あとがき
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。改めまして恋愛の帝王ならぬ、失恋の帝王・川中島ケイです。
近況ノート(活動報告)ではチラッと書いておりましたが、この話は20年前、私が22歳の時に体験した恋愛を元にして書いた作品です。(いきなり歳バレw)
あれは6月初めの頃だったかな。自転車で普段は通らない道を通ってみたら、かつて彼女と話していた個人商店と自動販売機の前を通りがかりまして。色んな事を思い出してこの切ない体験を形にしたいと思い、書き始めたのがきっかけです。
22歳とハタチの恋愛ではありますが、当時の私は恋愛に没頭した経験があまりにも少なく、彼女(陽菜のモデルとなった子)に関してはほぼ恋愛未経験。かといってアオハル的な『高校生みたいな恋愛』かと言われれば彼女にはトラウマになるような出来事があったり、私は現実的に結婚というものもぼんやりとは(少なくとも社会人未経験の高校生ぐらいの頃よりは)考えられる年代だったり……
そんな2人の織り成すやりとりが、皆さまの目にどう映ったのかがとても気になります。読み終えての感想などを頂戴できれば大変嬉しく思います。
思えばこの作品を書いている間、良かった時期を思い出しては泣き、辛かった出来事や場面を思い出しては泣き、思えばほぼ毎日泣いていたような気がします。でもそうして流した涙が過去を美しい結晶に換え、言葉になっていった……ように、作者の中では思っています。自分の中で純粋な部分を削りだして形にしたもの。そういう意味で今までの作品以上に、大切な作品です。
とはいえ、作品としてドラマを生み出すために脚色した部分も多少はあります。思い返してみれば当時、実在の彼女はこんなに私に心を開いてくれていたのかどうか? 当時の私が小説の中ほど波風を立てないように振る舞えていたかどうか? 実際はすれ違いやケンカも多く、酷い言葉も言われたり言ったりした事が思い出補正でさっぱり抜け落ちて、キレイなやりとりに変換されているんじゃないかなとも書き終わってから感じています。
2つだけ確かな事は、彼女がクリームパンを私のために焼いてくれたのを食べた時、本当にこの子と結婚したい、と心から思った事。それから最終話で描かれる『10年越しの再会』は完全な創作である事だけです。
本気で彼女と結婚したいと思っていました。彼女と一緒に居られたとしたらどんな今だったかな? と考えた事だって何度もありました。今でも時々、考える時があります。自分で言っててキモいよなぁこんなヤツと思いつつも(苦笑)
でも結局あの夏から20年間、彼女と再会する機会はないままで居ます。
もしかしたらどこか違う街の空の下で暮らしているのかもしれない。もしかしたら同じ街で今も生活しているのに、出会えるタイミングがやって来ないままなのかもしれない。実はスーパーや街中ですれ違っているけれど、もう時間を経てあの頃とは変わりすぎてしまったお互いに気付けないだけかもしれない……本当のところは何も、わからないけれど。
それでも、もし再会できたなら、もう一度やり直せるなら。そんな希望を小説の中にだけ僅かに残した最後の1ページが最終話で、事実に基づくなら『ラストシーン。』のページで私たちの物語は終わっています。
でもだからといって私は、現実の方も全ての希望を手放したわけではありません。人生は終わってみるまで何が起こるか分からない、私はそのように思っています。
それを実証するように亡くなったウチの伯父は多分50代に差し掛かってから、奥様を亡くされて落ち込んでいた時期に初恋の同級生と再会して結婚。亡くなるまで添い遂げました。仕事でお客様だった方は68歳(曖昧な記憶では)にして「再婚して市外へ引っ越す事になりまして、お世話になりました」と幸せそうな笑顔で街を去っていかれました。
私にもそういった事がこれから待っているかもしれないし、無いかもしれない。なにも無かったとしてもこんなにも人を愛した記憶を持って人生を終えられるのなら、悪くはないかな。
物語の終わりを「グッドエンド」「バッドエンド」のどちらかに分ける考え方もありますが「最良の結果には終わらなかったけれど、まだ希望の目は残された終わり方」という『still end=スティルエンド』もあっては良いのではないかと私は思います。
そう考えれば私たちの生きている人生は全て未完の物語か、スティルエンドの物語から未来の世界線っていう事になる。そう思えば生きているこの先には希望がまだ残されていると信じられる。少なくとも私は、そう思いながら生きてこうして物語を紡いでいます。
あとがきが長くなってしまいましたが、ご覧になってくれた皆様にとってこの作品が、少しでも「読んでよかった」と思っていただけるものになっている事を願って〆させていただきます。
おまけとして主要登場人物の設定資料(使われなかった部分含む&物語後の動向)とトラックリスト(制作しながら聴いていた音楽集)も追記しますが……そんな所まで読んでくれる猛者はいるのだろうか><
ではまた次回作でお会いしましょう!
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