第5話 糸目の幼馴染は強キャラ!?

 なんで、思いつかなかったんだろう。



 本当に、私は大バカものだ。

 チャラ男を撃退した後、私たちは順調にチーパオ商会に向かっていた。


 だけど、到着直前に最大の壁が立ちふさがった!

 チーパオ商会はこの村唯一の商店だから、もちろん近辺には人がいっぱいいるのよねぇ。

 マント一枚の状態だと、さすがに通る勇気がない!


 こうなったら、一気に突破するしかない!

 そう決意したのつか、フリーゼが不思議そうに言ったの。



 姿を消せる魔法、あるけど?



 んあああああああああああああああああああ!!!!



 そうじゃん!

 フリーゼの魔法があるじゃん!


 魔法を使えば、こんな問題、解決できるじゃん!!!

 私の苦労とか|羞恥心は一体何だったの!?

 もう一回あのチャラ男を殴りたい気分なんだけど!?!?



 ……ごほん。

 何はともあれ、チーパオ商会の目の前にきたんだけど。



「相変わらず浮いてるなぁ」



 チーパオ商会の建物。

 なんていうか、一言で言えばめっちゃ中国。めっちゃ赤い。

 ここだけ世界観が違い過ぎるのよ!

 ここって穏やかな農村だよ!? 田舎になんで、こんな大きな建物があるの!?

 絶対にいらないよね!? 宝の持ち腐れだよね!? 領主さまの家より明らかに大きいよ!?!?


 まあ、色々と買えて便利なんだけどねっ。

 いつもお世話になってます!!!


 さて、門の前に来たし、覚悟を決めないとね。

 念のため、お財布の紐はしっかり閉めといて、何回も念じておこう。


 無駄金は使わない! 無駄金は使わない! 無駄金は使わない!



「じゃあ、行こう」

「うん」



 よし、いくぞ!



「たのもう!」

「「まいどおおきに~~~!」」



 うわー。こってこてのエセ関西弁。


 中国とエセ関西弁って関係ないよね!?

 異文化交流もここまでくると、立派な個性だよ!


 それにしても。



「……あいかわらず、すごいわよねぇ」

「うん」



 店も大きくてすごいけど、やっぱり目を引くのは店員の服装。

 チャイナドレス。


 つまり、チャイナドレスを着ながらエセ関西弁で店員が接客している空間。

 みんなスタイルがいいから似合ってるのがすごいわよねぇ。……オジサンが混じっているけど。あっちは見ないようにしとこ。

 

 ちなみに、このお店には商品は並んでない。

 店員に欲しいものを頼んで、倉庫とか棚から持ってきてもらう形式。

 現代のスーパーマーケットとは違うから最初は慣れなかったけど、今では高級店で買い物してるみたいで楽しいと思えるようになってきたのよねー。



「……」



 あと、彼女はいないよね……?

 見つかったら絶対面倒なことに――

 


「あ、フリーゼやないかい。こないなところにどないしたん?」

「おわっ!?」



 なんで後ろから声を掛けてくるの!?


 

「あ、イーリャン」

「せやでー。イーリャンお姉ちゃんやでー」



 全く、なんでいつもいつも驚かせてくるの。

 それにしても、イーリャンはチャイナドレスがとっても似合ってるなぁ。


 緑髪のポニーテールに、モデルみたいにスラッとした手足。

 顔は凛とした美人なんだけど、一番特徴的なのは糸目だと思う。

 なんていうか、エセ関西弁も合わさって、すんごく商人っぽい。


 フリーゼが普通に会話できている時点でわかると思うけど、孤児院脱走組のひとりだったりする。


 その日暮らしを選んだ私たちと違って、チーパオ商会で見習いをすることを選んだんだから、かなりしっかり者よね。自慢の幼馴染すぎる!


