第14話 魔族
ウィル「ま......ぞく?」
コーネル「はい。数日前、奴は突然この村に現れました__」
***
?「どうも、こんばんは。今宵は......随分と良い月が出ていますね」
ヤギのような頭に、闇夜に溶けるようなボロボロの黒いローブ。
持っている杖は先端が尖り、いくつもの金色の輪がついている。
明らかな異形____
その姿に、村人たちは戦慄した。
「い、いやぁぁぁぁ!!」
「まぞくだぁぁぁ!!」
?「ああ! 皆さん。落ち着いてください」
「少し、お話をしに来ただけなんですよ。ここの代表者の方は.....どちらにいらっしゃいますか?」
コーネル「代表者は私だ!」
コーネルが村人たちをかき分け、前へと出る。
?「ほおぅ、あなたが......どうも、初めまして。ワタシの名前はゾーイ」
「以後、お見知りおきを」
コーネル「い、いったい、この村になんの用だ!?」
ゾーイ「おや? ワタシは名乗ったはずですが......アナタは、随分と失礼な方のようだ」
そういうと、ゾーイは左手を前方へと伸ばした。
すると___
コーネル「ぐ.....がぁぁぁ......」
コーネルが首を抑え苦しむ。
その身体は、宙にふわりと浮いていた。
「そ、村長!!」
「こ、この__村長を放せ!!」
村人のひとりがクワを持って襲い掛かると__
「ぐあぁぁぁ!!」
ゾーイは持っている杖を村人の肩へと突き刺した。
コーネル「や......やめてくれ......」
ゾーイ「やめてほしいですか? それなら、チャンスをあげましょう」
「アナタの__お名前は?」
コーネル「コ、コーネル......」
ゾーイ「よろしい」
ゾーイは上機嫌で持っていた杖を引き抜き、村長を地面へと降ろした。
コーネル「ガハァ......! ゲホッ、ゲホッ.....!」
ゾーイ「さて、コーネル。ワタシは久々に地上へと出て来ていましてね。
今、とても気分が良いんですよ。」
「そこで一つ......お願いがあるのですが」
コーネル「おね......がい?」
ゾーイ「ええ、そうです。 綺麗な月明かりの下で、食事を楽しみたいのです。つきましては、ディナーの用意をお願いしたいと思いましてね。」
コーネル「......わ、わかった。村にあるものは持って行って構わない。だから......」
ゾーイ「ああ......おそらく、なにか勘違いをしていますね」
「ワタシはね......"生きた人間"を食べたいんですよ」
コーネル「な......!?」
ゾーイ「随分と良い顔をしますね。安心してください。
ワタシはそこまで沢山食べるわけではありませんから」
「__ヒトリで構いません。若いのがいい。ヒトリ、ワタシに差し出してください」
コーネル「そ、そんなこと! できるわけ......!」
ゾーイ「ナラ、ミナゴロシガオノゾミカ?」
コーネル「ひっ......!」
ゾーイ「おっとすみません。つい興奮してしまいました。これはいけませんね」
「ヒトリと......村人全て。どちらが良いかは......まあ言わずもがな、ですね」
そういうと、ゾーイは村人の方へと歩き出した。
魔族への恐怖心が道を作る。
ゾーイ「次の満月の夜、村の奥にある洞窟でお待ちしています」
「天井に大きな裂け目がありましてね。そこから月明かりが差し込んで......さぞ、素敵な食事となることでしょう」
そして、人差し指を立てると
ゾーイ「ああ、それと......この村の周辺に結界を張りました。逃げることもできなければ......助けが来ることもありません」
「それでは、ごきげんよう」
***
カーティス「満月の夜......ということは、約束の日まではあと三日ということですね?」
コーネル「おっしゃる通りです。もし、生贄を差し出さなければ......この村は滅ぼされてしまう」
スピカ「......許せません」
ウィル「スピカ?」
スピカ「許せません! そんな......自分勝手に罪のない人達を......!」
そうだよな。怒るのも当然だ_____
まだ付き合いは浅いけど、スピカのことはなんとなくわかる。
彼女はきっと、この事態を見逃せない。
けど......
ウィル「なぁ、カーティス」
カーティス「なんだい?」
ウィル「魔族っていうのは......やっぱり強いのか?」
カーティス「そうだね......魔族といっても色々だが。話を聞く限り、知性がかなり高い。そして、結界術も使うとなると......恐らく上位の魔族。強敵だ」
やはり__
俺たちは......この世界にきてまだ日が浅い。
この世界のこともろくに知らないし、装備だって来た時のまんまだ。
戦闘だって野党と____最初に倒した"ヌシ"くらい。
こんな状態でもし戦えば......
スピカ「ウィルさん......!」
スピカが俺の腕を掴んだ。
手が__震えてる。
恐怖なのか、怒りなのか。
わからない......
わからないけど______
ウィル「カーティス......」
「俺たちは......勝てるか?」
絞り出すような俺の声をきいて、カーティスは"フッ"と笑った。
カーティス「それは......君たち次第だ」
よし___
ウィル「村長、その魔族......俺たちが何とかする!」
スピカ「ウ......ウィルさん!!」
やってやる。
正直、どうしたらいいかはわかんけね~けど。
ここは......絶対に逃げちゃダメだ。
コーネル「そ、そんな......ありがたい話ですが___相手は魔族です!
もし戦えば、きっと殺されます!」
ウィル「だからって、村人を差し出すわけにはいかないだろ?」
コーネル「そ、それは......」
コーネルはうつむき、両こぶしを握り締めながら震えている。
カーティス「ご安心ください。我々は、こういった事態には慣れていますから」
そういうと、カーティスは一冊の本を取り出した。
カーティス「そうと決まれば、早速準備をしよう」
「約束の時は三日後。それまでに......できる限りのことをするんだ」
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