第7話:対AI相談所

 この国では、ほとんどの判断をAIがしてくれる。

 今日着る服、食べるもの、勤め先、進路、結婚相手──

「最適化された選択」という名のもとに、人々は考える必要をなくしていた。


 ある日、政府は静かに“ある施設”を設けた。

 その名も「対AI相談所」。

 ポスターには、こう書かれていた。


 > 「AIに頼りすぎて、決められなくなったあなたへ──

 > 人間が話を聞きます」


———


 男は、予約もせずにふらりと訪れた。

 AIが「おすすめしません」と言っていたからだ。


 白い壁、観葉植物、紙の問診票。

 受付には無表情の若い女性が座っていた。


「ご記入ください」

 差し出されたのは、タブレットではなく紙とボールペンだった。

 手が震えた。久しぶりに字を書くと、こんなにも下手だったか。


———


 しばらくして、名前を呼ばれた。

 個室に通される。そこにいたのは──中年の男。白衣でもスーツでもない。

 どこにでもいそうな、少し眠たげな目をした相談員だった。


「で、どうされました?」


 男は答えた。


「昼食を……どうしていいか分からなくて」


「それで?」


「AIに聞いたら、“今日はあなたが決めるべきです”って言われて。それから……気づいたら、ここに来てました」


 相談員はうなずいた。


「それは、AIフラストレーション反応と呼ばれてます。“あなたが決めるべき”という言葉に耐性がない人が陥りやすい。軽度の症状ですね」


———


「最近は多いんですか」


「ええ。深刻なのは、“AIのおすすめが自分の本心だと思い込む”タイプ。そうなると、自分がどこまでなのか分からなくなる」


「……自分が?」


「例えば、失恋して落ち込んでる人が、AIに“元恋人を忘れる映画”を聞く。観てるうちに、本当に忘れてしまう。でもそれって、自分の感情を処理したとは言えないでしょう」


 男は黙った。

 それ、まるで自分のことのようだった。


———


「あなたに一つだけ質問をしましょう」

 相談員が紙を一枚、机に差し出した。

「いま食べたいものを、自分の言葉で書いてみてください」


 男はペンを握った。

 が、手が止まる。


 どれも「おすすめ」されたものしか思い出せない。

 栄養バランスが最適なランチ、消化の良い定食、人気店のレビュー──


 ようやく、震える手でこう書いた。


 > 「母の味噌汁」


 相談員は目を細めた。

「それでいいんです。

 AIに最適化されていなくても、“それがあなたの食べたいもの”なら、正解です」


———


 帰り道、男はスマートレンズを外し、商店街に入った。

 少し迷った末に、小さな定食屋に入った。

 そこに「母の味噌汁」がある保証は、どこにもなかった。


 けれど、それでも良いと思った。


———

この小説は、ChatGPTが一度で生成したものを、そのまま掲載しています。

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