第8章:王都への招致と王女の思惑
アルストロメリア領での一件は、バルトロ辺境伯の失脚という形で幕を閉じた。その決定的な証拠をもたらした俺の名は、ついに王国の中心、王都にまで鳴り響くことになったらしい。
ある日、俺たちのもとに、今度は王家の紋章が入った使者が訪れた。
「冒険者ユウキ殿に、国王陛下より召喚の勅命である。王都までご足労願いたい」
国王陛下からの呼び出し。いよいよ、話が大きくなってきた。断ることもできるらしいが、セレーナさんから「王家との繋がりを持っておくことは、今後のあなたにとって有益です」と真顔で勧められ、俺は王都へ向かうことにした。リリアとガレスも当然のようについてくる。
王都はエルトリアとは比べ物にならないほど巨大で、壮麗な街だった。聳え立つ白亜の城を見て、俺は「すごいなー、テーマパークみたいだ」と素直に感動していた。
城の謁見の間は、目が眩むほど豪華絢爛だった。きらびやかなシャンデリア、赤い絨毯。そして、玉座に座る国王陛下。その隣には、燃えるような赤い髪と、強い意志を秘めた瞳を持つ、美しい王女様が立っていた。
「面を上げよ、冒険者ユウキ」
国王陛下の威厳ある声に、俺は顔を上げた。
今回の功績に対する褒賞として、莫大な金貨と、貴族の位(男爵)を授けると言われた。金貨はありがたく頂戴したが、貴族なんて面倒なだけなので、丁重にお断りした。俺のその態度が、逆に「欲のない高潔な人物」と評価されたらしい。どこまでいっても勘違いは続く。
謁見の後、俺は王女アイリス様に個人的に呼び出された。彼女は俺を庭園に連れ出すと、探るような目で俺をじっと見つめてきた。
「ユウキ、と申したか。そなたの噂は聞いている。ダンジョンを単身で踏破し、貴族の陰謀を一人で暴いたとな」
「いえ、全部たまたまです」
「謙遜はよい。私は、そなたのその力が欲しい」
アイリス王女は、はっきりと言った。
「この国は今、多くの問題を抱えている。隣国との緊張、活発化する魔物の動き、そして国内の腐敗した貴族たち……。私は、この国を立て直したいのだ。そのために、そなたの規格外の力が必要だ」
彼女の瞳は、野心と愛国心で燃えていた。この人は、国を動かす側の人間なんだな、と俺は思った。
「力を利用したい、ということですか?」
「そうだ。無論、相応の報酬は約束しよう。金か?地位か?女か?望むものは何でも与える」
いかにも王族らしい、尊大な申し出だった。普通なら怒る場面なのかもしれないが、俺はなんだか面白くなってしまった。
「うーん、特に欲しいものはないんですよね。でも、困っている人がいるなら助けたいとは思いますよ」
俺が素でそう答えると、アイリス王女は一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。彼女はこれまで、欲望を隠さない人間ばかりを見てきたのだろう。俺のような、欲のない人間は初めてだったのかもしれない。
「……面白い男だ。ますます興味が湧いたわ」
彼女は不敵に微笑むと、こう言った。
「ならば、そなたが本物かどうか、試させてもらうとしよう」
後日、俺は王都の貴族たちが仕組んだ、様々な「試練」に巻き込まれることになる。彼らは王女に取り入った成り上がりの冒険者である俺を快く思わず、排除しようと企んでいたのだ。
しかし、アイリス王女の思惑は少し違っていた。彼女は、俺が本当に国を救うに値する力と器を持っているのか、その底を見極めようとしていた。
そして、この出会いが、彼女自身の心を大きく揺さぶることになるとは、まだ誰も知らなかった。リリアが、王女様に対してあからさまにライバル意識を燃やし始めたことには、さすがの俺も少しだけ気づいていたが。
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