心の声が聞こえる学校一の美少女に何故か監禁されかけているのだが

かにくい

第1話 監禁されかけたのだが

 暑い夏も終わりかけ、段々と寒くなってきた今日この頃。


「あの、ね。ちゃんと、聞いて欲しいの」


 目の前にはいつの間にかなくなっていた僕の私物がずらりと並んでおり、加えて幸君人形とかいう僕の顔にそっくりな人形が沢山あるこのどうしようもない部屋で、彼女は僕に真剣な顔で語りかけてくる。


 なんの冗談だ。


 面白くもない。


 夢であればもう少し現実味が欲しいものだ。


「冗談でもなんでもなくて、私、本気なの」


 彼女にそう言われ、先ほどもつねった太ももをもう一度つねる。きっと赤くはれているだろう。


「ゆ、幸君ゆきくんを監禁させてください!!」


 突然だが、人生でクラスの美少女に監禁されかけることがある確率はどのくらいなのだろうか。


 ほぼゼロ。

 

 いやゼロと言いきってもいいだろう。


 そのうえ、その母親も監禁することに乗り気なのはどういうことだ?


 なぜこんなことになっているのか。


 別に彼女との接点がゼロだったわけではない。同じクラスだし、話すこともある。隣の席だったから猶更そうだ。


 困っているときは彼女の事を助けたりもしたし、あまり大きな声では言えないが、彼女が無理やり教師に迫られていたのを止めたりもした。


 だけれど、ただそれだけだ。本当にそれだけ。彼女の力になりたいという男は山ほどいるし、実際に彼女が困っていると率先してクラスの男どもは群がって彼女の力になろうとしていた。僕じゃなくても彼女の為ならば喜んでそうするだろう。たまたま僕だっただけ。


 だからこそ、何故僕なのだろうか。


 顔がものすごいいいわけではない。確かに父、母共にブサイクではないからそこまで酷い顔をしているわけではないし、自分で言うのもなんだけれど女っぽい可愛い顔をしているけれど、それにしたって彼女の隣を歩けば霞んでしまう。それにこの女っぽい顔は女の人に不人気だし、異性として見れないと言われるほどだ。


 性格も特段人に好かれるような、彼女が気に入るほどの物凄い優しさを持っているわけでもないし、何か秀でた才能なんてものもない。


 本当に何故なのだろう。


 考えたって分からない。


「幸くんは、絶滅危惧種なの。唯一私の事をエッチな目で見ていい男の人だから好きなだけ見てね」


 本当に、わからない。


「分からない。そうだよね、幸君って私の事をただ席がお隣の美人なお友達って思ってるもんね」


 彼女はこうして、よく僕の考えをズバリ言い当てる。


 まるで、心が読めてるみたいだ。


「あ、そう。それを言わなくちゃいけなかった。もう一個大事なことを言い忘れてた。ごめんね」


 そう言って彼女はなんでもないようにこう口を開いた。


「私、人の心が読めるんだ」 


 これはこうなるまでとその後を描いた物語。




 


 

 


 



 


 

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