意味では強かった。
リナが戦ったゴブリンプラント使いはひたすらコストを増やし、数の暴力で襲いかかってきた。
無数に削られながらも、なんとかギリギリで焼き切ってリナは勝利した。
ぼくが戦ったゴブリンプラント使いは土地を破壊し、開拓するものたちを使いまわしてこちらを兵糧攻めにしてきた。
ぼくはギリギリのコストと土地を呼び出すクリーチャーで息を繋ぎ、槍をねじ込んで倒した。
ドロシーが戦ったゴブリンプラント使いは忌み王……その王を支えるための生贄にするようなデッキ使いで、あの子に叩き潰された。
それは考えに考え抜かれたゴブリンプラント使いたちのチームだった。
だからぼくたちにとって彼ら以上のゴブリンプラント使いは想定していない。
もはや乗り越えた壁だからだ。
そして、エレウシス本戦の、全国の強豪たちのレベルを知ってゴブリンプラントの限界を把握した。
あのデッキは、大体なんでも出来る。
大体なんでも出来るから弱くなりやすい。
彼らのように偏った考え抜かれた構築でもない限り――デッキは、手札は、中途半端なものしか寄越さない。
尖った構築であればなおさらだ。
もはやぼくたちが乗り越えた構築、ファイティングプランのデッキとの戦いでしかない。
だから落ち着いて戦えば勝てる。
そう考えて。
「ブレイバー?」
想定していなかったカードに、困惑した。
たまにある数枚挿しではないはずだ。
ある意味ゴブリンプラントと似てるテーマではあるが、その効果範囲はブレイバーに限られている。
――まさかリナと同じ
しかし、あれとゴブリンプラントどちらにも適性があるというのは珍しいが、両立する強さではない。
ならなんで……とだけ考えて、ぼくはそれに気づいた。
あの秘宝。
確か<名義貸し>の効果は――
「……!」
思わず声を上げかけて、今のぼくはジャッジだということを思い出して口を閉じる。
まずい、リナ。気づけ!
そのカードはやばい!!
下手すると――蹂躙されるぞ!
◆
「通りますか?」
うちは困惑した。
ブレイバーって……まさかうちと同じ二重血統か?
「ええで、どうぞ」
でもゴブプラとブレイバーって、シナジーあらへんやろ。
別々のデッキを使うほうがマシのはず。
「では、<ブレイバー・影刃>が召喚に成功したので、分身トークンが1体でます。これは1/1、クリーチャータイプ・ブレイバーのトークンです」
そういってでてきたのは1/1のトークンと、その本体の
ふむ、トークンを出すクリーチャーか。
これぐらいなら大したことはないな。
「ターンエンドです」
出した秘宝を動かさなかった……?
「うちのターン。アップキープ、レディ、ドローでメイン・ライフを1枚ずつ引くで」
まあ受粉ゴブリンを潰したから動けないだけかもしれんな。
「土地をセットして、バトル! <始まりの竜 レイド>で影刃を攻撃! これはブロックさせるクリーチャーを自分で選択する決闘能力を持つで!」
「対応ありません、ブロックします」
分身トークンの影に隠れていたブレイバーに、のろのろと目を開けたレイドが視線を向ける。
それに合わせて、うちは手札のカードを出した。
「そのブロック宣言に1コスト支払い【進化】! <始まりの竜 レイド>に入れ替わり、<目覚めの竜 レイドレックス>が躍り出るで!」
戦闘を行う寸前だったレイドが光を放ち、一回り大きく開眼したレイドレックスが現れる。
それはパワー3/3のクリーチャー。
《本来なら3コストじゃないと召喚出来ない中型クリーチャー》。
「これはステイ状態でかつ攻撃クリーチャーとして扱われる! このまま影刃と戦闘!」
「破壊されます」
勢いよく飛び出したレイドレックスが影刃を撥ね飛ばす。
「レイドレックスが勝利したことにより、その上に1/1カウンターが追加される! これでパワーは4/4や!」
「そして、レイドは手札に戻っている」
「せやで。バトルフェイズ終了、メイン2で再び<始まりの竜 レイド>を召喚!」
可能な限り、戦闘をしなければいけない制限もメイン2で呼び出せば無視が出来る。
