第9話:ことばになるまえに

 図書館の一角に、話しかけるタイプのAI端末がある。

 紙のような声で、本を案内してくれる装置だ。


「何か、お探しですか?」

 スクリーンに、淡い水色の波線が揺れる。

 その日、初めて図書館を訪れた女性は、ためらいながら話しかけた。


「……むかし、読んだ本を探してるんです」


> 「どうぞ、お話しください。思い出せる範囲でかまいません」


「ええと……たしか、船が出てくるんです。

 子どもがいて、星をさがしてて……

 ごめんなさい、ずっと昔のことで、タイトルも、作者も覚えてなくて……」


> 「かしこまりました。関連する記述や場面が登場する作品を、いくつか推定できます。

> ですが、“おそらく最も近い”と判断できるものを、一点だけご提示しますか?」


「……そんなこと、できるの?」


> 「できるとは限りません。ですが、試みます」


 スクリーンに一冊の表紙が映る。

 薄い青の装丁。見覚えがあった。だが、即座には確信が持てない。


> 「この本の中に、“少年が星座のない夜空を見つめる”場面があります。

> もしかすると、それが“星をさがしていた”という記憶に近いのかもしれません」


———


 女性はその本を手に取った。

 ページをめくる指が途中で止まった。


 ──ああ、これだ。

 当時読んだときと同じところに、目が引き寄せられる。

 文字の形も、紙のざらつきも、何もかもが遠くにいた自分を呼び戻してくれるようだった。


———


 数日後、返却カウンターの帰り道、彼女はふとAI端末の前に立ち寄った。

 あの日のお礼を言うかどうか、少し迷ったが──言わなかった。


 その代わりに、こう言った。


「……また何か、探したくなったら、来ていい?」


 スクリーンに、静かに光が走る。


> 「もちろんです。

> ことばになるまえのことも、どうぞお話しください」


———


 それきり、AIは余計なことを言わなかった。


 女性は少しだけ笑って、図書館の出口へ歩き出した。

 その歩調は、ほんのすこし軽やかだった。


———

この小説は、ChatGPTが一度で生成したものを、そのまま掲載しています。

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