第27話 出兵

 その日のうちに、ジャポニア帝国正規軍50万は、集結しつつトーゴクへと向かう。集結しつつなので、その動きはゆっくりとしたものだった。

 

 総大将は、ジャポニア帝国大将軍イゴーリ・タイラー。副将としてジャポニア帝国筆頭将軍フェルディナンド・タイラーだった。まさに、タイラー大公家によるジャポニア帝国の私物化のあかし


 そして、アレッサンドロは帝都に残り、トーゴク八タイラーに早馬を送る。トーゴクを攻め食料を奪うので、軍に加わるようにと。


 書状を受け取ったシリウス・ミーウラはジョバンニに早馬を送ると同時にトーゴク各地に早馬を送る。知らせを受け取ったロレンツォ・ミナモートは、トーゴクの軍勢の集結をはかった。


 期待のトーゴク八タイラーも、オーバ軍、チーチブ軍を除きトーゴク軍のに合流する。さらにオーバ軍は、トーゴク軍の一部と単独で戦い敗北。チーチブ軍は内部分裂。結局、トーゴク八タイラーで、帝国軍に加わる者はいなかった。それでも、トーゴク軍は総勢でもおよそ30万。どのくらいの軍勢が集結出来るのだろうか?





 俺は、皆を集める。臨月りんげつを迎えあまり動けなくなったセシリアの周囲に集まる。まあ、セシリアに心配かけるかなとも思ったけど。


 メンバーは、俺にセシリア、ジャンヌに、フェリペ君に、ミリアリアちゃん、そして、ドミニクさんだった。


「ドミニクさんの話だと、叔父様はトーゴクに攻め込むらしい。なんとしても止めたいんだけど。何か良い方法はある?」


「それは、トーゴクで反乱が起きるのか?」


 ジャンヌの故郷は、トーゴクにある。


「いえっ、あくまで私の分析ですが、帝国軍が食料を求めてトーゴクに攻め込むかと……」


「なっ!」


 皆、驚きの声をあげる。


「ジョバンニ様に頭を下げて、食料を分けてもらえば良いでは無いか」


 ジャンヌが、まさしく正論せいろんを言うが。


「それが出来ないんだろうね。俺も無償むしょうで送るつもりは無いしね」


 自分達の責任を痛感つうかんして欲しい。フェリペ君による帝都での反乱。ドミニクさんによる、トーゴクでの反乱は起きないだろう。


 だけど、自らトーゴクに攻め込む事でトーゴクでの反乱を誘発するかもしれない。それは、もしかしたら、ホッコクや帝都にも波及はきゅうするかもしれないのだ。


「そうですよね」


 フェリペ君は、考え込む。


「戦いは、起こしてはいけないですよね」


 セシリアが、お腹をでつつ俺を見る。


「ああ。そうだよね。戦いは駄目だよ。それで、申し訳ないんだけど、とりあえずタイラー大公領軍を率いてジャンヌには出兵して欲しい」


「戦うわけじゃないよな?」


「そうだね。あくまでも止める為にだけど」


「止める為か……。具体的にどうすれば良いんだ?」


「それなのですが、一つ思いついたのですが」


「ん、なに、ドミニクさん?」


「帝都は、がら空きです。攻め込むわけではないですが、帝都に近寄るだけで、帝国軍は撤退するのではないでしょうか?」


「なるほど」


「だけど、それだとこちらが悪者になっちゃわない?」


 フェリペ君の意見も最もだった。


「ですが、帝国軍を引かせる為にはそれしか……」


「う〜ん」


「まあ、帝国軍の出兵した後の帝都を守る為にやってきましたとか、ですかね」


 フェリペ君は首を傾げつつ、ミリアリアちゃんを見る。


「やってみないと分かりませんよ」


 ミリアリアちゃんの言葉で俺の考えは決まった。


「ジャンヌ、ドミニクさんの考えで行こう。ドミニクさんも、軍師として同行して」


「はい。ですが、良いのですか? 私を同行させて」


「うん、大丈夫だよ。信頼しているもん」


「はっ、かしこまりました」


「じゃあ、行ってくる。そうだ、守りとして1万置いておこう」


 ジャンヌは、振り返りつつこう言ってきた。


「えっ、でも全軍の方が……」


「いた方が何かと便利だと思うぞ」


「そうか、分かったよ。気をつけてね」


「ああ。セシリアを、いたわってやってくれ」


「分かったよ」


 こうして、ジャンヌが率いるタイラー大公領軍は出兵していった。



 うろうろうろ、うろうろうろ。うろうろうろ。


 シリウスさんから早馬が来て、戦いは現実のものとなろうとしていた。大丈夫かな〜?


「心配ですか?」


「いやっ、何でもないよ」


「ですが、私が落ち着かないのですが」


「ごめん、セシリア」


「う〜ん、ジョバンニ様も出兵されてはいかがですか?」


「いやっ、俺は邪魔になるだけだよ」


「ですが、帝都のそばに行けばそれだけ情報が早く入りますし」


「でも、ジャンヌにセシリアの事頼まれちゃったし」


「役にはたっておりませんが?」


「うっ」


 確かに。


「私、お母様のところで出産します。だから、御安心ください」


「えっ、お母様海外じゃ?」


「いいえ、ダイコクヤさんに頼んで、温泉地ベープに別荘建てて住んでおられますよ」


「そうなの?」


 知らなかった〜。帰ってきてたんだね。


「はい、ですから、御安心ください」


「セシリア……。母は強しだね。分かった、行ってくるよ」


「ええ、お気をつけて」


 セシリアは、振動の少ない儀典用ぎてんようの馬車でベープへと向かい。俺も。


「出陣する!」


 なんとかジャンヌに教えてもらい乗れるようになった馬に乗り出陣する。目指すは帝都だった。

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