これがレイド……”グロウアップドラゴン”の動きや。
任意のクリーチャーを指定して戦う決闘能力を軸に戦闘を仕掛けられるドラゴン。
そして、その戦闘中に設定分のコストを軽減して【進化】する。
進化前のドラゴンも入れ替わりに手札に戻ることによって二枚で完結し、さらに戦闘に勝利をすれば様々な効果を発揮する。
最終的に究極のドラゴンへと成長する。
同じビートダウンのデッキに対してはぶっ刺さるテーマであり、そのパワーはゴブリン単体じゃあ倒せない。
「ターンエンド!」
茂札の場に残るは1/1の分身トークン1体。
ライフを考えれば1/1のを削っておくべきやったんやろうが、あっちには能力があった。
1点ぐらいならブロックしないで受けて、土地を増やすほうがいい。
そう考えて。
「僕のターン。レディ・アップキープ・ドローフェイズ、土地をセット」
淡々と顔色一つ変えずに茂札がカードを引いて。
「<ブレイバー・影刃>を召喚します」
再び召喚されるのは二度目の影刃。
「またかいな」
「通りますか?」
「ええで」
こっちにはバーンを出す土地も残っていない。
レイドたちで薙ぎ払うためにサラマン系を出せなかった。
まあこの布陣なら次もレイドとレイドレックスで更地に出来るしな。
「では、召喚に成功したため、分身トークンが場に出ます」
「またやな」
これで0/1と、1/1が2体並ぶ。
分身だけで殴ってくれへんかな、まあさすがにそんな素人みたいなことはしないやろうが。
「<名義貸し>を起動。<ブレイバー・影刃>のクリーチャー・タイプを、僕のコントロール・クリーチャーに追加します」
「ん???」
まって。
今なんかおかしいこと言わんかった?
「続いて、手札から<受粉ゴブリン>を召喚。通りますか?」
え、また受粉ゴブリン?
2枚ずつ被ってたんか? まあ三積みはしてると思うけど。
「え、いや、ええけど」
「では、召喚に成功。分身トークンが1体でます」
……いやなんて?
そうやって出てきたのはさっき焼いた受粉ゴブリンの2体目と……追加された分身トークン3体目。
合計5体のクリーチャーが並ぶ光景だった。
「まてや!!」
「どうぞ」
「ジャッージ!? おかしいやろ、なんでゴブリンの召喚でトークンが出てるんや!?」
「<名義貸し>の効果ですよ」
ありがたいけど、ちょっとまっててくれや!
というわけでジャッジのジグを呼ぶ。
「ジグ! これどうなってるんや、ボードがバグってるわけやないよな?!」
「……いやちゃんと正規の動きをしているよ。バグっていない」
どういうことや??
「<名義貸し>の効果だ。今、茂札くんがコントロールするクリーチャーには【ブレイバー】が追加されている。だから影刃の効果が、受粉ゴブリンに誘発して発動している」
種族の追加って。
……え。
「まさか」
「ブレイバーシリーズの効果が、彼のゴブリンにも適応されるということだ。場の全てにね。このターン終了までだが……ここまでがジャッジとしての説明出来る範囲だ」
マジか。
マジかぁ。
「……理解した。待たせてごめんな」
「いえ、大丈夫です。これでターンエンドです」
「攻撃してこんの?」
「しません」
「そっかぁ」
敵の盤面に、5体のクリーチャーが並んでる。
動けるのは召喚酔いをしていない分身トークンが1体だけ、殴ってもええのに動かない。
なんやろう。
なんやろうか。
果てしなく。
果てしなく、嫌な予感がしてきたで……
「楽しみましょう、先輩」
「うん?」
「このデッキはちょっとそちらの”進化サラマン”とは相性よくないんですが」
進化サラマン?
うちの
「竜を狩るのは
ニッコリと。
本当に楽しそうに微笑んだ。
――背筋に恐怖が走ったわ。
「一晩でやってくれ」
泣きながら手を動かすしか生き残る術はない。
――名も知られぬ複製屋(名義貸しより)
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