Chapter3 第24話 圧倒的な力の差
藤崎新汰は、教室から出ようとした。
だが、出れない。
ドアが動画停止をしたかのように、ぴたりと動かないのだ。
教室の外からは、打撃音や斬撃音が飛び交っている。
藤崎新汰は、別に外にいる連中を助けるために、今ドアを弄っているわけではない。もとより、藤崎はそんなにおめでたい奴ではない。
ついでだ。
自分の標的が、灯智だったから。
まぁ、いまの標的が、そうなのである。
灯智に、新子リクオ・荒川三成・沖田総司という貴重な面子を、殺されると振り出しに戻るからである。
−−個人的に。あくまで私的に恨みを持っている巻島駿裏を、殺すには。その3人には、五体満足でいてくれないと困ってしまうからだ。
「…はァァ。」
藤崎は、一つため息をついた。
このドアは、人力とかでは全く開かないことが、証明されてしまった。
おそらく、このような魔法をドアにかけたのは、あいつだな…と藤崎は思った。
あいつ。
そう、みんな大好き楠律規だ。
「なァ、マスターどうするんで?これ」
「呼んでもないのに、勝手にしゃしゃり出るなよ。青龍」
ため息混じりで藤崎は、自身の召喚獣・青龍にそう注意した。
注意というには、えらく落ち着いた声の調子で、怒っている−−ということを大体の人は読み取ることなどできまい口調であるが。
「いやぁ、すんませんなぁ。何せむっちゃ暇なもんやから。マスター心配して来てやったんですよぉ?」
「まるで、自分が弱いみたいに言うな。」
「…思たんですけど、その『自分』っていう一人称やめた方いいんじゃないですかい?その、紛らわしいから。」
青龍のこの発言は、見事に藤崎新汰の地雷を踏み抜いた。
藤崎の目が、人を殺しそうなほどの鋭い瞳に変化する。体は、怒りでわなわなと震えているのが、遠目でもわかるくらいだ。
「…ほう。そうか、考えておくよ」
青龍に向けた目は、ひどく冷たかった。路地裏にある生ゴミを睨みつけるかのような。
そんな瞳である。
今にも怒鳴り出しそうな声で、清流に告げると開かないドアに八つ当たり気味に解除魔法をぶつけた。
が、かけられた魔法は解かれない。
その現状に藤崎は、さらに機嫌を悪くした。
スペルキーに、沖田総司・荒川三成は、まっすぐに向かっていた。
2人とも、この召喚獣が強いということを、本能的に察していた。この召喚獣から、逃げるという選択肢もあった訳だが、そんなこと。2人の肌には、いかんせん合わないのである。
突っ立っていても、すぐに目の前にいる敵に、いたずらに惨殺されることなど、もう目に見えているようなものだ。
つまり、消去法的に脳筋戦法で、突っ込むという選択肢を選ぶほかならないのである。
「−−おおおおおおおおああああああああっ!!!」
「うおおおおおああああああっ!!!!」
雄叫びを上げながら、2人は同時にスペルキーに対して、攻撃を仕掛けた。
だが、やはり召喚獣と人間。
そこには差が発生する。
圧倒的な力の差というやつが。
スペルキーは、2人が繰り出そうとする攻撃を軽々と、避けてみせた。
踊り子のように軽々とした調子で、2人からの攻撃を避け、さらに2人の体制を崩させた。
「うぎゃっ」
「くそっ!」
どがしゃあっ!という物音を立てて、2人は廊下に崩れ落ちた。
さすがは、コンクリート製の横浜第一高校。一昨年校舎を建て替えた、というのもありかなり痛い。
(ちなみに、旧校舎は木造建築だったらしく、廊下を歩いていたらギシギシという音が鳴ったり、トイレはタイル張り・蜘蛛の巣がいくつも張っているという劣悪ぶりだったらしい。)
膝が、ジンジンと痛み、ああ。こりゃあ膝擦りむいちゃったかなぁと2人は思った。
弱った表情をしている2人を、スペルキーは見た。
物珍しいものを見るかのように、覗き込んだ。
なんだ、こいつは?煽っているのか、ああそうか、煽っているのか!こいつ!!
沖田は、そう思った。
沖田総司は、クールで冷静沈着。という印象があるかもしれないが、そうではない。
いや。まぁ。普段はそうなのだが、一度頭のネジが、なんかの拍子に外れてしまうと、短絡的になるのだ。
腹の虫全部煮えくりましたよ!おとうさーん!と、報告したくなるほど。
「随分と、舐めるんだな。召喚獣って奴らは。」
怒っちゃってる!
荒川三成は、そう思った。しかもガチギレ。手に負えませんわ、兄様ぁ!というような。
そんな表情をした三成を、沖田は横目で見た。
「舐めるに決まっているでしょう?そりゃあ、召喚獣ですし。」
これだ。
沖田は思った。
このスペルキーとかいう輩の弱点が,今わかった。
まぁ、弱点というのかはわからないが。
沖田は,賭けに出てみようと思った。
失敗したら,2人とも死ぬし,下手したらリクオ・楠たちにもスペルキーの魔の手が、迫るかもだが。
だが、やらないよりかはマシである。
やらないよりかは,やる。
行動しなければ,何も始まらないじゃないか!沖田は、自分にそう言い聞かせていた。
いつだって。
沖田は,そうだった。
そう、今年の3月。
北海道にいる家族の元から独り立ち,横浜に上京するとなった時も−−。
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