彼女は別次元から来ていた。

@makadamianattu

出会い

皆さんは世界問題についてどれだけ知っているだろうか?

エネルギー問題に紛争、環境問題を上げるだろうか?

しかし、今現在、世界問題はほぼすべて解決されている。残されたものは多すぎる老人と、少なすぎる子供たちだ。つまるところ少子高齢化社会である。


その日、僕はいつものように「学校」へと登校していた。学校とはいうものの、きっと皆さんが想像したものではない。今の子供たちはあまりに少なすぎるため、生まれた子供たちはそれぞれある地域に集められ、「学校」に通うのだ。最もその「学校」から、さらにオンラインでつないで授業になるのだが。

今の世はあまりにも人が少ない。「学校」以外で見かける人は、少し離れたところに住む話したこともないおばあさんぐらいしかいないほどだ。

 

僕の機嫌は学校に向かう気分としては最悪だった。国によって造られた快晴が、僕のことをまぶしく照らしていて、地面からの反射も相まって目が痛くなるほどだった。空を見上げてどこまでも青い空を見上げていると、幾分かましだ。

突然、前に何かの気配を感じた、このあたりに人はいなかったはずなのに

「ねえ、ここどこか知っている?」

これが彼女との最初の会話であり、僕の実に久しぶりの会話だった、呆然とするとはあんな状態をいうのだろう。

「聞いているの?」

我に返った。

「あ、ああ、えっとここは東京の…」

「うそ!こんなに人がいないじゃない。」

何を言っているのだろうか、東京だろうとどこだろうと人が少ないのは当たり前のはずだ。

「うそじゃないよ、日本中、いや世界中こんな感じだろう?」

「何を言ってるのそんなわけないでしょ。」

話が通じない状況に僕はやきもきしていた、早く学校に行かなければならないのにこんな悪ふざけに時間をかけられない。

「日本には一億人以上の人口がいるのよ。多少さびれていても東京ならもっと人がいるはずだわ。」

そんなことはとっくに昔のことだ、会話とはこうにもかみ合わないのだろうか。

「一体君はどこから来たんだ、そんなにどこか知りたいなら、GPSでも使えばいいじゃないか。」

「つながらないのよ。」

「そんな馬鹿な、じゃあ、君のチップは?」

「チップ?」

「生まれたときに入れるだろう?」

「はあ?なに言ってるの?入れるわけないじゃない。」

だんだんとじれったくなってきた。

「なぜ場所が分からないんだ?」

「そんなことは私にもわからなわよ。ふつうに登校していたら、気がついたらここにいたのだもの。」

もし本当なら、なんとも不思議なことだ。

彼女の現状について僕が考えられることは二つ、一つは彼女の記憶がおかしくなってしまっているということ、そしてもう一つは君が僕をからかっている可能性だ。

こんな話、信じるほうがばからしい。

「とりあえず、僕は学校に行かなくてはいけないからそれが終わってからでいいかな?」

とりあえず話を切り上げたかった。

「わかったわ。とりあえず待っているから。いつ終わるの?」

「学校なんて生きているかの確認みたいなものだからすぐ終わるよ。」



この場所に帰ってくれば彼女はすでにいなくなっているのではなどと考えていたがどうやらそんなことはないらしい。彼女は今朝あったときそのままでそこにいた。

「またせたね。」

「本当に早かったわね。」

「で、話の続きなのだけれど。本気でどこかから来たというのかい?」

当然だが疑っている。

「あたりまえよ。こんなに閑散としているなんて日本じゃないわ。」

「いや、でも本当にここは日本だよ。」

「確かに、言語は通じるものね・・・」

「言語?そんなの翻訳インプラントによって関係ないだろう?」

もしかしたら、という疑念が首をもたげた。

「ああ、いよいよおかしいわ。私、まるで別の世界にでも来たみたい。」

「別世界・・・パラレルワールドか・・・」

ついこの間、学会で正式に存在が認められたんだっけな

少し考えこんだその時、

「人ヲ一人感知シマシタ、走行ヲ停止シマス」

清掃兼警備ロボットが僕たちの後ろで止まった。

「人を一人、か。」

ロボットやAI達は、僕たち人間のことを埋め込まれたチップによって認識している。そのチップは生まれた瞬間に埋め込まれることが年前から義務づけられている。つまり、そのロボットが彼女のことを認識しなかったということは彼女の言っていたことが本当であるとの裏付けになっていた。

