第23話 おどおどした英雄様?

 娘に色目を使われて黙っておけるか。

 全面抗争じゃあ!


 てめえの尻に指突っ込んで、奥歯ガタガタいわしたるぅ!


 領主がなんぼのもんじゃ。

 芋なんて引かねえぞっ!

 この世界の最強は権力者じゃねえ。

 娘を守る母親こそが最強だと、その貧相な体に教え込んだろか!?


 おぉん!?



「ひっ!」

「…………へ?」



 あ、あれ?

 領主様が逃げ出した……?

 今、椅子の後ろに隠れて震えている男が領主でいいのよね?


 あなた、辺境の英雄とか呼ばれてませんでしたっけ?


 あのー、メイド長さん、この人本物ですか?



「ミステール様。そんなところに隠れないでください」

「いや……怖いんだけどっ! もっと温和な人って聞いていたのにっ!」

「大丈夫ですよ。ミース様は少し誤解されているだけですから」

「絶対反社だよぉ。人を海に沈めたことがあるに決まってる」



 失礼しちゃうわ。

 確かにさっきまで成りきっていたけど、そんなことはしておりません。


 私は究極で完璧なリーたんとミーちゃんのママでございます。



「ほら、もっとしょきっと堂々としてください。」

「君はいつも」

「私は領主らしくあって欲しいと願っているのです」

「嘘だっ! 本当は僕が怯えている姿を見て楽しんでるんだっ!」

「あら、よくご存知ですね」

 


 このメイド長、かなりのドS?

 ご主人様相手に容赦ないなー。


 えっと、リーたんはこの姿を見て幻滅してたりしていない?



「ねえ、リーたん」

「……すごい」

「?」



 リーたん、さっきまでは

 よくよく見たら、ヒーローアニメを見る男の子みたいな……。



「ねえ、何がすごいの?」

「魔力の質からまるで違う。まるで魔石の塊みたい。どうすれば、こんな風にできるの? これが王族の遺伝子改良の結果ってこと? どんなフェロモンを精霊にそこまで好かれるの? あの状態なら、呪文を使わなくても大規模魔法を撃てるはず。いや、それどころの話じゃない。高度な魔法すらも使える可能性がある。それに、あの目は一体に何? 魔力が凝縮されていて、疑似的な妖精のような状態になってる。もしかして、王族の妖精の血が転生者の血と反応して起きているの? それに、毛の一本とっても魔法のアイテムとして使えそう。肌にもドラゴンスケイルみたいな魔法防御が宿っている。もう完全に人間と別の存在だし、性質としては魔物に近いんじゃ――」



 こわっ!

 いきなり高速詠唱をはじめたんだけどっ!


 これ、魔法の呪文じゃないよね!?

 いつもの無口なリーたんはどこにいったんですか!?



「えーと……」



 つまり、こういうことかな?


 リーたんは領主様に恋しているんじゃなくて、彼の魔法的体質の凄さに目を輝かせいていただけで……。

 私は勘違いをして、悪態をついていた。


 これ、ヤバくない?

 いや、そもそも領主様にあんな態度をとるのってヤバかったんじゃない!?

 こんなに怯えさせてしまったし、


 冷静になったら冷や汗が出て来ちゃった……。


 とりあえず先手必勝!

 謝ったら勝ちだっ!


 

「た、大変失礼いたしましたっ!」



 まさか、こんなところで役に立つなんて思わなかったっ!


 リーたんにオギャリたいために鍛えた、究極の土下座。

 後光が差していると錯覚するほどの完璧さ!


 私はマーベラスでジーニアスでアルティメットなママだ。

 家族を守るためだったら、裸で盆踊りでも土下座でもなんでもしてやるっ!

 

 領主様の反応やいかに――



「ぷっ」



 えっ。

 笑われた?


 どういうこと?


 え??????



「大丈夫です。僕は最初から怒っていませんよ」



 え、なに。

 この空気なに。


 リーたんもミーちゃんもなんで頭を抱えてるの?


 あっ。

 強制的に着せられたドレスを汚しちゃった。


 これ、弁償になったらどうしようっ!


 

「心配ありませんよ。こちらが勝手に着せたものですから」

「……すみません」



 って、あれ?

 この人も心を読んでいる?


 

「ミースさん、フリーゼさん、ミーちゃんさん、あなた達をお呼びしたのはある理由があるんです」



 不敬罪。

 とか、今の優し気な顔で行ったりしないよね!?

 そんなサイコパスじゃないよね!?


 領主様のこと信じてもいい!?!?

 


「それは――」

「失礼しますっ!!!」



 突然衛兵さんが入ってきた!?

 なにごと!?


 

「なんですか。来客の前ですよ」

「至急、ご報告したいことがございます」

「手短に」



 この焦り様、相当ヤバいんじゃない?

 私たちが聞いてもいいの?



「南西方向より、魔王軍の軍勢がアンファンスへの侵攻をはじめたとの報告がっ!」

「え?」



 それって……。

 

 

「数は?」

「1000近くと思われます」

「幹部は?」

「目撃情報はありません」

「……わかった。僕が出よう」



 魔王軍!?

 しかも、1000体とか、王都から軍隊を派遣してもらわないといけないレベルじゃん!

 この村にいる冒険者だけじゃ絶対にムリムリムリっ!

 

 アンファンス壊滅の大ピンチじゃない!?





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