カニカマリアは星を繋ぐ 〜宇宙を渡る練り物外交官の日常〜

第4章：練り物パニックと、カニカマの光

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「な、なんだ！？」

テカテカ額の男が叫んだ。練り物工場の巨大な換気扇が、けたたましい音を立てて逆回転を始めたかと思えば、床からは隠し扉が開き、大量のちくわ型のスモーク爆弾が噴出した。工場内は一瞬にして、香ばしいちくわの煙に包まれる。

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「ぐ、ぐぅ…この匂いは…！まるで、揚げたてちくわを鼻腔に直接叩きつけられているようだ…！」

ソーセージ腕の男が、苦しそうに顔を歪めた。彼らは、練り物の匂いには慣れているはずなのに、この濃密なちくわのスモークは、彼らの感覚を麻痺させるようだ。これも社長の計算か。

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社長は、私の手を取り、冷凍庫の奥へとさらに進んだ。そこには、人一人通れるかどうかの狭い通路が隠されていた。

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「ここだ、カニカマリアちゃん！ここが、俺の秘密の研究室…いや、練り物秘密基地だ！」

通路の先には、意外にも明るい空間が広がっていた。そこは、カニカマの模型や練り物の歴史書が所狭しと並べられ、中央には複雑な機械が鎮座している、まさに「基地」と呼ぶにふさわしい場所だった。壁には、カニカマ星の星座図らしきものも描かれている。

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私はその光景に目を奪われた。「カニカマ号」の設計図の断片は、確かに私に故郷への帰還を促した。しかし、同時に、この社長の、練り物への、そしてカニカマ星への並々ならぬ愛着と探求心に、私は心を揺さぶられていた。彼は、私と同じくらい、いや、それ以上に、カニカマの奥深さを信じているのだ。

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「社長、この機械は…？」

私は、基地の中央にある機械に目を向けた。それは、複数のカニカマが連結され、複雑な配線が施された、まるで宇宙船のコックピットのような装置だった。

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「これはな、カニカマリアちゃん。俺が長年研究してきた練り物時空転移装置だ！カニカマのエネルギーを最大限に引き出し、時空を歪めることで、どんな場所へもワープできる…はずなんだがな！」

社長は胸を張って言ったが、最後の一言が妙に歯切れ悪かった。どうやらまだ、実験段階のようだ。

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その時、秘密基地の扉が激しい音を立てて開いた。煙の中から現れたのは、ちくわスモークにむせながらも、執念深く私たちを追ってきたテカテカ額の男とソーセージ腕の男だった。彼らの顔は、もはや怒りで真っ赤に染まっている。

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「よくも、よくも我々の鼻腔に、ちくわの匂いを…！カニカマ姫、そして愚かな地球人よ、覚悟しろ！」

テカテカ額の男が、奇妙な杖を取り出した。それは、まるで巨大な魚の骨を加工したかのような、不気味な形をしていた。彼が杖を構えると、その先端から青白い光線が放たれ、練り物秘密基地の壁が溶解し始めた。

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「くそっ、このままだと基地が…！カニカマリアちゃん、頼む！設計図の情報を、この時空転移装置にインプットしてくれ！俺の計算が正しければ、これで奴らの追跡を振り切れるはずだ！」

社長が必死の形相で叫んだ。私は迷わず、手に持っていたカニカマを、時空転移装置の中央にあるスロットに差し込んだ。カニカマが装置に吸い込まれると、機械全体が眩い光を放ち始めた。

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私の脳裏に、カニカマ号の設計図が鮮明に浮かび上がる。その情報が、装置へと瞬時に転送されていくのが分かった。しかし、同時に、練り物帝国のスパイが放つ光線が、時空転移装置へと迫っていた。

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「カニカマッ…！間に合いますわ…カニカマッ！」

私は祈るような気持ちで、カニカマ語を叫んだ。光線が装置に到達する寸前、練り物時空転移装置は、まばゆい閃光と共に、私たちを包み込んだ。次の瞬間、練り物秘密基地は、音もなくその場から消え去った。

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残されたのは、溶解した壁と、ちくわの煙が立ち込める工場、そして何が起こったのか理解できない練り物帝国のスパイたちだけだった。彼らは、自分たちの手から滑り落ちた獲物を、ただ茫然と見つめるしかなかった。

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