第13話

***


 祖母が通信機で連絡をすると、なんとリアムは今日中にこちらへ来ると言ったそうだ。ちょうど彼はこの辺りの街まで来ていたところだったらしい。


 リアムには会いたかったけれど、あまりに突然過ぎて少し困惑してしまう。


 何せ六年も会っていないのだ。お互い当時とは随分変わっているだろう。



 成長したリアムと自分のことを考えたら、浮かれていた心が少し冷えた。私は王子殿下に婚約破棄されるような人間。


 殿下には不満ばかりだったけれど、彼の言っていた可愛げがないとか、つまらないとか言う言葉は間違ってはいない気がした。


 そっと鏡に視線を向けると、赤い髪にきつそうな目をした女が目に入る。ノーラに比べて私にはどうにも少女らしい可愛らしさがない。


 リアムと久しぶりに会って、子供の頃の思い出が崩れなければいいなと思った。



 しばらくすると、門の方から騒がしい音が聞こえてきた。


 祖母は「もうついたのかしら」と目を輝かせる。


 それから、祖父母と私と三人揃って玄関ホールへ向かった。


 使用人たちの向こうに、よく目立つ金色の髪の青年が立っているのが見える。



 彼は視線を彷徨わせ、私と目が合うとぱっとその目を見開いた。


 それから嬉しそうな声で言った。


「スカーレット!? スカーレットだよね!? ああ、やっと会えた!!」


 彼は流れるような仕草でこちらへ近づくと、動揺する私に構わず思いきり抱き締めた。


 突然のことに息が止まりそうになる。


 背の高いリアムに抱きしめられているせいで辺りが良く見えなかったけれど、祖父母や使用人たちが驚いているのが空気で分かった。



「ちょ、ちょっとリアム! 離してちょうだい!」


「スカーレット、すごく綺麗になったね! びっくりしたよ。ああ、でも美しい赤い髪も神秘的な紫の目もあの頃のままだ」


 リアムは驚いている周りのことなんて気にも留めない様子で、私を抱きしめたまま顔を眺めてくる。


 私の方は気が気ではなかった。


 昔は可愛らしくもどこか弱々しかったリアムが、恐ろしいほど美しく成長して目の前に立っているのだ。


 あの頃と変わらない輝くような金色の髪に、燃えるような赤い目。まるで彫刻のように整った目鼻立ち。


 至近距離で見つめられるだけで倒れそうになる。



「リアム君、スカーレットも困っているだろう。こんな玄関先にいないで向こうでお茶でもどうだね」


 後ろから助け船を出すように祖父が声をかけてきた。その表情は若干引きつっているようにも見える。


「そうよ、リアム君。さあ中へ入って」


 祖父の言葉を受けて、祖母もにこやかに促した。祖父とは違い、祖母はなんだか嬉しそうだ。


「それではお言葉に甘えて」


 リアムは二人に向かってそう言うと、ようやく私を解放してくれた。私はほっと息を吐く。


 安堵した途端当然のように肩を抱かれ、再びどぎまぎすることになったのだけれど。

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