第18話 とある天才魔法使いの憂鬱な日常

 うるさい。

 なに、この音。



「……ぐがぁ……ごがああああああぁぁぁぁぁ」



 本で読んだ、ドラゴンの息みたい。

 ドラゴン……。


 そうだ。

 ドラゴンスケイルが必要だったんだ。

 ミースを元に戻すために。



「ふがっ」



 ドラゴンにしては柔らかい?

 それに温かいし、馴染みがある気がする。

 この感触……。



「なんだ、ミースか」



 ミースのいびきがうるさすぎる。


 あれ?

 なんでミースの上に乗っかかってるんだっけ。


 あ、そっか。


 昨夜、ミースの魂を見るために、忍び込んだんだった。


 いい匂いがするのが地味に腹立つ。それに、いつの間にか寝落ちする自分が悔しい。

 まあ、ミースの目が覚める前に起きられてよかったけど。



「自分の部屋に戻ろう」

「……ががぁ……リーたん……」



 なんだ、寝言か。

 


「ほらほら……逃げるで……ない」



 わたし、夢の中で追いかけられてるの?



「ほーら、捕まえたぁ……。うへ、うへへ、うへへへへへへ」

「ミース……」



 すごいよだれを垂らしているけど、夢の中のわたし、何をされてるの?

 

 まあ、夢の中なら何をされてもいいか。現実のわたしには影響ないし。

 それに、ミースならそこまで変なことしないでしょ。



「おやすみ」



 わたしの部屋はミースの隣。

 だけど、雰囲気は全然違う。



「……きたな」



 ミースの部屋はモノがあまりなくて、スッキリしている。


 でも、わたしの部屋は本だらけ。

 全部、魔法に関する本。

 足の踏み場もないし、どこに何があるのか、よくわからない。


 まあ、別にいいけど。

 本が読めるスペースとベッドがあれば問題なく過ごせるし、困ったこともない。



「……ふわぁ」



 インクと紙の匂い。

 この匂いも落ち着く。


 本当に、今の生活は幸せ。

 魔法に没頭できて、ミースに世話を焼いてもらえてる。


 アンファンスも穏やか。

 田舎すぎて魔法のアイテムが手に入りにくいのが難点だけど。


 でも、ここ1週間ぐらいは、色々と大変だった。

 

 ミースからオギャらせてくれと頼まれたことが発端。

 正直、最初はちょっと嬉しかった。そんなにわたしのことが好きなんだって。

 ミースがそんなにお願いするなら、少しぐらいはいいかなって思ってた。

 でも、理由が最悪すぎて、そんな考えも吹っ飛んだ。

 

 なに。おっぱいが大きいからって。


 いつもいつもわたしのことを『かわいい』とか『好き』とか言って、結局はおっぱいを見てたの? それが目的だったの?


 それで衝動的にTS魔法を撃ったら、ミースが転生者だったせいで簡単に戻せなくなって……。

 わたしが必死に戻す方法を探している間も、ミースはミーちゃんっていう妖精を生んでるし、赤ちゃん魔法が解けた瞬間、事故とは言えわたしの恥ずかしいところを見られたし……。


 正直、見られたまではギリギリ許せる。ミースだし。昔、一緒にお風呂に入ってたし。

 許せないのは、わたしの大事なところを見た後にミースが発した言葉。


 つるつるでかわいいね、って。


 わたしの気にしてるところ……。

 それに、謝る前にそれ?

 もう怒って、わたしが無視を決め込んで、最終的には仲直りキノコでしにかけて……。


 でもミースのわたしへの想いを聞いたら、怒りがどうでもよくなっちゃった。

 本当、自分のことながら子供っぽい。


 でも、ミースはわたしのことをまだ見捨ててない。

 生みの親みたいに、捨てたりしない。

 


「わたし、ミースのこと、どう思ってる?」



 ミースはわたしのことがかなり好きなんだと思う。


 でも、わたしって、ミースのことが好きなの?


 答えは『わからない』。


 そもそも、好きって気持ちもよくわからない。

 どんな魔法の本も説明してくれない。

 


 ミースがいないと生きていけない。

 ミースがわたしのことが好きじゃないと許せない。

 ミースがいない世界なんて考えられない。


 でも、この気持ちがよくなからない。


 いくら魔法を勉強しても、答えなんて出てこなかった。


 考えても仕方ない。

 いつもそう割り切ろうとするけど、モヤモヤする。



「……はぁ。魔法のこと考えながら、寝よ」



 いつもいつも、それが一番楽だと思ってる。





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