第47話

第十二章「3分」


異界四天王の一体・百式観音。


奴の核は、無限に膨張を続ける。


その核は、このまま野放しにしておくと、すぐさま限界まで膨張し、爆発するだろう。


そして、その膨張の限界時間、すなわち核が爆発するであろう時間は……


恐らく、あと、3分後だ。


特に、根拠があるわけではない。


でも、僕の英雄としての勘が、僕の耳元で、そう囁きかけるのだ。


そして、その3分は、目の前に生み出された百体の怪物をすべて突破し、僕の見えざる剣を、奴の核にぶち込む為に必要最低限の時間だ。


だから、このままでは、聖剣エクスカリバーの詠唱はできない。


そして、その間にも、奴の核は膨張し続ける。


どうやって、それを突破すれば良いというのだ。


僕は、必死に剣を振るいながら、敵の圧倒的な質と量に対する対策を考えていた。



その時だった。


「露助君。どこへ行くの?」


僕の前に、桜さんが現れたのは。


「桜さ………」



僕がそう言おうとする。


しかし、その見覚えのある存在の正体は、エリアナさんだった。


「何ボケっとしてるの!! 早く行くよ!!」


エリアナさんはそう言うと、聖剣と共に、また戦場へと駆け抜けていく僕へ旋律によるバフをかけてくれた。


彼女のその歌声は、かつて、アカペラ部だった桜さんの面影を感じる。


でも、彼女は桜さんではない。



僕はそう考えると、肩がすくむようだった。


でも、今は、それで良い。


桜さんは、この核を斬ってから、救えばいい。


まずは、目の前のことを、精一杯やる。


自分にできることをやれ…!



運命に負けるな!!



限界を超えろ!!


「全てを穿て!!"天我独尊"!!!」「闇夜を照らせ…! "黒渦・舞"!!」


ラングルドさんと、陽月さん。


二人の白と黒の剣によって、僕の道は開かれる。


「今だ!!」「行けえ!! 露助!!!」


天を穿つ程の、2人の叫び声。




僕は、2人が切り開いてくれたその道を、決して、無駄にはしない。



僕は、力強く地を蹴り、コアの眼前まで、接近する。





そして、その勢いのままに、聖剣の威力を最大化するために、詠唱する。


「天界・神園・由良由良…!!」


「天へと届け!! 我が聖剣!!!」


そして、叫ぶ。


僕の、僕だけの、聖剣の真名を。


「エクス・カリバー!!!!!」


その天にも届く咆哮は、圧倒的出力を持つ聖剣の一撃へと、変換された。


その見えざる一撃は、あまりにも早く、あまりにも強かった。


その全長千メートルを超える核を、爆発する前に、一刀両断したうえで、破壊しきるほどに。


感触は、あった。


だから、先ほどの破壊しきったという予測は、間違っていないだろう。



……終わった。勝った。


僕は、そう思い、地に寝転がる。


しかし。


にわかには、信じられないことが起こった。


僕は、その光景に、目を疑う。


そして、確信する。


最悪の結末を。


ーーまだ戦いは、終わってなどいなかったのだ。


「嘘……だろ?」


その僕の視線の先に、あったのは。


地に寝転がっている僕の首をはねようとして、剣を振り上げている、父と母の姿であった。

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