 

「店に来るなら、言うてくれたらよかったのにー」

「ちょっと急ぎだったから」

「そうなん? なんの用なん?」

「これ」



 いや、そんな雑に私を指ささないでよ。

 


「んー、このべっぴんさん、どちらさんなん?」



 あ、やばい。

 服のことで頭いっぱいで、誤魔化すための設定とか何も考えていなかったっ!

 さすがにそのまま伝えたら、色々と大変なことにならない!? 領主様から依頼された魔法なんだから、もちろん公にできないよね!?

 下手したら首ちょんぱされる可能性も……。


 どう思いますか、フリーゼさん!



「…………」



 うんうんうん。

 了解。口裏合わせるね。



「ミースの代わりのミース」

「は?」

「これ、新しいミース」



 ざっつー。

 私の幼馴染ざっつー。

 

 

「え、えっと、私から説明しますね。フリーゼ……さんは口下手なので」

「おう。よくわかっとるやん。よろしゅーなー」



 えっと、一応初対面という体でいかないとおかしいよね。

 あと、ミースだってばれないように、口調も意識して変えていこう。



「初めまして。ミースと申します」

「おおきにー……って、なんでそんなに辛そうな顔するん?」



 幼馴染に「はじめまして」って挨拶するの、めっちゃメンタルにくる……。

 つらい。

 でも、フリーゼと私の服のために耐えないと!


 

「えっと、男の方のミースさんは今、修行に出ておりまして……。フリーゼさんが困っていたんです。えっと、彼女、生活力がありませんから……」

「ほーん。そいで?」

「そこで偶然、行き倒れの私と出会いまして、それでしばらくの間、お世話する代わりに家に住まわせて頂くことになったんです」



 いやー。

 人って限界に達するとき、すんごい頭がまわるなぁ。


 

「なるほどなぁ」

「ですが、今日のお昼、フリーゼさんの魔法の暴発で私の服が全部弾け飛んでしまい……」

「それで服がなくて、うちに買いに来たっちゅうことやな」

「そうなんです。この村ですぐに服が手に入るのは、ここしかないので」



 イーリャンにめっちゃみられてる。

 値踏みされている感じかな?

 

 

「わかったわかった。うちにまかせときー。あんさんに似合う服、見繕みつくろってあげるさかい」

「ありがとうございます!」



 って、うお!?

 いつの間にかイーリャンが服を持っているんだけど!?

 まさか、一瞬で棚から服を持ってきたの!?!?

 魔法は使えないはずなのに、どうなってるの???

 


「じゃあ、ちょっとお着換えしましょかー。フリーゼはこれでも読んでてや」

「!?」



 うわっ、すごい勢いで食らいついた。

 あの本、魔法の本だったんだろうなぁ。


 さすがイーリャン。フリーゼの扱い方を心得てる!


 お、カーテンで仕切られてる場所がある。

 ここが試着室かな?



「ミースはんはここで着替えてなー」



 では早速着替えてみるか――って。


 

「……あの、出て行ってもらえないと、着替えられないのですが」

「…………」



 イーリャンから圧がにじみ出てない?

 すんごい嫌な予感がする。

 冷や汗が出てきちゃった。



「なあ、ミースはん?」

「な、なんでしょうか?」

「いややわー。敬語なんて使わんといてよー。うちらの仲やん」

「あの、すみません、初対面……ですよね」



 やばい。

 心臓がめっちゃバクバクいってる。



「初対面やないやろ?」

「なんのことでしょうかっ?」

「他の人の目はだませても、うちの目はだませへんで?」

「…………」



 いや、わかるわけなくない?

 面影なんてほとんどないし、年齢も全然違うんだよ?

 


「もう単刀直入で言うわ。あんさん、うちらと一緒に孤児院から逃げ出したミースやろ?」



 え、なんでわかったの!?

 私、何かミスしちゃった!?!?


 ヤバイヤバイヤバイ。

 バレちゃったら、領主の怒りを買って首ちょんぱかもしれないのに!


 いきなり大ピンチじゃん!!! 


 どうしようっ!

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