第7話妹と幼馴染の約束。side灯

「ねぇ灯ちゃん。約束だよ」


「うん、ひよりちゃん。これは二人だけの約束」


小学生の頃、好きな子の妹と約束をした。ただの口約束に過ぎないが、その約束は今でも忘れていない。


「おい、灯。おい……聞いてるのか……?」


「え……!?なに雪斗」


雪斗の声で我に返る。何故か不意に昔ひよりちゃんと約束した事を考えてしまって、雪斗の話を全く聞いていなかった。


「だから、ここは」


雪斗と映画を見に行った日から数日経って、中間テストも来週に迫っていた。雪斗は時間を見つけて私に現代文を教えてくれていた。


なんで今になって、ひよりちゃんと約束したあの事を考えたのか。それは、映画を観にいったあの日の夜、中間テストの現代文の範囲を教えてくれた雪斗が帰った後、突然ひよりちゃんから電話がかかってきた。


ひよりちゃんが私に電話をくれたなんて、数年振りだ。昔みたいに話たくても、ひよりちゃんが私を避けるようになってから、一言も話していなかった。


「もしもし、ひよりちゃん……?」


「久しぶりだね、灯ちゃん」


「うん、久しぶり。ひよりちゃんと話すのどれくらい振りだろ」


「三年くらい」


「そっか……三年か……」


まさかそんなに話していなかったとは、たまに雪斗とひよりちゃんが一緒に買い物帰りの歩いている所をみたり、通学路で雪斗と話しているのをみていたから声は聞き馴染みがある。


だがひよりちゃんは私と通学路で偶然出会ったりしても、会釈だけして通り過ぎるから。こうして電話で話しているだけなのに、なんだか嬉しくなる。


「あのね、ひよりちゃん」


「お兄ちゃん、まだ帰ってこないみたいだけど」


「あ、さっき帰ったよ。雪斗にはさっきまで中間テストの範囲を教えてもらっていて、多分もう少ししたら家に着くと思うよ。ごめんね、ひよりちゃん。雪斗の事が心配だったよね……」


「灯ちゃんはあの約束まだ覚えてる?」


「うん、ちゃんと覚えてるよ。一つ聞きたいんだけど、ひよりちゃんは私の事」


ひよりちゃんは私の言葉を最後まで聞かないで電話を切った。


「はぁぁぁ……」


私はため息を吐いて、写真立ての写真を見る。そこには小学生の男女四人が仲良さそうに笑顔で写っていた。


「灯、おーい、灯!!」


「うひゃ!?いったー、いきなりデコピンしてくるなんて酷いじゃん雪斗……!!」


いきなり雪斗は私のおでこにデコピンをしてきて、私はおでこを押さえる。


「酷いのは灯だろうが、お前さっきから俺の話、全く聞いてないだろ?」


「ちゃ……ちゃんと聞いてるよ……」


「じゃあさっき教えたここの現代語訳、答えられるだろ」


「え……えーと」


「はぁぁ、やっぱり聞いてなかったんじゃないか」


「あはは……ごめん、ごめん。今度は真剣に聞くからさ、教えてよ」


「たく……中間テストの範囲教えてくれって言ったの灯なんだからな。これで赤点取っても文句言うなよ」


「わかってるって」


そうだ、中間テストで赤点を取ったら一ヶ月間おこづかい抜きにされてしまうのだ。さっきまで考えていた事は一旦頭の隅に置いて、私は真剣に中間テストの勉強を取り組み始める。

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