リアルでは冴えないおっさん、VRゲーム知識で異世界戦場を無双します

語部こもごも

第1話 冴えないおっさん、ログアウトしたら戦場にいた

趣味はゲーム。

といっても、スマホゲーや流行りのバトロワじゃない。

俺が愛してやまないのは、中世ヨーロッパ風のVR戦争シミュレーション――《グランド・オブ・ヴァリアント》、通称「グラヴァリ」。


リアルでは冴えない三十代後半のおっさん。

独身、彼女ナシ。社内でも「影が薄い」と評判で、名前を覚えられないこともしばしば。

でも、夜の戦場にログインすれば話は別だった。

俺の名は《ロンド》。トップランカーとして、数万人規模の大規模戦闘を指揮した経験もある。

……ゲームの中だけは、俺は英雄だったんだ。


だが――その夜、すべてが変わった。


雷鳴が轟き、部屋が一瞬白く染まった。

その直後、真っ暗闇。VRゴーグルを外す暇もなく、意識がフェードアウトした。



「……こっちに来たぞ! 敵だ、備えろ!」


目を覚ました瞬間、鼓膜が破れそうなほどの怒号が飛び交っていた。

視界に映るのは、土煙と血まみれの戦場。

俺は、くすんだ鎧を着て、槍を握っていた。

そして気づく――これは“グラヴァリ”に似ている。だが、VRじゃない。これはリアルの戦争だ。


しかも……体が軽い。

腹も出てない、腰も痛くない、肌はすべすべ。

若返ってる? ていうか、俺、死んだのか?


……まあいい。考えるのは後だ。今は――


「右だ、丘を取られるぞ!」

俺は叫んだ。ゲームで何百回もやった戦場イベント。地形、部隊配置、敵の動き――すべてが“読める”。

敵騎兵隊の突撃ルートを読み切って、味方の槍兵を配置。

迂回してくる軽装歩兵には、投石部隊を誘導して先制を仕掛ける。


結果――


「ひ、ひとりで敵の騎兵止めやがった……!」

「おいあいつ、動きがプロだぞ……なんなんだ、あの新兵!」


味方が呆れたように言う。

俺は槍をくるりと回して、血の滴る穂先を見下ろした。


「……こんなの、100回以上練習したルートだ。負ける気がしねぇよ」


そう。これは、俺が無数の夜を費やした戦場だ。

冴えないおっさんでも、命を懸ける覚悟があるなら、最強になれる。


そしてこの世界で――

俺の第二の人生が、血と鉄の匂いと共に、始まった。

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