第3話
さて、どうしたものか。
周りを見渡すと、数人の高校生とサラリーマン、そして成り行きを見ている主婦っぽい女性。
元からこの街は都会というわけでもないから人が多いわけではないが、それでもあの男共を止めようと思えば止めれる人間がいる。
僕も彼らのように見て見ぬ振りをした方が絶対に良いということは分かりきっているものの、がっつり彼女と目が合ってしまった。
ここで彼女の事を見捨てて家にさっさと帰ってしまうのは、今後の学校生活の事を考えてもよい選択ではないだろうし、何より僕の気分が悪いというのが大きい。
....でもなぁ、面倒なことには変わりないんだよなぁ。
誰か彼女を助けないものか。
そう思ってもう一度見渡すと、いつも彼女の席へといの一番に駆け付けているサッカー部の吉田を見つけた。
あいつ、どうして動かないんだ?せっかく彼女に恩を売るチャンスだよ、早くいけよ。
『俺、乃蒼さんに何かあれば絶対助けてやるんで。ナンパなんてぼこぼこにしてやりますよ』
なぁーんて、耳触りの良い言葉だけ吐いていたくせにこういうときは頼りにならないのが、ああいった人間の典型である。
ほかにもチラホラ彼女に言い寄っていた男子生徒を見かけるが誰も助けに行こうとしない。
「なぁ、お願いだよ。一発、一発でいいからさぁ」
「おいっ、いい加減にさ。素直になろうぜ」
そうこうしているうちに痺れを切らしたのか男の一人が彼女の手を引いて、人通りが少ない道へと強引に進み始めた。
.....ちょうどいいな。
あそこなら人目も少ないしね。
彼女が人通りの少ない道へと連れていかれ、僕もこっそりと何気ない顔でついて行くことにする。
おい、そこで呆けている吉田。
次はお前が助けてあげなさい。そしてもう少し中身のある人間になりなさい。
そんなことを思いながら歩いていきより細い道へと入って少し行ったところで男共は止まったので僕も彼らに声を掛けることにする。
「ねぇ、お兄さんたちさ。何してるの」
僕がそう呼びかけると驚いた顔をしたのち、彼らはにやりと笑った。
「何してるって、決まってんじゃん」
そう言って彼女の顔へと手を添えた。
「この子を堕とすんだよ。快楽漬けってやつ」
けらけらと取り巻きが笑い僕の事をみてこんなことを言った。
「お前も見た目はいいからあとで気持ちよくしてやるからなぁ。チビペチャパイ女」
.....あぁそんなこと言っちゃうんだ。このくそ外道が。
人に言っていいことと悪いことがあるだろうが、ボケ野郎が。
先ほどまで面倒くさいと思っていた気持ちが徐々に失せその代わり怒りが湧いてきた。
いいよね、もう。一般人相手に技を出してはいけないとはいうもののこれは仕方がない。
一人の男が僕に近づき、肩に手を回そうとしたところで男は一瞬で地面に伏していた。
何をしたかと言えば、回してきた腕の肩を極めて伏せただけである。
イライラするしこのまま肩外しちゃおうかな。
なんて考えていると仲間がやられたのを見て、あいつらが殴りかかろうとしてきたので足を払ってそのままもう一人も地面と友達にさせ、おなかに一発蹴りを入れて動けないようさせておく。
念のためだよ?私怨じゃないからね。決してチビペチャパイ女とか言われたせいじゃないから。
さて、あと一人だ。
仲間二人が一瞬でやられてしまい、乃蒼さんに手を出そうとしていた男が呆けた顔をしている。
「おい、そこのバカ面。どうする?やろっか?」
声を掛けると、そいつは「ちっ!!」と吐き捨て仲間二人を置いたまま何処かへと行ってしまった。
「で、後はお前らだけど」
地面に伏して蹲っている男たちに声を掛ける。
「「す、すみません」」
「謝れてえらいね。次はこういうことはしないように。そうじゃないと、次は本当に関節外すか、靭帯傷つけちゃうからネ」
「は、はい」
「はやくいけ」
男共は言われるがまま、何とか立ち上がり何処かへとお互い支えながら逃げて行った。
よし、片づけ終わり。
あとは、霜月さんへと心配の言葉を投げかけて帰ることにしよ。
「大丈夫?霜月さん。災難だったね」
そう声を掛けると彼女はじぃっと僕の事を見つめていた。
「霜月さん?」
「....っえ!?あ、ごめんなさい。助けてもらって有難うございます」
襲われたせいでどうも混乱しているらしい。
「いや、大丈夫だよ。それよりも早く家に帰りな。あんな奴らがまたいないとは限らないんだから」
「そうですね」
「それじゃ、また学校で」
と最低限の言葉をかけて帰ることにした。
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