Chapter3 第16話 不穏な噂は風と共に。
深夜。
異世界・グラングウェイル。
「ハァッ…ハァッ…なんなんだよ、あいつはぁっ!」
とある冒険者が、森をかけている。
まるで、迫り来る命の危機から、必死に逃れようとするみたいに。
いや、実際命の危機なのだ。
命の…。
「あははっ逃げちゃだめだよ、召喚士さん。どーう?あなた自身の使役していた召喚獣に追いかけられて、殺されるってのはぁ。」
「ハァッ…ハァッ…どうしちゃったんだよ!ハウンドドック!!なんで…俺を」
ハウンドドック。
彼の召喚獣の名前だろうか。
「いくら呼びかけても、無駄無駄無駄ぁ…やっちゃえ。ハウンドドック」
そう、ピンク髪の少女が命令すると、ハウンドドックは、かつての主人に向かい…。
引きちぎれた死体は、どこまでもひどく人の地獄のようだった。
ギルド、リライジング・リボーンの受付嬢は、冒険者たちの会話を盗み聞いていた。
まぁ、盗み聞きしているのではなく、ただ単純に会話が聞こえちゃってる…だけなのだが。
「コレクター!?なぁにそれ」
「召喚獣を虫の標本作りみたいに、保存すんだって〜」
「えっ何それ、めちゃ怖じゃん!」
わいわいと話す一般冒険者たちに受付嬢は、怒りを覚えながらも淡々と業務に当たっていた。
「…受付嬢。」
声をかけてきたのは、受付嬢の古くからの幼馴染・時間操作魔術師(タイムコントローラー)の、カリュド・スローンズである。
髪の毛をポニーテールにしており、服装は実に異世界の冒険者、とでもいうような服装をしており、仏頂面。
だが、よくよく見たら顔は整っている男が、受付にいた。
「こんにちは、スローンズ様。なんですか、仕事の妨害ですか?業務を執行妨害しに来たんですか?」
「…妨害しには、来ていないぞ。」
「s級魔術師だからってあまり調子に乗らない方がいいんじゃないですかぁ?」
「…調子にも乗っていない。」
淡々と受付嬢の嫌味にも、そんなに反応しないカリュド・スローンズを見た受付嬢は、イラついた。
イライラが止まらない。
不快である。
不快極まりない。
口数が絶望的に少ないのと、仏頂面でなければ、こいつはかなりのものを持っているのだ。
顔だって、パーツ的には正統派イケメンそのものなのだ。
そんなことを考えながら、彼の顔をのぞいていると、あからさまにやつは嫌な顔をした。
「…お前。気持ち悪いぞ」
「黙れやぁっ!!」
追撃というやつである。
「わかった。黙ろう」
「カリュド様の天然ぶりには、呆れます。他のお客様のご迷惑になりますので、裏でお話ししましょうか?え?」
この提案をした時の受付嬢の、無言の圧にカリュドは耐えきれなかったのか。
カリュド・スローンズは、渋々従った。
ギルド、リライジング・リボーンは、東の大陸の1番の都市に位置するいわば最も有名なギルドの一つだ。
中世ヨーロッパ風の大都会の街並みの中に、そのギルドはあった。
そして、もちろん路地裏も。
「そんで?カリュド、話は何?」
「闇ギルドはお前も知ってるよな?」
「…え、うん。それが。」
闇ギルド。
こちらの世界の人間なら、誰でも知っている常識中の常識である。
闇ギルド。
違法取引・過激任務・悪魔崇拝などなど。一般的な価値観からは到底に外れ、危険思想を持つギルドのことである。
「…3年前くらいに、大量の冒険者が闇ギルドに催眠かけられて入っちゃって。そんで、えーと、第何位だか忘れたけど、純血種悪魔に殺されたんだっけ、全員。」
「ああ。そうだ。だから、異世界バイトが始まったんだよ。」
2人は、懐かしむように会話をした。
あまりいい思い出ではないが。
「それで、闇ギルドがどうしたの?」
「闇ギルドの、一つが悪魔崇拝をしてる。そして、そのギルドの中にコレクターって言う召喚獣狙う輩がいる。」
「…何がいいたいの?」
「確か神殿でのバイトで、不死鳥を召喚した奴がいるんだろ?」
「!…へ、へぇ、知ってたんだ。」
カリュドは、相変わらず怖いなぁと受付嬢は思った。
詰め寄り方が恐怖しかないのである。
じわじわと丁寧に追い詰め、徐々に。だが、確実に逃げ道がなくなっていくような感覚。
「気をつけた方がいい。もう何体もの召喚獣が、コレクターの標本と化している。目を離すなよ。」
これだけ言うと、カリュド・スローンズは転移魔法を使い、どこかへ行った。
「…あいつ、私に忠告するだけか…」
受付嬢の不満は、小さく虚空に放たれたのだった。
秋である。
横浜の街は、秋であった。秋休みが近いというわけではないのだが、それはそれとして、定期考査が近かった。
(…だから、今日は勉強しようと思ってたのに、)
リクオは、再度思った。
なぜ。なぜ、自分はアウトレットホームにいるのだろうか?と。
その原因を作った元凶が、今にこやかな顔をしながらドリンクを持ってきた。
「リクオくーん!ごめんね、待たせちゃって」
そう。
巻島駿裏に、呼び出されたのだ!
「…なんで」
「んー?リクオ君なんか言った?」
「いいえ」
溢れ出る出る陽キャオーラに、かなりの引き目と自己嫌悪を感じながる。
惨めったらしく、再認識せざるを得なくなる。
自身が、陰気であることに。
(この人ぶん殴って…逃亡したい!今この時だけ)
「そんな怖いで目で、オレのこと見ないでよ、ビビっちゃうよ?」
煽ってんのか?挑発してるよな?
殴れって言ってるようなもんだよな?
リクオは、思わずそう思ってしまった。
まぁ、そんなこと口が裂けても言わないし、言うつもりもないが。
「…あはは、嫌だなぁびびんないでくださいよ、あははは」
「まっ、だよねぇ。優しい優しいリクオ君が、…まさかねぇ?」
怖い。
この人、敵に回したらヤバい人だ。
…と、リクオの中の全細胞が悲鳴を上げる。
「三回まわってぇ、わん」
「…は?」
「返事は、『はい』か、『イェス』か、『ニャン』か、『ワー』か、『サー・イエス・サー』のうちのどれか一つしか、許さないからね?俺。」
「鬼畜の極みみたいなこと急にやりますね!?ってか、選択肢無駄に多っ!ってか、ワーってなんですかぁっ!!」
「…ノリ的な。何か。」
「へぇぇぇっ!!そうなんですか、あっそ!!早くいきましょう暑いから!九月と思えないくらい暑いから!!」
「うんっそうだねぇ」
新子リクオは、思った。
この人怖い!と。
冷静になって思い返してみると、リクオは全員の経歴を知らない。
まぁ、沖田・三成は学校でもあっているからだいたい把握しているが。
駿裏のことは、悪い人ではないと思ってはいる。思ってはいるのだ。
だが、いまいち信頼できない。
とてもいい人であることには、間違いないのだが。
2人は、とあるカフェの窓際の席へ移動した。
「いやぁっ!やっぱクーラー最高、文明万歳だねぇっ!」
「…はい、そうですね。」
どかっ!と駿裏は椅子に座った。
すぐに飲み物を注文する。
リクオは、駿裏の顔から笑みが消えたのを見た。
そして、駿裏が口を開いた。
「リクオ君。ふざけるのはここまでにして、こっからは、少し真面目な話するよ。」
快適だと感じていた室温が、寒く感じた。
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