「走行ヲ再開シテモヨロシイデショウカ?」

「ああ、行っていいよ。」

「何あれ?」

そう、彼女にとっては初めて見るものなのだからしっかり説明しておくべきだろう。

「あれは、自立型ロボットだよ。町の清掃や警備をしているんだ。」

「ふーん、この世界はずいぶん発展しているのね。」

違う世界にいるという現実をかみしめているようだった

「でも君の世界には多くの人でにぎやかだったのだろう?」

「あら、ようやく私が別の世界から来たと納得してくれたのね。」

「ロボットが反応しなかったからね、僕たちぐらいの年齢なら全員チップによってロボットに感知されるはずさ。」

「チップ・・・今朝言っていたやつね。」

「感知されなかったこともそうだけど、そうやって知らないことが多いのも演技には見えないよ。」

「とりあえず信じてくれたようでよかったわ。」

そう、彼女は別の世界から来た少女だった。




もちろん彼女に行く当てなどないので、無事、我が家の居候となった。

「あー、今日はどっと疲れた。ねえ、何か食べるものない?」

いきなり別の世界に飛ばされたのだから当然だろう。

「栄養補給剤とかならあるけど?」

僕の常食であり、お気に入りの一品だ。

「はあ?なにこれ、ただのゼリーみたいで飲み物のようで。こんなの普通の食事じゃないわ。」

「これでも腹は膨れるし、すぐに必要な分が摂取できて効率的だろう?」

「あなた食事の楽しさってものを知らないの?」

そんなこと言ったて食事を作ってくれる人なんていなかったし、コレが配給されてくるのだからしょうがない。

「まあいいわ、これでがまんする。」

外もだいぶ暗くなってきて、明かりのついた家も少なく、少し遠くを見れば完全に闇だった。こんな景色も全く人がいないからである。

「今日君に起こったことだけれど、恐らくパラレルワールドから来たのだと思う。」

「パラレルワールドね、まるでSFだわ。」

半信半疑なようだ。彼女からすれば当然のことだろう。

「僕も驚いたけれど、ついこの間存在が実証されたと研究室の教授が言っていたよ。」

「研究室?あなた高校生じゃないの?」

「ああ、この世界では義務教育はすぐに終わってそのあと興味がある研究屋に行くんだ。」

「じゃあ、私が元の世界に変える方法もわかるの?!」

彼女は興奮気味に聞いてきた。

「まだそんなに研究が進んでなくて詳しいことはわかってないんだ。明日一緒に行って話を聞こう。」

「わかったわ。ところで、どうやって寝るの?」

ベットは一つしかないし、当然一緒に寝るなんてもってのほかだ。

「ベットは君が使って。僕は別のところで寝るよ。」

眠るには少し早い気もするが、今日はいろいろあって疲れている。

「「おやすみなさい」」

満天の星が街を照らしていた。





どこかの研究場から話し声が聞こえてくる。

「ええ、計画は成功しました。無事一つのパラレルワールドの破壊に成功し、消滅させました。我々の目的にまた一歩近づきましたよ。」

誰かと会話をしているようだ

「ただ、エネルギーを予定よりも大幅に使ったので明日以降に少し影響が出るかもしれません。」

研究者の周りには大型のディスプレイや機械類が所狭しと配置してある。なんとも怪しい研究場だが意外と整頓されているようだ。

「ですが問題はありません、このまま計画を進めていきます。ええ、では。」

研究者らしき人影は機械に向かい行動を再開しだした。

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