襲撃

ドン!ドン!ドン!ドン!

ドアが打ち鳴らされている。

「何⁉」

「わからない。」

「わからないって何よ!何か恨まれるようなことでもしたの?!」

「するわけないし、相手もいないよ!」

一応我が家の扉は丈夫にできているので、万が一にも破られることはないだろう。

バキ!ガシャーン!

扉が破られた。

「どうするの?!ぼーっとしてないで何かないの?!」

「と、とりあえずベランダから外に出よう!」

こんな万が一に備え日ごろから妄想を繰り返してきたかいがあった。全男児の通る道だろう。

ベランダから隣の家への塀へは意外と近く、軽く飛ぶことで簡単にとどく。

ちらと後ろを見ると、無数の赤い光がこちらへと追いかけてきていた。

「何よあれ?!」

「恐らく警備用のロボットたちだ。あいつらは意外とスピードが出ない、今のうちに逃げるぞ!」

「あんたやっぱり何かして追いかけられてんじゃないの⁉」

「なわけないだろ!いたって善良な一般市民だよ!」

今一言付け加えるのなら、警備ロボットのスピード自体はそこまで早くない。しかし、襲撃を受けたということに衝撃を受けパニックになっていたのだ。

「逃げるっていったてどこへ?」

「ここら辺に住んでいるのは少し離れたとこおばあさんしかいない。とりあえずそこに行こう!」

外套と星だけが照らす道の中必死に走った。時々後ろを振り返っては、赤い光が遠くにあることを確認していた。

「あ、あそこの家だけ電気がついてるわ!」

「そこだ!」

周りの建造物と比べると格段に古く、嗅ぎなれない匂いのする家へ僕らは駆け込んだ。


「あら、どなた?」

腰の曲がったおばあさんが奥からゆっくりと歩いてきた。

「少し離れたところに住んでいるものです。申し訳ないのですが、やむを得ぬ事情があるので一晩泊めていただけませんか。」

どのみち僕らはこの人に賭けるしかないのだ。

「別に構わないですよ、こんな古い家でよければ。」

「ねえ、おばあちゃん。ここまで走ってきたからお風呂に入ってもいい?」

どうやら彼女は体をきれいにしたいみたいだ。

「ええ、いいですよ。その廊下の突き当りです。少し古いから使い方わかるかしら。」

「大丈夫です。ありがとうございます。」




おばあさんの家は古い家らしく木造でできておりタンスや机などもすべて木でできていた。我が家や学校では感じられない優しいにおいがする気がした。

「最近物忘れがひどくてね、人と話すことがないからさらに悪くなっている気がするよ。こんな風に話す機会がないから少し話しましょう?」

「いいですよ。」

そうして僕は彼女がお風呂に入っている間におばあさんと話をすることにした。

少しくらい明かりに照らされながらいろんなことを話した。彼女が若かった頃の話はアルバムを見せてもらいながら聞いた。


「あがったわよ。」

随分と話し込んでしまったみたいだ。

「ふぁ~あ、なんだか眠くなってきたよ。」

「そのようね、おばあさんも寝ているようだし。わたしもよ。」

「え。」

おかしい、ついさっきまであんなに談笑していたのにもう寝てしまっている。よくよく考えてみれば僕だってまったく眠くなかったはずではないか。

「おい、寝るな!多分あのロボットたちだ。眠らせて捕まえようとしているんだ。」

「そ、そんなこと言ったってとっても眠いんですも…の。」

「おい、目を覚ますんだ!」

「すー、すー、すー。」

穏やかな呼吸だけが聞こえる。僕自身もこの睡魔に抗えなくなってきた。

「くそ…ねちゃだめ…なの……に。」

重くなっていく瞼の向こうにうっすらと赤いライトたちが見えた。





ふと意識が浮上するのを感じた、回らない思考はまるでピントの合わない写真のようだ。霧のかかった頭であたりを見渡すと、チカチカと明るい数多くのディスプレイが見えた。何かの解析をしているようだ。

「やあ、おはよう。」

スっと目が覚めた。声のありかに視線を送れば、整えた髭に眼鏡、にやにやと笑う白衣の男がいた。

「お前は、」

「そう、俺は君たちをここに連れてきた張本人さ。博士と呼んでもらってもかまわんぞ。」

「彼女はどこだ!」

「まあ、まあそんなに興奮するなよ。よく見ろよ、すぐそこにいるだろ。」

よくあたりを見渡せば、彼女はまだ眠っているのが見えた。

「今、そいつの髪やら福屋らの一部を解析している。その結果が出れば、そいつが本当にパラレルワールドから来ているのかがわかるってわけだ。」

「いったいどこから彼女のことをかぎつけたんだ!」

「ある伝手でね…『私は専門家じゃないから、詳しい君に聞きたいんだ。』って教えてくれたのさ。」

きっと教授のことだ。そう思った。

「おっと、解析ができたみたいだな。どれどれ。」

そういって『博士』は画面をいじり始めた。

「おぉ!どうやら本当にパラレルワールドから来たようだよ!見た前、『この次元のものではない。』としっかりと書いてある!」

鼻息荒く話す姿は興奮しているようだった。

「この俺の研究に役立たせてもらおう。」

「なんだよ、研究って?」

「焦るなよ、詳しい話はそいつが起きてからだ。」

そういうと『博士』はまた画面に向かい何かをいじくりまわしていた。

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