第38話「禁忌の姿」
農道に出て、私はビキニ姿のまま走ります。街に差し掛かり上下を着用して周囲の様子を見ながらギルドへ急ぎました。まだ街はいつもと変わらない顔をしています。
受付では何組かのパーティーが報告中で、以前のような喧騒はおさまっているようです。ちょうどいつもの受付さんの手が空きました。
「あっ、リューさん本日はどのようなご用件ですか?」
「開拓地の西の森で魔人を目撃したのよ」
「本当ですか!?」
「ええ。紙と鉛筆を貸してもらえるかしら?」
言葉を尽くして語るよりも、絵は何倍もの効果を発揮いたします。
「はっ、はい。すぐに――」
画材を目の前にし、私はあの醜悪な姿を思い浮かべました。
まず一枚目は魔人の全体像です。腕は人より長く、前かがみで今にも飛びかかってきそうな恐ろしさを表現します。体の特徴も詳細に描き込み、使うスキルも箇条書きしました。
「凄いです。とてもお上手ですね」
「ありがとう」
もう一枚の紙には人相を描きます。現在は魔人化の途中で変化すると注意書きをしました。
「これは掲示板に貼らせていただきます。注意喚起になりますから。ギルドマスターにも渡したいで、もう一枚お願いできますか?」
「ええ。貴族の別荘地にも持っていきたいから、紙を二枚もらえるかな?」
「別荘地――。もっ、もちろんです」
受付嬢さんは注意書きの書面を作り、私が最初に書いた二枚と共に早速掲示板に張り出しました。
気がついた冒険者たちが集まり始めます。
これで、後方で支援する冒険者、職員や治癒士まで自分たちが戦っている敵の姿を確認できます。これで士気も上がるでしょう。
私は合計で六枚の絵を描き、そのうち二枚をもらって次の目的地へと向かいました。
別荘地に着き、門番さんに貴族紋章を見せて用件を説明いたします。
「まさか。魔人が出ただって? あれは王都で包囲されているよ」
「本当です。警報はまだですが私がこの目で見ました」
「あんた確か家庭教師で来てた人だよな……」
「そうです」
それがいきなりやって来て、魔人を見たなんて普通は信じませんよねえ……。
私は収納からゴブリンの絵を出してその若い男性騎士に見せました。
「どうした?」
隊長さんがやって来ました。あの日にギルドに来ていた人です。
「家庭教師さんが来たのですが、魔人が出たと……」
「なにい? あなたは確かギルドに応援に来ていた治癒士じゃあ。この絵は?」
「魔人と戦ったすぐ後に、私が描きました」
「戦った? 家庭教師で治癒士で、冒険者の絵師?」
更にそこに
貧乏令嬢は、とにかく何でもやってお金を稼がなければいけないんです。
「リュー!」
ロヴィーサが駆けてきました。話が進みそうで助かります。
「ちょうどよかった。魔人の絵を持ってきたそうだから、家庭教師先の屋敷へ同行してくれ」
「魔人! 了解いたしました。隊長」
別荘地の道を二人で歩きます。ここは特に混乱などは見られないようですが。
「街はどうなのですか?」
「直接の影響はまだないわ。冒険者ギルドが何とか頑張っているけど」
「魔人と戦ったのですか。相手はどうでした?」
「倒せれば、と思ったんだけど無理だった。かなりの強敵よ。それに今も成長しているの」
「手強いですね。騎士団の皆も、どうやって対処しようかと話し合っていますが……」
魔人など見たこともない人がほとんどですから、いくら話し合ってもなかなか結論など出ないのでしょう。
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